エコリクコラム

2025.8.7
トピック
『コーポレート・ガバナンス白書2025』の要約
東京証券取引所(東証)は、2025年版『コーポレート・ガバナンス白書』を2025年5月21日に発刊しました。この白書は、上場会社のコーポレート・ガバナンスに関する取り組み状況を多角的に分析し、企業価値向上に向けた実質的なガバナンス改革の推進を目的としています。

白書の目的と対象
- 上場会社が自身のガバナンスの立ち位置を確認するためのツール
- 投資家が上場会社との対話の出発点
- 実務家や研究者が上場会社のガバナンス状況を調査・分析
東証のこれまでの取り組み
東証は、1999年のガバナンス充実要請を皮切りに、2004年の原則策定、2006年のCG報告書制度化、2009年の独立役員制度導入など、様々な取り組みを進めてきました。特に2015年には、実効的なガバナンス実現に資する主要原則をまとめたコーポレート・ガバナンス・コード(コード)を策定しました。
現在の課題と白書での焦点
コード策定から10年が経過し、上場会社のガバナンスへの意識や取り組みは着実に進展しているものの、いまだ形式的な対応に終始し実質的なガバナンスや「稼ぐ力」の向上に繋がっていないとの指摘もあります。また、社会情勢や国際情勢の変化に対応するため、実質的なガバナンス改革のさらなる推進が求められています。
主な分析テーマ
本白書では、以下の主要テーマに沿って上場会社の取り組み状況を分析しています。
- 取締役会等の機能発揮と多様性の確保: 取締役会のあり方、独立社外取締役の選任状況、経営陣幹部・取締役等の指名・報酬、取締役会・中核人材の多様性確保、取締役会の実効性評価、監査の信頼性確保などが含まれます。
- 資本コストや株価を意識した経営など: 事業ポートフォリオ戦略や政策保有株式の状況などが分析されています。
- サステナビリティを巡る課題への取組み: サステナビリティを重視する背景、サステナビリティ課題への取り組み状況、サステナビリティに関する開示(気候変動、人的資本、知的財産投資など)が含まれます。
- 株主との対話: 株主との建設的な対話に関する方針、ディスクロージャーポリシー、説明会の開催、英文開示、株主総会の活性化などが取り上げられています。
- 株主の権利・平等性の確保~一般株主・少数株主利益の保護~: 買収への対応方針、グループガバナンス、関連当事者間の取引などが含まれます。
この白書を通じて、日本企業がさらに実質的なガバナンス改革を進め、持続的な成長と企業価値向上を実現することが期待されています。
参考文献
執筆者
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