エコリクコラム

2025.8.19
トピック
2026年からの排出量取引制度(GX-ETS)について
2026年度から、日本の脱炭素化を加速させるための新たな仕組み「排出量取引制度(GX-ETS)」が本格的に始動します。この制度は、政府が主導するGX(グリーントランスフォーメーション)の重要な柱であり、企業に温室効果ガス排出量の削減を促すことを目的としています。
GX-ETSとは
GX-ETS(Green Transformation – Emissions Trading System)は、政府が企業向けに導入した排出量取引制度です。この制度の根幹にあるのは、温室効果ガスの排出量に上限を設け、その排出枠を企業間で売買できるようにする仕組みです。企業は、自社の排出削減努力に加え、排出枠の売買や、クレジットとして購入することで、自社の目標達成を目指します。これにより、社会全体として最もコスト効率の良い方法で排出量削減を進めることができます。
GX-ETS第1フェーズと第2フェーズについて
GX-ETSは、段階的なアプローチで設計されています。
■ 第1フェーズ(2023年度~2025年度)
- 企業が自主的に参加する「GXリーグ」の枠組みの中で運用。
- 参加企業は、自社の削減目標(プレッジ)を策定し、その進捗を自ら開示。
- 排出量削減が目標を上回った企業は、余った排出枠を市場で売却でき、目標に満たない企業は不足分を購入することができる。
- この期間は、制度の本格導入に向けた試行段階。
■ 第2フェーズ(2026年度~2032年度)
- 2026年度から実効性のあるものへ変更。
- 経済産業省の「GX推進法」に基づき、排出枠の有償化(オークション)が段階的に導入される。
- このフェーズでは、法的拘束力を伴う排出枠の仕組みが本格的に運用される。

現状と課題について
- 制度の有効性: 第1フェーズは自主参加のため、制度全体としての排出削減効果をどこまで高められるかが課題。
- 市場の流動性: 排出枠の取引が活発に行われるか課題。
- コストと競争力: 排出枠の有償化は、企業、特に製造業にとってコスト増につながる可能性がある。
2026年度からのGX-ETS第2フェーズは、日本のGX戦略が新たなステージに進むことを意味します。これまでの自主的な取り組みから、市場メカニズムを活用した、より強制力のある制度へと移行することで、脱炭素化を加速させることが期待され、関連業界の活性化が期待されます。
企業は、もはや温室効果ガス排出量をコストとして捉えるだけでなく、排出枠の売買や、カーボンクレジットの活用を通じて、新たな事業機会を創出する視点が求められるようになります。