エコリクコラム

2025.8.5
トピック
気候変動関連金融リスク対処ロードマップの進捗状況(2025年版)
金融安定理事会(FSB)が2021年7月14日に発表した気候変動関連金融リスク対処ロードマップの進捗が報告されました。このロードマップは、企業開示、データ、脆弱性分析、規制・監督の4つの主要分野で国際機関と協力し、金融安定化を目指しています。

ロードマップの4つの柱における進捗
1. 企業レベルの開示: ISSBは2023年に開示基準を公表し、IOSCOもこれを承認しました。2024年11月までに、世界のGDPの約57%を占める国々がISSB基準の採用を進めています。しかし、規制要件の相違や、特に中小企業や新興国におけるデータ不足、報告コスト、知識ギャップが課題となっています。
2. データ: 気候関連金融リスク分析を支援するため、IOsやSSBsがデータ提供イニシアチブを進めています。G20データギャップイニシアチブやIMFの気候変動指標ダッシュボードなどが、マクロレベルの気候変動指標データを提供しています。将来の気候リスク指標をグローバルに監視するための定義の一貫性やデータ利用可能性が課題です。
3. 脆弱性分析: 気候ショックが金融システムに与える影響を分析する枠組みやシナリオ分析の開発が進んでいます。IMFや世界銀行は、気候ショックの伝播経路を追跡する枠組みを開発し、世界銀行は新興国での気候リスク評価を支援しています。FSBは2025年1月に分析フレームワークとツールキットを発表し、物理的および移行リスクが金融システムに増幅する可能性があると説明しています。
4. 規制・監督の実践とツール: BCBSは2025年6月に気候関連金融リスク開示に関する枠組みを公表し、IAISは2024年12月に保険中核原則を更新しました。IOSCOはグリーンウォッシングへの対処や自主的炭素市場に関する報告書を発表しています。
今後の展望
FSBは今後も年次の作業計画の議論の一環として、物理的リスクや保険カバレッジのギャップといったトピックの分析が金融安定性リスクのより良い理解にどのように貢献するかを評価し続ける予定です。気候関連金融リスクに関する包括的で信頼性のある、粒度の細かい、一貫性のある比較可能な情報の必要性が引き続き強調されており、これらの課題に対処するための国際的な協力が不可欠です。
参考文献
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