令和7年度版「環境白書」が示す日本の環境課題と未来 〜加速する地球温暖化、生物多様性の危機、そして循環型社会への挑戦〜 | グリーンジョブのエコリク

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令和7年度版「環境白書」が示す日本の環境課題と未来〜加速する地球温暖化、生物多様性の危機、そして循環型社会への挑戦〜|グリーンジョブのエコリク コラム

2025.6.13

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令和7年度版「環境白書」が示す日本の環境課題と未来 〜加速する地球温暖化、生物多様性の危機、そして循環型社会への挑戦〜

政府は、環境基本法、循環型社会形成推進基本法、生物多様性基本法の規定に基づき、令和7年度版「環境白書」を国会に提出しました。この白書は、日本の現状と、今後取り組むべき環境保全に関する施策の方向性を示す羅針盤となります。

第1部:令和6年度の環境の状況

白書第1部では、日本の環境が直面する現状が多角的に分析されています。

1. 気候変動対策の緊急性

地球温暖化はもはや遠い未来の話ではなく、現実の脅威として日本の各地で顕在化しています。異常気象の頻発、海面上昇、生態系への影響など、その影響は広範囲に及んでいます。白書では、温室効果ガス排出量の削減目標達成に向けた国内外の動向を整理し、再生可能エネルギーの導入拡大、省エネルギーの推進、そして国際協力の重要性が改めて強調されています。特に、産業界における脱炭素技術の開発と社会実装の加速が不可欠であることが示唆されています。

2. 生物多様性の危機と保全の取り組み

開発や気候変動、外来種の影響などにより、日本の豊かな生物多様性は危機に瀕しています。白書では、絶滅の危機に瀕する種の現状や、生態系の健全性が失われつつある状況が報告されています。これに対し、国立公園の整備・拡充、里地里山の保全、企業の生物多様性への配慮、そして国民一人ひとりの意識向上の必要性が訴えられています。自然共生社会の実現に向けた具体的な施策が提示されており、地域における多様な主体の連携が鍵となります。

3. 循環型社会形成の進捗と課題

資源の有効活用と廃棄物の削減を目指す循環型社会の形成は、持続可能な社会を築く上で不可欠な要素です。白書では、リサイクル率の向上、食品ロス削減の取り組み、プラスチック資源循環の推進など、これまでの成果が報告されています。一方で、依然として大量の廃棄物が発生している現状や、サプライチェーン全体での資源効率の向上が課題として挙げられています。消費者、企業、行政が一体となった3R(Reduce, Reuse, Recycle)のさらなる徹底が求められています。

4. その他の環境課題

上記以外にも、大気汚染や水質汚濁といった身近な環境問題、化学物質による健康被害の懸念、土壌汚染対策、そして近年注目される海洋プラスチックごみ問題など、多岐にわたる環境課題が現状として認識されています。白書は、これらの問題に対しても、科学的知見に基づいた対策の強化と、国民の健康と安全を守るための情報発信の重要性を強調しています。

第2部:令和7年度の環境の保全に関する施策

白書第2部では、令和7年度に政府が重点的に取り組む環境保全に関する施策が具体的に示されています。

1. 脱炭素社会の実現に向けた戦略的アプローチ

温室効果ガス排出量削減目標の達成に向けて、再生可能エネルギーの最大限の導入促進、蓄電池技術の開発支援、CO2分離・回収・利用技術(CCUS)の実用化推進など、多角的なアプローチが計画されています。特に、地域における分散型電源の導入支援や、企業のGX(グリーントランスフォーメーション)を後押しする施策が盛り込まれる見込みです。

2. 自然資本の保全と活用

生物多様性の主流化を目指し、企業活動における生物多様性への配慮を促すガイドラインの策定や、自然再興に向けた取り組みが強化されます。また、エコツーリズムの推進など、自然資本の保全と地域経済の活性化を両立させる施策も展開されます。

3. 循環経済への移行加速

プラスチック新法に基づく資源循環の徹底、食品ロス削減に向けた国民運動の推進、そしてIoTやAIを活用した効率的な廃棄物処理・リサイクルシステムの構築などが進められます。製品のライフサイクル全体での環境負荷低減を目指し、企業のサステナビリティ経営を後押しする施策も強化されるでしょう。

4. 国民の健康と安全を守る環境対策

福島第一原発事故に伴う放射線健康不安対策の継続や、水俣病・石綿健康被害などの公害健康被害の救済と予防策が引き続き講じられます。また、環境省は、誤解や風評による差別をなくすための情報発信を積極的に行う方針を掲げています。


令和7年度版「環境白書」は、日本の環境を取り巻く厳しい現状を直視しつつ、未来に向けた具体的な施策の方向性を示しています。地球温暖化対策、生物多様性保全、循環型社会形成の加速は、待ったなしの課題であり、政府、企業、そして国民一人ひとりの連携と行動が、持続可能な社会の実現に向けて不可欠です。

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執筆者

神戸 修

神戸 修(こうべ おさむ)

株式会社グレイス ゼネラルマネージャー

大阪学院大学 流通科学部流通科学科卒 学生時代より、就活・キャリア支援のサークルを立ち上げ人材ビジネス会社、給食会社にて法人営業、採用、広報業務に従事 アニュアルレポート、統合報告書の作成 東日本大震災等では現地の医療関連従事者の業務サポートを手がける

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