エコリクコラム

2025.6.30
インタビュー
社会の安全・安心、そして持続可能性を支える第三者試験機関の挑戦|一般財団法人カケンテストセンター
世界が直面する環境課題や高まる安全・安心への要求。こうした社会のニーズに応えるべく、製品の品質や安全性を公正な第三者の立場で評価する「試験・検査」の重要性が増しています。今回は、衣食住の「衣」を中心に、幅広い分野で社会を支える国際的な第三者試験機関、一般財団法人カケンテストセンターGHG検証室 室長の藤田一馬様にお話を伺います。
一般財団法人カケンテストセンターについて教えてください
一般財団法人カケンテストセンターは、1948年に財団法人日本化学繊維検査協会として設立され、当初は化学繊維・合成繊維の輸出検査や内需検査を行っていました。その後、アパレル・テキスタイル関連試験業務に本格的に取り組み、国内外に事業を拡大しています。同財団は、産業標準化法試験事業者登録制度(JNLA)により認定され、ISO/IEC17025に適合した試験所やISO9001認証取得事業所を持つ国際的なテスト機関です。
カケンテストセンターは、繊維製品だけでなく、皮革類、紙、ゴム、プラスチックなどの樹脂類、マスクなどの日用品、その他産業資材に至るまで幅広い分野で試験・検査を実施しています。JIS規格に加え、ISO、ASTM、AATCC、GBなどの海外規格にも対応しており、特に繊維製品の分析・検査では業界トップクラスのシェアを誇ります。約75年の歴史で培った実績と高い技術力を強みとし、独自の試験方法の開発も行っています。近年はグローバル化にも注力し、アジアを中心に海外拠点を展開し、技術交流を積極的に推進しています。
現代社会では、地球環境課題やサステナビリティに対する企業・消費者の意識が極めて高まっています。また、製品に含まれる化学物質に対する安全性の懸念や、気候変動への対応も緊急の課題です。
当財団が手掛ける試験・検査は、まさにこうした社会課題の解決に深く関わっています。私たちの役割は、衣料品、寝装品、インテリア等の繊維製品や、靴、傘、かばん等の雑貨品、さらには防火服、作業服、手袋といった特殊用途製品に至るまで、それらの安全性や耐久性、品質表示の妥当性を、JISやISOなどの国内外の様々な規格に基づき公正に評価・証明することです。
特に近年では、以下のような試験・検査が増加傾向にあります。
- 有害化学物質の分析試験、防護性試験:特定芳香族アミン、重金属、ホルムアルデヒドなどの有害物質が含まれていないか、または危険な化学薬品から身を守る性能があるかなどを評価します。これは、消費者の健康被害を防ぎ、化学物質による環境リスクを管理するために不可欠な試験です。
- 遮熱性などの気候変動を反映した試験:地球温暖化が進む中で、衣服や資材の遮熱性能といった気候変動に対応するための機能評価ニーズが高まっています。
- LCA(ライフサイクルアセスメント)算定・支援:製品の一生(原料調達から廃棄まで)を通じた環境負荷を評価するLCAの取り組みは、企業の環境負荷低減への取り組みやサステナブル経営を推進する上で重要であり、その支援を行っています。
- 海外の法規制対応支援:グローバルに事業を展開する企業が増える中、進出先の国や地域の独自の法規制に適合しているかを確認するニーズが高く、東南アジアや欧米、インドなど海外主要国の法規制に対応しています。
これらの試験やコンサルティングサービスを通じて、当財団は社会が求める「安全・安心で快適な社会の持続的発展」と「健全で恵み豊かな環境の保全と継承」 を支え、様々な社会課題の解決に貢献しています。
現在応募している求人情報、特にサステナブル関連業務について教えてください
当財団は、お客様の持続可能なものづくりを多角的にサポートしており、そのために以下の主要なサービスを提供しています。
- ライフサイクルアセスメント(LCA)算定・支援:製品のライフサイクル全体における環境負荷の評価と算定を支援します
- ソフトウェア「MiLCA」の販売・実務研修:LCA算定に役立つソフトウェアの提供と活用研修を行います。
- SuMPO EPD取得支援:環境性能表示であるEPD(環境宣言)の取得をサポートします。
- SuMPO/第三者認証型カーボンフットプリント包括算定制度:製品やサービスのCO2排出量算定と第三者認証を支援します。
- CSR監査:企業の社会的責任(CSR)に関する監査を実施し、改善を促します
- 化学物質管理(ZDHC):化学物質の適切な管理、特にZDHCガイドラインへの対応をサポートします。
これらのサービスを通じて、専門的な知見とサポートにより、お客様が持続可能性に配慮した製品開発や企業活動を進められるよう貢献しています。
特にサステナビリティ領域においては、LCAの取り組みや、企業の環境情報に対する第三者検証業務も新たに開始しています。

やりがいに感じることはなんですか?
- 社会貢献の実感:自分の仕事が社会の役に立っていることを日々実感できます。私たちが検査を行った製品が店頭に並んだり、ニュースで取り上げられたりすることで、社会の安全・安心に貢献していることを実感できるでしょう。環境負荷低減の一助となる業務や、人々の身の回りの安心安全を陰ながら支えることで、社会貢献しているというやりがいを感じられます。
- 社会課題解決への貢献:脱炭素社会の実現や持続可能な社会の構築に貢献できます。地球温暖化が深刻化する中で、企業の環境負荷低減を支援することは、喫緊の課題への取り組みであり、社会貢献性の高い重要な事業です。本業である試験業務も、高品質で長く使える製品を支えることで、環境に貢献するという考えに基づいています。
- 新たな挑戦と成長機会:国際的な検査規格への対応、対応検査項目や対応品目の増強、新しい試験方法の開発、社会情勢やニーズに対応できる新規事業開拓など、常に挑戦し続けるDNAが受け継がれており、特にサステナビリティ部門は3年前に立ち上がったばかりの新しいビジネスではありますが、全く新しい事業に取り組む機会は滅多にない貴重な経験となります。経験を積むことでスキルが確実に身につき、専門性を高め、より高度な業務にもチャレンジできます。
- 視野の拡大:サステナビリティ関連の業務は業種を問わず様々な企業と関わる機会が多く、これまでの繊維業界を中心としていた視野が大きく広がり、多様な製品のものづくりに携われる面白さがあります。
- 裏方としての貢献:直接消費者に製品を販売するのではなく、企業がより良いものづくりをするサポートをすることで、企業やその先の消費者の安心、安全、快適を支えています。消費者からは見えにくい「縁の下の力持ち」のような存在ですが、社会の基盤を支える重要な仕事です。

組織の雰囲気とキャリアパスについて
- チーム体制と協調性:複数人のチーム体制で業務を進めるため、コミュニケーションが活発で、お互いをサポートしあう風土があります。サステナビリティ部門は、社会のために事業を進めるという使命感を持った人材が多く集まっており、活気と勢いがあります。
- 教育制度とワークライフバランス:充実した教育制度のもと、一人ひとりのペースでスキルを身につけられる研修があり、資格取得支援や通信講座制度など、職員のスキルアップをサポートしています。安定した財務基盤を持ち、残業は多くなく、育児・介護休業制度も整っているため、ワークライフバランスを保ちながら安心して長く勤務できます。穏やかな雰囲気の中で、性別を問わず様々な職員が活躍しています。
- キャリアパスの多様性:経験を深めて専門分野を極める道や、チームを率いるマネジメント職を目指す道など、本人の適性や希望に応じて活躍の場と成長機会が豊富にあります。国際的なテスト機関として、グローバルな視点を持って仕事に取り組めることも大きな魅力です。
求める人材像について
- チャレンジ精神とビジョン:新しいことにチャレンジしたいという強い意欲があり、自身のやりたいビジョンをしっかり持ち、揺るがない信念を持っている方を非常に重視しています。
- 社会貢献への意欲:「社会の役に立ちたい」「環境に貢献したい」という強い思いを持っている方を求めています。環境課題を他人事ではなく「自分事」として捉え、持続可能な未来のために取り組む意欲がある方を歓迎します。
- コミュニケーション能力:チームで業務を進めるため、円滑なコミュニケーションが取れる方を望んでいます。
- 多様性と語学力:業種やサステナビリティ関連の業務経験に限定せず、多様な人材を受け入れたいと考えています。特に、海外の論文読解、海外顧客とのやり取り、海外プログラムの確認など、グローバルに英語を話せる人材には非常に期待しています。年齢層は若い方が望ましいという希望もありますが、限定はしていません。
環境ビジネスはトレンドのように見えるかもしれませんが、私たちが担っているのは、もっと身近で、日本のものづくりを根底から支える役割です。
未来へと続く「本質的な価値」を、その目で確かめる。そんな仕事に誇りを感じられる方にとって、当社は最高の舞台となるはずです。この想いに共感してくださる方との出会いを、楽しみにしています。
少し大きな話になりますが、今日、多くの環境課題が目の前にありますが、どこか他人事として捉えられているケースが多いと感じています。私自身も環境に携わる仕事をするまでは、他人事と考えていた部分が多くありました。しかし、この仕事をするようになってから常に思うのは、「持続可能」という言葉の重みです。自分の家族や次の世代のことを考えると、限りある資源を私たちだけの世代で使い尽くすのではなく、後世にも残していく責任があります。自分の家族が未来に繋がっていくのかを考えると、環境課題は他人事ではなく、自分事として捉えられるようになるはずです。
そうした課題に取り組もうとするとき、まず自社の中で何ができるかが見えてくるでしょう。私たちとしては、そのような視点を持った企業様を支援し、持続可能な未来と社会を次世代へと繋いでいくために貢献したいと強く思っています。
この考えに共感できる方とともに働けることを願っています。