コラム

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持続可能な水産資源・水産物に 特化したコンサルティング会社

2019.3.20

インタビュー

村上 春二 氏 | 持続可能な水産資源・水産物に特化したコンサルティング会社

持続可能な水産資源・水産物に特化したコンサルティングで発展を続けている「株式会社シーフードレガシー」。
取締役副社長の村上様に事業内容やSDGs(項目14の海の豊かさ)との関わりなどについてお話しいただきました。

御社の事業概要についてお話しいただけますか?

シーフードレガシーは、ソーシャルベンチャー系のコンサルタント会社です。唯一無二である点は、持続可能な水産資源・水産物に特化していること。

事業内容には4つの柱があります。
まず、マーケットに対して持続可能な水産物をより調達できるような枠組みをコンサルティングを通して提供させていただいています。
次に行政に対して、漁業の改善が必要ではないかというアドバイスをさせていただいています。
あとは、今回新しく導入された漁業改善部署が、市場・行政だけではなく漁業の持続可能性の向上にコンサルタントとして入れるようなイメージでいますね。
4つめは、NGOの方々、サステナブル・シーフードの方々と上手く調整して非競争的な領域を作りながら企業を巻き込んで、最終的には行政の政策がより持続可能な漁業を推進していけるような枠組みにしていきたい。それをするためには民間の部分、市場であったり、漁業者、生産者が表裏一体になって、持続可能な漁業、水産物調達・供給を目指していくのが一つのプロジェクトです。

シーフードレガシーに私の所属している漁業改善部署が導入されたのは、正式には2018年11月1日からになります。その経緯は私の話にも繋がっていきますが、オーシャン・アウトカムズ(以下、O2)という国際環境非営利機関がアメリカオレゴン州のポートランドに所在しており、私は日本支部の代表をさせていただいていました。その時の業務内容は、生産現場に足を運んで、行政・市場・加工業者や生産現場の組合などを取りまとめて、漁業の持続可能性を向上していこうというような活動をしていました。
現在の業務内容と全く変わらず、O2日本支部とシーフードレガシーが合併したようなイメージですね。日本支部は現在もそのまま存在し、今パートナー締結をして、今後持続可能な漁業プロジェクトを連携しながら進めていくのが主な業務の流れだと思います。

村上様のご経歴を教えていただけますか。

福岡県出身で、18歳の時にアメリカに留学し、8年間アメリカのカリフォルニア州にいました。大学で勉強したのは、ビジネスと自然地理学(geography)です。その時から世界各国を廻って、自然とビジネス、社会のありかたみたいなところに常に疑問を抱く時期があり、もっと環境を直していきたい、良くしていきたいという思いが強かったんですけど、それだけに対して環境を保護しませんかと言っても社会全体は変わらない。
みんなの興味があるのは何かと考えた時に、ビジネスを利用して社会を良くしていく、環境を良くしていく。だからこそビジネスと自然地理学の両方を勉強していました。

僕は釣りが好きでこの業界にいるんですけど、30歳まで釣りで食っていくと思い、そのころ釣り雑誌のライターをしていました。アメリカから帰ってきてすぐパタゴニアというアウトドアメーカーに入社しましたが、自分の限られた24時間という時間をより環境に費やしたい、貢献したいという思いがどんどん強くなってきて、環境団体を仕事先として考え出したんです。英語を活かしたかったので、海外の団体をしらみつぶしに探し、ワイルドサーモンセンターというところに出会ったんです。それは太平洋の野性サケの保全保護に注力した国際環境団体で、オレゴン州ポートランドにあり、そこで日本コーディネーターをしていました。ワイルドサーモンセンターの9名が独立して、野生サケだけじゃなくて全魚種に対する持続可能性の向上を促していきたいということで、O2を立ち上げました。それが2014年の2月頃です。

それから2018年の10月31日までO2の日本支部をさせてもらい、11月1日からシーフードレガシーで、いまに至っています。

シーフードレガシーの仕事でSDGsにどう取り組むか、項目14の海の豊かさについてどう考えていらっしゃるか、今後どうしていくのかについてお話しいただけますか。

2030年までにSDGsの目標が出てて、我々が今関係を持たしていただいている水産企業は特に大手の方々が多いんです。そういう方々はそういうところに興味を持っていらっしゃるというので、いいことをしてそれを対外的に伝えられなかったら彼らとしては取り組みの意義は見いだせないのかなと思うので、我々はこうやってコンサルをさせていただく際には、関わらせていただいた企業の方々、漁業者の方々が如何に国際レベルでの目標に、どう貢献しているかということを紐付けながらコミュニケーションしていっているところではありますね。

なかなか水産部分って、SDGsの目標の中でもあまり皆さんに知られていない現状もあるのかと思うので、こういう取り組みの中でSDGsを皮切りにそういう貢献の仕方というのも知ってもらいたいというところはありますね。

企業としてそういう取り組みをしているので、もちろん注力しているよという会社としての説明もできるかと思います。

一般の方々にはまだ知られていなかったり、取り組まれていない領域だという話もありましたけど、一般の方々が取り組めるような内容やこういうことをしたらいいんじゃないかということはありますでしょうか?

一番は消費活動の見直しですね。見直しというとちょっと上から目線に聞こえてしまうかもしれませんが、自分を含めて自分たちの消費活動を見直して、自分たちの消費活動にはパワーがあるんだということを理解した上で、例えば環境に悪影響を起こしていない持続可能な漁業と認証されているエコラベル認証のものを積極的に買うとか、認証に向かって一歩ずつ漁業を改善している漁業改善プロジェクトの商品を買うとか、そういう商品がなかったとしてもそういうことにコミットメントを出している、販売店など、自分がここに消費するよという選択するクライテリア、項目というものに持続可能性とか環境とかが入ってくれば、ただ安い・品質が良いだけではなくて、自分の消費行動が何に影響を与えているかを見ながら消費をしてもらうことがいいんじゃないかと思います。

今後、どういった方を採用したいのか、一緒に働きたい方の人物像についてお話しください。

一言で言えば、ハードよりソフトのスキルが強い人が合うんじゃないかと思います。環境意識を持っている人たちにビジネスを教えることは可能だけれども、ビジネスマインドの人に環境保全マインドを植え付けるのは難しいと思います。

今回重きを置いているのは、今までにものを売ったことがある、私たちは形のないものを売ったりするので、形のあるなしにかかわらずものを売ったことがある。いかに伝える力があるのかとか、もちろん対人関係のコミュニケーション能力など、本当にソフトの部分が大きいですね。あとは極端な話ですけど、スコップ一個と想いで東南アジアに行って井戸掘ってくるぜ!みたいな国際現場でタフな精神を持った方がいるといいかな。

というのは、現場に入っていくと同意形成って、みんなの想いを汲みながら自分たちが目指している方へ繋ぎをつけていくのかという、考えや行動をファシリテーションするとかが必要になってくる。あとは英語力はあったほうがいいですね。

御社の社員の方はみんな英語が堪能な方が多いですか?

そうですね。ですが絶対ではないです。英語を使う場面が多く出てくるので、完璧じゃなくても喋ろうと、頑張って喋りますという姿勢が重要かと思います。

ちなみに同意形成に関わるような英語だとどういう言葉がよく使うとか、一般レベルで英語が話せるのではなく、こういうことができる方の方がいいとかというのはあったりするのでしょうか?

もちろん水産業界の専門用語を理解してくれている人だと早いのかもしれないですけど、英語を喋っている人たちの合意形成することよりも、日本語の人たちが主な対象です。ただ、O2と連携や他の国際関連のプロジェクトを進めていく上で、どうしても英語が必要な場面は出てきますね。

日本でプロジェクトを進めていく場合は、日本語で進めていくのが普通です。ただそれを共有する上で英語が必要になります。

実際に村上様が現場に入られているところに今回採用の方は一緒に行かれるということもありますか?

大いにあります。今の所プロジェクトが3つありまして、もちろんそのプロジェクトを一緒にやっていく、最終的には任せていきたい。同時に新しいプロジェクトを作っていってほしいということもあるので、もちろん今まで築いてきたネットワークもあるので、そういうところを共有しながら戦略立ててプロジェクトを作っていけたらと思います。

今取り組んでいる漁業改善プロジェクトはどんな場所、魚種ですか?

今東京湾でスズキを漁獲している漁師さんが主なクライアントになります。あとは宮城県の女川という震災でかなりの被害を受けた地域の養殖事業者さんで、銀鮭というサケを養殖している会社があり、そこはフィッシャーマンジャパンの一員となっています。フィッシャーマンジャパンは東北で震災があって復興を一つの視野に入れた若手漁師軍団の集まりですけど、「地域を盛り上げようよ漁業で」というところで、そのメンバーの一人と今プロジェクトを進めております。

あとは、和歌山県那智勝浦町、マグロの生鮮売上で日本一の場所なんですが、そこのマグロ問屋の方と大分県船籍の延縄漁業の方と延縄ビンチョウマグロの改善プロジェクトをやっています。

こういうところは、僕たちも活動していて持続可能だけを掲げて現場に行って、そんな崇高な長期的なメリットだけを言われても、理想じゃ飯は食えない現実はもちろんあるので、そういうところと出口、市場をつなげてあげる役割も担っていますね。

僕の個人的思いもあるんですけど、長期的なメリットと短期的なメリットが合ってみんなが行動を起こせるというところがあるので、短期的だと合同会社西友などはこういうプロジェクトを積極的に使ってもらったり、プロジェクトの資金を捻出してもらっているなど、そういういろんなステークホルダーを巻き込んだプロジェクトですね。

そうすると漁業関係者だけでなく、販売店や、飲食店も関わってきますね。

僕が関係者として話をする相手は、行政や水産庁、都道府県の水産課レベルの方から一生産現場の漁師さんまで幅広く話します。いろんな関係者とこの人にはこういう話し方とか色々あるじゃないですか。科学的な話を漁師さんにしてもというのがあるし、逆もありますし。そういう、うまいバランスを保てた人がいいかと思います。

水産業界に精通している人というのはやっぱり重要かとは思います。あとは環境を護りたいとか魚を護りたい。そういうところに経験とか思いのある人はいいですね。

極端なことを言えば僕も水産に特化していたわけではなく、どちらかというと環境保全のマインドの方が強くて、それを変えたいビジネスがあって、釣りを通じて自分の好きな魚というフィールドがあったという感じなので、必ずしもずっと水産業界にいなければならないわけではないと思いますし、だからこそ想いとか興味とからくるハードスキルのところもありうるのかと思いますね。

改善に着手できる、市場を変えましたっていうのはサステナブル・シーフードの重要な歯車なんですけれど、漁業現場がどう変わっていくのかってところに特化していると見えないじゃないですか。だけど、この担当の業務というのは現場に入って、改善に着手して、本当に漁業が変わっていくのが目に見えるという、環境が良くなっていくとか現場が良くなっていくというところに常に寄り添えるというのは、他にない仕事だと思います。

女性の方も活躍しやすいということですが、今女性のメンバーの方はどのような仕事をされているのでしょうか?

9人のうち3人が女性です。一人は管理系の部門を、もう一人は広報を担当しています。3人目は組織運営に関わっていますね。弊社では4つの部署が動いていますけど、各部署に必要なものが足りているかとかプロジェクトが止まっているときはそのサポートをしています。海洋生態学の知識とマネージメントスキルを活かしクラウドベースでアメリカから業務にあたっているんです。もちろん今度採用する人も最初からクラウドというわけにはいかないけれど、条件とか色々あると思うのですけど、ここにきていただいて、そこから色々いけるだろうなと思っていますけど。必須ではないかもしれませんね。

最後に持続可能な社会を実現するためにどんな方が求められると思われますか?

僕が信じているのはハードよりもソフトと一言で言いがちなんですけど、多種多様な人たちの考えを汲みながら解決策まで紐付ける力を持っている人、柔軟な解決策を基に色々な問題を解決していくというのが、社会人というか社会なのかと思うんです。その矛先というのは今回の環境になってくるので、多様なステークホルダーを取りまとめられるような、リーダーシップだったり、ファシリテーションの力であったり、コミュニケーションの力が、人と人とを繋げる、そして何か一つのものを作っていくのに重要なんじゃないかと思います。

多種多様な人たちの考えを汲みながら解決策まで紐付ける力を持っている人、柔軟な解決策を基に色々な問題を解決していくというのが、社会人というか社会なのかと思うんです。

リーダーシップも国際基準のリーダーシップ、基準とかあるわけじゃないと思うんですけど、国際的に認知されるリーダーシップは日本と若干違うところもあると思うので、どちらがいい悪いではないと思いますが、世界の目が日本に向けられてきている今の状況で、世界で活躍できる人材が必要になってくるんじゃないかと思います。リーダーシップの側面でも、国内だけじゃなくてどんどん海外に自信を持って出ていけるようなタフさとかリーダーシップ力を持っている人というのが重要なんじゃないかと思います。

ハードな部分はどんどん技術が作られていって解決できるシステムが出てくると思うんですけど、人を動かす力や人をまとめる力は機械じゃできないことなので、多様な世界になればなるほど必要なんじゃないかと思います。

貴重なお話をいただきありがとうございました。

プロフィール

村上 春二(むらかみ しゅんじ)

村上 春二(むらかみ しゅんじ)

株式会社シーフードレガシー
COO 取締役副社長

国際環境非営利機関 Wild Salmon Centerそしてオーシャン・アウトカムズ(O2)の設立メンバーとして日本支部長に従事した後、株式会社シーフードレガシー取締役副社長/COOとして就任。漁業者や流通企業と協力し、日本では初となる漁業・養殖漁業改善プロジェクト(FIP/AIP)を立ち上げるなど、漁業現場や水産業界そして国内外のNGOに精通しIUU対策などを含む幅広い分野で日本漁業の持続性向上に対して活動している。多くの国内外におけるシンポジウムや水産関連会議やフォーラムでの登壇や司会などを務め、米国企業Scaling Blueの運営委員などを筆頭に国内外で活動している。

株式会社シーフードレガシー

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