鎌倉市、国内7番目の「フェアトレードタウン」に認定 〜持続可能な社会を目指すエシカル消費の波が広がる〜 | グリーンジョブのエコリク

エコリクコラム

一覧に戻る

鎌倉市、国内7番目の「フェアトレードタウン」に認定〜持続可能な社会を目指すエシカル消費の波が広がる〜|グリーンジョブのエコリク コラム

2025.6.16

トピック

鎌倉市、国内7番目の「フェアトレードタウン」に認定 〜持続可能な社会を目指すエシカル消費の波が広がる〜

令和7年(2025年)3月4日付けで、神奈川県鎌倉市が国内で7番目となる「フェアトレードタウン」として正式に認定されました。これは、市民活動団体等の申請に基づき、認定機関である一般社団法人日本フェアトレード・フォーラムが厳正な審査を行い、その結果として認められたものです。

認定に至るまでには、鎌倉市議会の決議や市長による賛同表明といった要件を満たし、鎌倉市のフェアトレードタウン認定を目指す市民等による推進組織「鎌倉エシカルラボ」が令和6年(2024年)10月に申請を行いました。その後、現地調査などを経て、このたび晴れて認定された形です。

鎌倉市は今回の認定を機に、市民、企業、そして行政が一体となり、フェアトレードを含むエシカル消費の普及啓発をより一層積極的に行い、持続可能な社会の実現を目指していくとしています。

フェアトレードタウンとは

「フェアトレードタウン」とは、地域全体でフェアトレードを推進し、その理念が根付いていると認められる都市や町のことを指します。これは、国際的な運動であり、開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を支援することを目的とした「フェアトレード」の普及・啓発を地域ぐるみで進めるものです。

フェアトレードタウンに認定されることで、その地域は単に製品を消費するだけでなく、生産者の人権や労働環境、環境への配慮といった倫理的な側面を重視する「エシカル消費」を推進する先進的な地域として国内外にアピールできます。これにより、地域住民の意識向上、地域経済の活性化、そして国際的な連帯の強化に繋がる効果が期待されます。

フェアトレードタウンの基準とは

フェアトレードタウンとして認定されるためには、以下の6つの基準を満たす必要があります。これらの基準は、地域社会全体でフェアトレードの理念を共有し、具体的な行動を促すためのものです。

  1. 推進組織の設立と活動: フェアトレードタウンを目指すための市民による推進組織が存在し、活発に活動していること。
  2. 議会による決議: 自治体の議会がフェアトレードを支持する決議を行っていること。
  3. 首長の表明: 市長や町長がフェアトレードを支持する意思を表明していること。
  4. 地域での普及活動: 地域内でフェアトレードに関する普及啓発活動が継続的に行われていること。イベント開催や情報発信などが含まれます。
  5. 製品の提供: 地域内の店舗や飲食店、公共施設などでフェアトレード製品が積極的に取り扱われ、消費者が購入しやすい環境が整備されていること。
  6. 学校・団体等での取り組み: 学校や大学、宗教団体、NPOなど、多様な組織がフェアトレードを推進する取り組みを行っていること。

鎌倉市は、これらの厳格な基準をクリアしたことで、国内7番目のフェアトレードタウンとしての地位を獲得しました。

フェアトレードタウンの日本と世界の取り組み事例

世界では、すでに2,000以上の都市がフェアトレードタウンとして認定されており、その運動は着実に広がりを見せています。発祥の地であるイギリスをはじめ、アメリカ、カナダ、フランス、ドイツなど、欧米を中心に活発な取り組みが行われています。

日本では、2011年に「熊本市」がアジアで初めてフェアトレードタウンに認定されて以来、以下の都市が認定を受けています(鎌倉市認定前まで)。

  • 熊本市(2011年)
  • 名古屋市(2015年)
  • 札幌市(2019年)
  • 逗子市(2020年)
  • いなべ市(2021年)
  • 浜松市(2023年)

これらの都市では、フェアトレード商品の販売促進イベントの開催、学校でのフェアトレード学習、企業との連携による商品開発など、地域の実情に応じた様々な取り組みが行われています。例えば、熊本市では、市役所内の売店でフェアトレード商品が常時販売されているほか、毎年フェアトレード月間を設け、イベントを多数開催しています。

現状と課題について

鎌倉市のフェアトレードタウン認定は喜ばしいニュースである一方、日本におけるフェアトレード運動全体には、いくつかの現状と課題があります。

現状:

  • 認知度の向上: フェアトレード製品の認知度は徐々に高まりつつありますが、まだ一般消費者全体に広く浸透しているとは言えません。
  • 市場規模の拡大: 日本におけるフェアトレード市場は、欧米諸国に比べてまだ小規模であり、さらなる拡大の余地があります。
  • エシカル消費への関心の高まり: 環境問題や人権問題への意識の高まりとともに、エシカル消費への関心は上昇傾向にあります。

課題:

  • 価格競争力: フェアトレード製品は、一般的な製品に比べて価格が高くなる傾向があり、消費者が手軽に購入できるような価格競争力の確保が課題です。
  • サプライチェーンの可視化: フェアトレード認証がない製品についても、サプライチェーン全体での透明性を高め、エシカルな調達を推進していく必要があります。
  • 若年層への普及: 次世代を担う若者たちへのフェアトレードやエシカル消費の重要性の啓発と行動喚起が不可欠です。
  • 地域活動の継続性: 認定後も、市民団体、行政、企業が連携し、いかに継続的かつ発展的にフェアトレード活動を推進していくかが重要です。

鎌倉市のフェアトレードタウン認定は、持続可能な社会を目指す日本のエシカル消費運動における重要な一歩です。この認定は、鎌倉市が市民、企業、行政の協働を通じてフェアトレードの理念を地域に根付かせようとする強い意志の表れと言えるでしょう。

今後、鎌倉市が他のフェアトレードタウンと連携を深め、独自の取り組みをさらに発展させることで、国内外に日本のエシカル消費のモデルを示すことが期待されます。消費者が「誰かのために、地球のために」という視点を持って商品を選び、企業が倫理的な調達を追求し、行政がそれを後押しする。こうした多角的な取り組みが、持続可能な未来を築くための鍵となるでしょう。

業界のプロがあなたの経歴にマッチした
求人情報をご提案いたします!

会員登録(無料)

【人材をお探しの企業様】貴社のサステナビリティを
推進する人材をご紹介します

詳しくはこちら

執筆者

神戸 修

神戸 修(こうべ おさむ)

株式会社グレイス ゼネラルマネージャー

大阪学院大学 流通科学部流通科学科卒 学生時代より、就活・キャリア支援のサークルを立ち上げ人材ビジネス会社、給食会社にて法人営業、採用、広報業務に従事 アニュアルレポート、統合報告書の作成 東日本大震災等では現地の医療関連従事者の業務サポートを手がける

tag:

一覧に戻る