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2024.4.19

トピック

グリーンジョブ初心者のための、いまさら聞けないESG(1)~「ESG経営」の生まれた背景と、企業活動における3つの側面~

エコリクをご覧になる方の中には、これまでの仕事ではグリーンジョブには関わってこなかった、でも、環境問題や社会問題にはずっと関心があって、これからはそういう仕事に関わることで課題解決に向き合いたいという想いをお持ちの方がたくさんいらっしゃるかと思います。

ただ、そういう皆さんにとっては、入り口の「サステナブル経営」「ESG経営」などの言葉で対象が見えにくくなり、ハードルが高いといわれることがありますので、まず、それらの言葉について簡単に説明をしましょう。こうした複雑そうな言葉を理解するには、その登場した背景の大筋を把握することがポイントです。

「持続可能な経営」「サステナブル経営」「ESG経営」というコトバについて

まず、日本語で「持続可能性」と訳される「サステナビリティ」自体は決して新しい考え方ではなく、1984年に国連に設置された「環境と開発に関する世界委員会」が1987年に発表した「持続可能な開発・発展」で世界に示された、いわば地球の将来についての「道しるべ」となるような大きなコンセプトでした。
そのサステナビリティが経営に大きくかかわる概念として世界的に普及し始めたのは、気候変動枠組み条約などが決まった1992年の地球サミット(リオデジャネイロサミット)を契機にしています。
しかし、それが動き出すことになったのは、2006年でした。2006年に国連のコフィ・アナン事務総長が機関投資家に対して、機関投資家も社会を良くする責任がある、として投資判断に際して6つの施策を実践するよう呼びかけたこと(これが「国連責任投資原則(PRI)」と呼ばれるものです)によって「ESG経営」は本格化しました。「金融」つまりおカネがドライバーとなって、経営の姿を変え始めたのです。

日本では、EUなどより一歩遅れてこれらの考えが浸透し始めますが、その原動力となった「金融」という視点では、年金積立金の管理運用を行う「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」が、2015年に上述のPRIに署名をし、それをきっかけに、日本でもESG投資に背中を押される形で企業が急速に「ESG経営」を進め始めました。
以上の大筋を、誤解を恐れず要約すると「概念(…持続可能性)が生み出され、時代とともに企業向きの内容が整理され(…サステナビリティ経営)、お金に動かされて仕組みになってきた(…ESG経営)」、という流れです。

ESG経営は、このような背景をもって現れてきたものですが、根底に流れる本質は同じですので、以下では「持続可能な経営/サステナビリティ経営/ESG経営」とは、広く「環境や社会への配慮により、事業の持続可能な成長を図る経営」と理解し、「ESG経営」という言葉を使って説明していきます。

企業活動における「ESG経営」の3つの側面について

このように、「ESG経営」は、金融の大きな潮流の中で、大量の資金を動かす機関投資家を主役として発達してきた概念です。したがって、投資家に対する「情報開示」を柱に企業活動に現れています。企業の業務との関りで考えると、あと2つを加えた3つの側面に分けて捉えることが有用です。

1つめは、企業が将来にわたって限りある資源である自然の利用やステークホルダーとの関係性をどのように事業プロセスや商品・サービスといった事業内容に反映させていくかという「経営の実体」に関わる側面。

2つ目が現在のESG経営で企業ニーズの最も高い「情報開示」に関する側面です。CO2排出量に関するTCFDのscope算定や開示、ESG格付調査に対する回答、企業の統合報告書の作成などが中心となります。

(以上の詳細については過去のコラムをご覧ください。※1

そして、3つめが「マーケティング」に関わる側面です。これは、狭義の商品の販売やサービスの提供についての顧客への営業活動だけではなく、市場の創出なども含む、現在注目されている分野です。

次回は、この3つの側面の中で、特に「マーケティング」に焦点を当ててグリーンジョブの内容を説明していきましょう。

著者プロフィール

佐々木 正顕(ささき まさあき)

佐々木 正顕(ささき まさあき)

一般社団法人サステイナビリティ人材開発機構 代表理事

関西大学 法学部卒 
大手ハウスメーカー入社後、経済団体主任研究員への出向等を経て、最終的に ESG経営推進本部 環境推進部において、持続可能性を反映した環境経営の施策立案や開示、社内浸透を推進後、現職。樹木医。

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