エコリクコラム

2025.8.26
トピック
新たな国際潮流、TISFDとは何か
企業の非財務情報開示は、今、大きな転換点を迎えています。これまで、気候関連のTCFDや自然関連のTNFDといった「環境(E)」分野に焦点が当てられてきましたが、近年、その潮流は「社会(S)」へと拡大しています。この新たな動きを象徴するのが、2024年9月に設立されたTISFD(不平等・社会関連財務情報開示タスクフォース)です。
TISFDとは?
TISFDは、企業活動が社会に与える影響、特に不平等や人権侵害といった社会課題に焦点を当て、その関連情報を財務情報として開示するための枠組みを構築する国際的な組織です。TCFDやTNFDが気候や自然資本を扱うのに対し、TISFDは人的資本、コミュニティ、サプライチェーンにおける人権など、社会的な側面を評価・開示することを目指しています。
このタスクフォースは、投資家が企業の社会リスクを適切に評価できるよう、企業が自社の事業活動がもたらす社会的なリスクや機会、戦略、ガバナンス、指標・目標を報告するためのガイダンスを策定します。
TISFDのスケジュール
TISFDは、設立から短期間でガイダンス策定を進める予定です。
- 2024年9月: TISFDが正式に設立。
- 2025年: 議論が進められ、ドラフト版が公表される見込み。
- 2026年: 最終版が公表される予定。
このスケジュールからも、国際社会が社会課題の解決をどれほど喫緊の課題と捉えているかがわかります。最終版が公表されれば、TCFDやTNFDと同様に、グローバルな企業の情報開示に大きな影響を与えるでしょう。
具体的に何をするのか
TISFDは、企業が社会関連リスクを評価し、開示するための具体的なフレームワークを策定します。その内容は、TCFDのフレームワーク(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)をベースにしつつ、社会課題特有の要素を盛り込む形になると考えられます。
具体的には、以下のような項目が検討されています。
- ガバナンス: 企業が不平等や社会課題をどのように管理・監督しているか。
- 戦略: 社会課題が事業戦略に与える影響や、その解決に向けた取り組み。
- リスク管理: 賃金の不平等、強制労働、ハラスメントなど、人権侵害を含む社会リスクの特定・評価・管理方法。
- 指標と目標: 従業員の多様性、賃金格差、労働環境、サプライチェーンにおける人権侵害の件数など、具体的な数値目標と進捗状況の開示。
これらの情報開示を通じて、企業は自身の社会に対する影響を深く理解し、持続可能な経営へと舵を切ることが求められます。
TISFDの登場は、単なる情報開示の義務化ではなく、企業が社会課題の解決を経営の中核に据え、持続的な成長と社会貢献を両立させるための重要な羅針盤となるでしょう。日本の企業も、この新たな国際潮流に迅速に対応するための組織編成、対応が求められます。
参考文献
執筆者
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