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2024.2.27

トピック

企業における「環境教育」の変化と拡がり

グリーンジョブの一つとして「環境教育」というセグメント、皆様はどんな内容をイメージしておられるでしょうか?「環境教育」は、次世代を育成するために非常に大切なコンテンツなので、切り口によって、極めて多彩な議論や分析が可能です。

今回は、主体を、企業など経済社会変革のメインドライバーの立場に絞って、企業活動において「環境教育」がどのような意義をもっているか、企業内でそれに関わる社員の視点で、拡がりを考えてみましょう。

企業の環境教育というと、一昔前は、企業がどこかの里山で、人事部のスタッフが窓口になり、環境NPOに任せて、子供たちに自然の楽しさを伝え、その活動をもって「自社の環境教育」とアピールする狭義の社会貢献的なケースが散見されました。このような活動は、企業にとっても地域との信頼関係を構築する手段としての重要性は小さくありません。こういう場では、生物関係学科や児童教育について学ばれた社員たちがサポートにつかれることも多かったと思います。

しかしながら、最近では、企業のより主体的、説得力のある関与が求められるようになりました。ESG経営の本質に関する検証や企業評価の議論の中で、当該活動やNPOへの出費についても、それが企業経営とどのような関係を有するか、をきっちりと社外に説明することを求められる傾向にあるからです。

最近の企業における環境教育について次の2つの視点で考えてみましょう。

社内的な「環境教育」

対社内においては、最近では「人的資本」に対する投資として、どのような意図でどのような教育コンテンツを提供するかという視点で、教育メニューの一環として環境教育が議論されています。例えば、過去のコラムで企業経営における「自然資本」の意義をご紹介しました(「ネイチャー・ポジティブ と グリーンジョブ(1)」)が、国際的な基準であるTNFDに沿って、自社の事業に関連する自然資本のリスクや機会を評価し、財務情報とともに開示する環境教育は、企業の自然資本への影響や依存度を理解し、自然資本の価値を評価する能力を高めるために重要です。こうした教育は、対社内だけでなく、自社のサプライヤー企業などに対して、自社の言葉でこれを伝えていくことにも拡がりつつあります。

消費者に対する「環境教育」

「生活者」に対する「環境教育・サステナブル教育」として、企業の役割を考えると、「エシカルマーケティング」などのように、新たな価値を提供する製品などのマーケティングの一つの手段として、なぜそういう製品が社会から求められるのか、といった時代背景や課題の「啓発」的働きかけは、これから企業の果たす役割が今後最も期待される分野です。

この分野で求められる資質として、社会や市場を観察し、それを「生活者」の受け入れやすい言葉でどうマーケットを成熟させていくかについての洞察力や、企業のニーズを汲み取り提案及び企画・調整を行う能力が大いに注目されています。

一例として、最近エコリクに掲載された求人に「脱炭素領域の環境教育サービスの営業担当」があります。オンライン教育講座の企画運営のチームにて、業界・業種問わず様々なクライアントへ提案をするポジションです。人材の歓迎要件は、「環境問題に関わる知識や業務経験」だけでなく、「クライアントの課題をヒアリングし課題に即した提案の経験」です。


環境教育は今や、企業にとっては社会貢献の一側面にはとどまらず、社会変革に対して最も影響力発揮を求められる企業の「サステナブル啓発コミュニケーション」の起点とも言えます。

このように様々に拡がりをみせるグリーンジョブ。皆様一人ひとりの様々な知識や経験を活かして積極的にチャレンジすることが期待されています。

著者プロフィール

佐々木 正顕(ささき まさあき)

佐々木 正顕(ささき まさあき)

一般社団法人サステイナビリティ人材開発機構 代表理事

関西大学 法学部卒 
大手ハウスメーカー入社後、経済団体主任研究員への出向等を経て、最終的に ESG経営推進本部 環境推進部において、持続可能性を反映した環境経営の施策立案や開示、社内浸透を推進後、現職。樹木医。

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