エコリクコラム
2023.5.15
トピック
「パーパス経営」が生まれた本当の訳と活用法(1)
– パーパス経営=近江商人の三方よし? –
(はじめに)
グリーンジョブの世界は美しい言葉やコンセプトに溢れています。「パーパス経営」「SX(サステナブル・トランスフォーメーション)」「ウェルビーイング経営」等々、まるで美しいお花畑のようだ、という人もいます。たしかに、それを想像していると、これからの社会はどのように心豊かで持続可能な世界になるのだろうと心が弾んできます。
でも、その「お花畑」を育てることを求められるグリーンジョブの担当者にとっては不安だらけです。まだお手本にする成功事例がほとんどない状況で、どのような種類の花を選び、どんな頻度で水を与え、どのような肥料を与え、どのような病害虫のリスクを想定して対策を準備するか…(これに対応する担当者の資質面から求められるのが3/28のコラムネイチャー・ポジティブ と グリーンジョブ (3)で紹介した「サステナ人材の並走力」ですが、今回は社会的な面からお話しします)。
準備の際に参考になる「ブレない軸」はあります。
それが、その言葉やコンセプトが現れた「背景、バックグラウンドの理解」なのです。今回は、「パーパス経営」を例に考えてみましょう。
パーパス経営=近江商人の三方よし?
多くの方にとって「パーパス経営」の意味は認識できていると思います。おそらく、パーパスは目的のことなので「企業が自社の存在の目的・意義を明確にして、社会に対して貢献するような経営を実践すること」、というイメージでしょうか。
このことから、さらに突っ込んで、その本質を「企業利益よりも社会正義を大切にする新しい考え方」というニュアンスで理解している方もいらっしゃるかもしれません。しかし、「経営」が企業の健全な存続・発展を前提とする概念である以上、利益は無視できないはずです。
ここで、よく引き合いに出されるのが、滋賀県 近江商人の「三方よし」の考え方です。「売り手よし、買い手よし、世間よし」の三方よしの理念ですが、「世間よし」として社会的な貢献も重視しながら、それで信用を築きしっかり「売り手よし」で利益創出を実現している。その意味で、最近西欧で言われる「パーパス経営」も何ら新しいものではなく、日本の「三方よし」そのものである、と仰る経営者も少なくありません。こうした経営者の方は、たいてい、わが社の創業時からの社訓は「社会の発展に寄与する」旨だから、まさにパーパス経営を実現していた、何をいまさら、と続けがちです。
たしかに、近江商人は、現代の複式簿記的な考え方を導入したりしていた極めて先進的な商人でしたし、利益を神社仏閣や公共事業に寄進したりしたと、公共善を視野に入れた優れたビジネスマインドを持っていました。
でも、「パーパス経営」が真に意図するところは、果たしてそれとイコールで収まるものなのでしょうか?
次回は「背景」に踏み込んでその辺りを考えてみたいと思います。