エコリクコラム

2025.8.14
トピック
「生物多様性」の国内外の方向性
2025年7月9日に国連大学で開催された「2025環境情報開示シンポジウム」では、環境情報開示の重要性が改めて強調されました。このシンポジウムは、企業の活動が自然環境に与える影響を正確に把握し、科学的根拠に基づく目標設定の基盤を築くための重要なイベントです。近年、気候変動問題に加えて「生物多様性」の保全が、企業経営における喫緊の課題として浮上しています。
環境課題の統合的取り組みと情報開示に係る手引について
企業が持続的に成長するためには、気候変動、水資源、生物多様性といった複数の環境課題に統合的に取り組む必要があります。環境省は、企業がこれらの課題に適切に対応し、その情報を効果的に開示するための「手引」を策定しています。手引では、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)のフレームワークなど、国際的な動向を踏まえた具体的な開示方法が示されています。
生物多様性に関する国際動向と国内対応の方向性

気候変動対策のパリ協定と同様に、生物多様性においても国際的な枠組みが強化されています。
- 国際動向: 2022年に採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」では、「2030年までに陸と海の30%以上を保全する(30by30)」という野心的な目標が掲げられました。
- 国内対応の方向性: 日本でも、この国際的な流れに対応するため、政府は「生物多様性国家戦略」を改定し、企業の取り組みを支援する方針を打ち出しています。
現状と課題について
現在、多くの日本企業は、気候変動関連の情報開示(TCFDなど)には取り組んでいますが、生物多様性に関する情報開示はまだ限定的です。
• 課題:
- 生物多様性への影響を定量的に評価する手法が確立されていない。
- サプライチェーン全体での影響を把握することが困難。
- 開示する情報が投資家の判断にどう影響するか不透明。
生物多様性の保全は、もはや環境部門だけの問題ではなく、企業経営における重要なリスクと機会の両方のテーマとなっています。
今後、TNFDなどの枠組みに対応した生物多様性情報開示や、サプライチェーン全体での自然環境への影響を可視化する技術・サービスが、企業の競争力を左右する重要な要素となり、この分野での技術、知見を持った人材が求められる傾向になると予想されます。