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2023.3.28

トピック

ネイチャー・ポジティブ と グリーンジョブ (3)
– サステナ人材に求められる「並走力」って? –

サステナビリティ人材に求められる「並走力」って?

前回まで読んで下さった方にとっては、そういうことなら、生物多様性分野では、検討中の標準化手法が確立され、共有されてからそれをキャッチアップすればいいのかと思われた方もおられるかもしれません。

確かに、従来は、ルールが確立されてから、それをじっくり理解し業界の動きを見ながら上手く環境施策を打てば足りましたし、それが無駄のない効率的な方法でした。しかしながら、世界の動きがこれだけ早く、また変化の激しいVUCAの時代には、それでは変化に対応しきれません。新しいルールが定着しかけたころには、ルールは次の次元に入っているからです。

特に、環境、サステナビリティの領域は次々と新たな社会課題テーマを生み出しています。未成熟な情報でも、張り巡らせたアンテナや人脈を通じてその価値を見極め、走りながら、その成熟過程のテーマの自社への適用可能性を考えることができる、いわば新たな社会課題やルールメイキングとの「並走力」が求められます。ESG経営の評価に際しても、さらに踏み込んで、政策形成プロセスへの関与(アドボカシー)が問われることさえあります。

ルールやの形成プロセスを横目で捉えながら一緒に走っていないと、そのルールやテーマがなぜ社会課題として浮上してきたのか、検討過程で何がボトルネックとなってきたのか、という背景やプロセスがリアルな皮膚感覚として理解できません。

特に、昨今では、立法者が公的ルールとして共有する以前に、意識の高い企業が集まって自発的に特定の社会課題の解決の仕組みづくりを主導しようとする任意の「イニシアティブ・グループ」や意識の高い企業群「アライアンス」が市場のルール策定を事実上先導し「デファクト・スタンダード化」してマーケットを確立してしまう傾向も強まりつつあります。

   

グリーンジョブは先端企業による「イニシアティブ主導」

例えば、油脂の原料としてパームオイル(あぶらやし)を利用する化粧品や食品企業が、原生林伐採による単一植生のパーム植林による生態系破壊という社会課題の解決を先取りするために、ユニリーバなどのグローバル企業が環境NGOなどを巻き込んで、持続可能なパームオイル生産を一緒に考えていく組織(RSPO:持続可能なパーム油のための円卓会議)を設立し業界標準にしていった、という活動などが挙げられます。

前3回までに掲載した文脈を理解することで、新たな規範を自社に導入する場合のポイントがわかり、それによって、組織内でのサステナビリティ人材としてのプレゼンスを向上させることが出来ます。

著者プロフィール

佐々木 正顕(ささき まさあき)

佐々木 正顕(ささき まさあき)

一般社団法人サステイナビリティ人材開発機構 代表理事

関西大学 法学部卒 
大手ハウスメーカー入社後、経済団体主任研究員への出向等を経て、最終的に ESG経営推進本部 環境推進部において、持続可能性を反映した環境経営の施策立案や開示、社内浸透を推進後、現職。樹木医。

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