エコリクコラム

2026.1.14
インタビュー
【後編】執行役員が語るサステナビリティの「本質」と業界の未来|ソコテック・サーティフィケーション・ジャパン株式会社
ソコテック・サーティフィケーション・ジャパンは、フランス系の第三者認証機関として、GHG検証やISO認証、そしてCDP開示アドバイザリーにおいて、その国際的な知見と公正性で知られています。後編ではESG市場の最新動向、日本市場が抱える最大の課題、そして同社が貫く「サステナビリティの本質」に関する哲学について、引き続き執行役員の倉内様に深く伺いました。
(インタビュアー:弊社マッチングディレクター 高木 広陽)
開示は終点ではない
I. GHG以外に急増する開示ニーズ
ESGの中のE(環境)に限っても、気候変動、脱炭素、自然資本、といろいろなテーマがある中で、注目されているのはどの分野ですか?
今、大きく2つの法制化があります。一つはSSBJ(サステナビリティ基準委員会)で、企業の有価証券報告書にサステナビリティに関する取り組みの情報を記載しなければならないという金融庁の動向。もう一つは経済産業省のGX推進法の中で、GX-ETS(排出量取引制度)が来年から正式に始まり、GHG排出量の検証を義務づけるという流れです。
これら気候関連の情報開示ニーズが高まるのと同時に、ネイチャーポジティブ(自然資本)と人的資本経営の2つが非常に注目されています。
人的資本経営では、従業員に対する教育の機会や費用、労働生産性、女性活躍などがKPIとして定まり、開示しなければならないことになっています。重要なのは、開示するだけでなく、今後自分たちが人的資本経営をどのように考えて、どのように効果を上げようとしてるのか、という戦略をしっかり開示していくことです。また、人権デューデリジェンスの問題もあります。欧州のCSRDというグローバルトレンドの中で、日本においても環境分野だけでなくソーシャルというテーマへの対応が、次のトレンドとして高まっています。
あと1点、必ず次に波が来るのがサーキュラーエコノミーです。そもそも廃棄を出さないといった設計思想や、もしくはアップサイクルといった、イノベーション・クリエイティビティを高めていくという部分に注目しています。最近は情報開示のアドバイザリーだけでなく、LCA(ライフサイクルアセスメント)を通して、個別のテーマ、対応策へのニーズが徐々に増えています。
II. 広がる専門性とアジア展開
日々新しいニーズが出てくるとなると、求められる専門性も多様化していきますね。
今後出てくるであろう専門性のテーマで言えば、農業分野はすごく重要です。気候変動によって作物が育たないという問題がおそらく高い確率で出てきます。それに伴い、気候変動への適応や、GHG削減を組み込んだ農作物の価値形成といったテーマが出てくるでしょう。そのため、「実は私、農業分野の専門知識があるんです」というような、いろんなキャリアの中でご経験がある方々を広く募集したいと思っています。
我々はESGというテーマの中で、次々と出てくる新しいスタンダードに対し、まず海外の文献にアクセスして新しい知見を入れ、日本で展開しています。
さらに、日本が課題解決してきたこの流れは、世界の工場として機能するアジアにも必ず到来します。ソコテックグループでは、シンガポールやタイ、フィリピン、ベトナムといった現地法人とタッグを組み、日本が培ってきたGHG排出量検証に関するサービスを提供できるよう強化しています。ジャパンが主導で現地に行って検証人を育成したり、技術提供をして国の認定を取る支援をしたりしています。
欧州から情報をインプットして、国内だけでなくアジア圏でアウトプットしていくという点では、海外事業に興味のある方は、実際に海外に行くチャンスもあるんでしょうか。
はい。実際に海外出張へ行ってもらうケースも結構出てきています。本当にやる気があれば異動もできます。ネイティブレベルでの英語が必要という厳しい基準はありますが、それをクリアすればグループ内での異動は可能です。
III. 業界最大のリスク:保証の担い手不足
そのほか気になるテーマでいえば、非財務保証の担い手をどうするのか、金融庁でも議論をされているようですが、倉内様はどのように見ていらっしゃいますか。
非常に重要なテーマだと思っています。特に、非財務保証の担い手が十分でないことによって、企業が孤立してしまう「監査難民」といった事態に陥らないか、大変危惧しています。保証する人が不足していることによって、制度が保証を必要としない、または保証の範囲を狭めるような仕組みになってしまい、本来第三者機関による評価が必要であるにも関わらず、産業が成熟していないのでそれらに頼らない制度設計にしよう、となるのは、我々の組織の事業継続という観点においても大きな危機(リスク)なんです。
ですから、我々としては本当に真剣に、採用の問題に向き合っています。
採用というのは、事業戦略面のリスクヘッジとしても、重要なパートを担っているということですね。
はい。我々としても成長戦略の中で最も中心に据えているのが採用・育成です。保証の担い手が増えていかなければ、社会ニーズが高いのにサービスが提供できない、という残念なことになってしまいます。
我々は早期に担い手を育成するため、例えば検証人の育成5日間コースをきちんと作り込み、7ヶ月の研修期間で監査を実施できるようになるプログラム化を進めてきました(※インタビュー前編を参照)。マーケットニーズに追いついているとは言えませんが、資質のある方々を早期に数多く募集し、審査機関として役割を果たしていきたいと思っています。
弊社のポジショニングをアピールするとすれば、今恵まれたポジションにいます。温室効果ガス審査協会の理事も仰せつかっておりますし、金融庁におけるサステナビリティ情報の新たな保証基準ISSA5000に関するラウンドテーブルにお声がけいただいたり、経済産業省よりGX推進法における排出量取引や、今後のJクレジット制度の運営に関する意見交換を求められるなど、関係省庁からもソコテック・サーティフィケーション・ジャパンの業界における存在感を認知していただいていると感じています。何か新しい制度を検討しようとした時に声がかかる機関であり、いち早く国の動向の情報が入手できるという恵まれたポジションにおかれていると思っています。
Ⅳ. 「開示のための開示」を許さない哲学
少し切り口を変えて、倉内様が環境やサステナビリティに関わるようになったのは何がきっかけだったんですか?
実ははじめから環境分野を歩んできたわけではなかったんです。大学の専攻は応用化学工学分野、理系だったんですが、最初の職場は銀行でした。中期事業計画の策定だとか企業成長について学ぶことができたのはよかったのですが、理系で研究していたこともあって決められたことをやる仕事は合わないな、と感じるようになってしまい転職を決めました。
環境分野に興味を持つようになったのは、2000年ごろに携わっていたISO 14001(環境マネジメントシステム)のコンサルティング業務がきっかけです。高度経済成長期、企業は「公害を出していない」と言いながらも、輸入先の国、例えば南米の鉱山なんかでは公害が発生してしまっている。そういうことが取り上げられるようになり、私も自然と環境問題に思いを馳せるようになりました。
「企業の本業を通してどう環境貢献するのか」という、そのISO 14001の考え方が、今私が言う本質につながるものの原点です。その後のJ-SOX(内部統制)などの実務経験も、すべて今のESGにおけるガバナンスや環境の本質的な改善というところに繋がってきており、全て肥やしになってきたと思います。
以前御社に推薦した候補者も、倉内様との面接の際に、サステナビリティの本質について熱く語っていただいた、と言っていたことが記憶に残っています。倉内様が考えるサステナビリティの本質とは何でしょうか。
サステナビリティ経営というのは、企業が「本業を通して社会課題を解決しつつ、そのリターンとして収益を得るんだ」という考えで経営していく、それによって世の中が良くなっていく。その部分が私は本質だと思っています。形式的に「なんとなく取り組みやすいので」という理由で社会課題を選んではいけません。そこに意味付けが必要なんです。
弊社としては、まずお客様に「こうあるべきなんです」、「この開示にはこういった意味があります」という部分をブレずにお伝えします。我々はお金をいただいて外部機関としての知見を提供しているわけですから、企業にとって見たくないことであったとしても、「内部からは言えないことをはっきり言う」、そういう立場でいるべきだと思っているんですね。言わずして最初から安易に流れるのは、ソコテックのサービスではありません。
情報開示一つとっても、CDPのスコアを高めるために「やってもないことを書く」のは絶対にあってはならない。スコアは「正しく評価されたことの結果」としてハイスコアになるのが正しいことです。弊社のこのスタンスがCDPにもご評価いただいており、CDPワールドワイドジャパンさんと弊社は非常に良い協力関係です。企業がCDPの情報開示を通して開示するということは、アクティビティ(行動)の結果を開示する訳ですから、開示情報の質を上げるということは、すなわち行動が改善されているということです。我々は我々が持つ幅広い知見を提供することにより、企業の行動を変えていく。そのことによって世の中が徐々に良い世の中になっていく。そこが我々の目的です。
開示のための開示、スコア向上のためのアドバイザリーではなく、根底の意識から改革していくことがソコテックの介在価値になるんですね。
最後に応募を迷っている人に向けて一言、メッセージをお願いします。
全く違う業界でも結構です。「社会人になって今までにチャンスに恵まれなかった」、「ソコテックでチャレンジして成功したい」という方に来ていただきたいです。弊社は人を見る、その方の本質を見たいと思っています。私たちと一緒に社会課題を解決する仲間に是非なってください。