ネイチャー・ポジティブ と グリーンジョブ(1)- 時代は「ニュートラル」から、一歩進んだ「ポジティブ」志向に - | グリーンジョブのエコリク

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2023.3.16

トピック

ネイチャー・ポジティブ と グリーンジョブ(1)
– 時代は「ニュートラル」から、一歩進んだ「ポジティブ」志向に –

「ネイチャー・ポジティブ」という言葉、グリーンジョブを意識している方にとっては、最近、耳にする機会も増えてきているのではないかと思います。でも、同時に、それが自分のビジネスにどう関わってくるのかまではなかなか具体的にイメージできないという方も多いのではないでしょうか。

「生物多様性」に関係するみたいだけど、自社にはあまり関係ないし、担当業務で日常的に出てくるコンセプトでもないし…。

いえいえ、実は、気候変動をめぐる「カーボン・ニュートラル(炭素中立)」に並ぶ世界的な目標とされ、今、あらゆるビジネス領域で、その理解と活用が注目されている、今後ますます注目を増す重要なコンセプトなのです。今回4回連載でその訳と、押さえておくべき実践的なポイントについて簡単に紹介させて頂きます。

グリーンジョブ、サステナビリティ人材、としての仕事の面白さは、これからお話しするまさにその「変化への対応」にあります。規定されたルーティンの業務に飽き足らず、仕事を通じて社会を変革したい、そんな皆様をグレイス、サステイナビリティ人材開発機構は応援して参ります。

時代は「ニュートラル(±0)」から、一歩進んだ「ポジティブ」志向に

2022年6月に英国のコーンウォールで開催されたG7サミットにおいて、首脳宣言がとりまとめられました。その際に合意された「2030年自然協約」の中で、『2030年までに生物多様性の減少傾向を食い止め、回復に向かわせる』という地球規模の目標への公約が表明されましたが、これが「ネイチャー・ポジティブ」と呼ばれる考え方です。同年12月の国連生物多様性条約締約国会議COP15で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」でも事実上取り入れられた世界的な指針です。

環境保全においては、これまで、マイナスやネガティブを解消してゼロにする、という施策が掲げられることが一般的でした。しかし、減少を食い止めるだけでなく、積極的に回復に向かわせるという「ポジティブ」で前向きなアクションが無くては地球環境がどんどん劣化していくだけで、このままでは、決して本来のあるべき姿には戻らない…そんな想いに支えられた、より切迫感の強いアプローチでもあります。

   

2030年までのネイチャー・ポジティブに向けた自然のための測定可能な世界目標(出所 ※1

世界中の自然科学の専門家による、生物多様性や生態系サービスに関する科学的知見を報告する国際機関であるIPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム)が発行した報告書(2019年)によると、生物多様性は1970年から2016年の間に平均68%減少しており、陸地の75%は改変され、海洋の66%は累積的な影響下にあり、湿地の85%が消失したとされています。

COP15合意に盛り込まれた新目標、2030年までに世界の陸と海の30%を保全区域にするという「30by30」も、これを進めないともはや生態系の回復が間にあわないという強い危機感の表れと言えます。

ちなみに、最近では、脱炭素の領域でも、排出量を実質ゼロにする「カーボン・ニュートラル」は既に当然だとして、さらに進んで、CO2の吸収量が経済活動によって排出されるCO2の排出量を上回る状態、つまり「カーボン・ポジティブ」を宣言する組織が増えています。このように、グリーンジョブの世界では、今や環境保全目的に対する自社のスタンスが(単にネガティブなことをしない、マイナスをゼロにするといった消極的な態度を超えて)プラスを生み出し「ポジティブ」であることを示せるかが、組織の本気さを示す新たな指針と捉えられているのです。

著者プロフィール

佐々木 正顕(ささき まさあき)

佐々木 正顕(ささき まさあき)

一般社団法人サステイナビリティ人材開発機構 代表理事

関西大学 法学部卒 
大手ハウスメーカー入社後、経済団体主任研究員への出向等を経て、最終的に ESG経営推進本部 環境推進部において、持続可能性を反映した環境経営の施策立案や開示、社内浸透を推進後、現職。樹木医。

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