エコリクコラム

2025.6.12
トピック
東京農工大学とサントリー、再生農業でサツマイモ栽培の実証開始!環境負荷低減と持続可能な農業へ貢献
東京農工大学とサントリーホールディングス株式会社は、環境負荷を低減し、持続可能な農業の実現を目指す「再生農業」の手法を用いたサツマイモ栽培の実証研究を共同で開始しました。この産学連携の取り組みは、今後の企業と大学の研究協力の加速を予感させるものです。
リリースの内容とは
この共同研究は、サントリーグループが目指す「環境負荷低減」と「サステナブルなものづくり」の一環として、酒類や飲料の原料となる農作物の持続可能な調達を目指すものです。具体的には、サツマイモ栽培において、土壌の健康を改善し、生物多様性を高める「再生農業」の手法を導入します。
主な取り組みとして、以下の点が挙げられます。
- 緑肥の活用: 土壌に有機物を供給し、健全な土壌環境を育みます。
- バイオ炭の土壌施用: 炭素の土壌貯留を促進し、土壌改良効果も期待されます。
東京農工大学は、これらの再生農業技術に関する知見を提供し、サントリーは、サツマイモ栽培における実証フィールドでの検証とデータ収集を行います。この実証研究を通じて、サツマイモの収量や品質、そして土壌環境の変化などを詳細に分析し、再生農業の有効性を検証する予定です。
緑肥とは
緑肥(りょくひ)とは、作物を収穫せずに、その植物をそのまま土壌にすき込んで肥料として利用する農法のことです。緑肥作物を栽培することで、土壌の有機物含量を増やし、土壌構造を改善し、微生物の活動を活発化させます。特に、マメ科の植物は根粒菌によって空気中の窒素を土壌に固定する能力があるため、化学肥料(窒素肥料)の使用量を削減する効果も期待できます。緑肥は、土壌の肥沃度を回復・維持し、健康な土壌環境を育む上で重要な役割を果たします。
バイオ炭とは
バイオ炭とは、生物資源(バイオマス)、例えば木材や植物残渣などを、酸素が少ない状態で熱分解して作られる炭化物のことです。これを土壌に施用することで、以下の効果が期待されます。する能力があるため、化学肥料(窒素肥料)の使用量を削減する効果も期待できます。緑肥は、土壌の肥沃度を回復・維持し、健康な土壌環境を育む上で重要な役割を果たします。
- 炭素貯留: バイオ炭は非常に安定した炭素であり、土壌中に長期間固定されるため、大気中の二酸化炭素を土壌に閉じ込める「炭素貯留(ネガティブエミッション)」の役割を果たすことができます。
- 土壌改良効果: 多孔質であるため、土壌の保水性や通気性を向上させ、微生物の生息環境を改善します。これにより、土壌の肥沃度が高まり、作物の生育促進に繋がります。
現状と課題について
今回の東京農工大学とサントリーによる実証研究は、持続可能な農業への転換期における重要な一歩となります。
現状:
- 国内外で環境負荷低減への意識が高まり、再生農業への注目が集まっています。
- 企業はサプライチェーン全体での環境負荷削減が求められており、農産物調達においても持続可能性が重視されています。
- 大学の専門知識と企業の現場での実践力が結びつくことで、より実践的で効果的な技術開発・検証が期待されます。
課題:
- 効果の定量化と普及: 再生農業の手法が実際の農作物生産においてどの程度の効果をもたらすのか、その定量的なデータ蓄積と、それを基にした一般農家への普及が課題となります。
- コストと労力: 新しい農法への移行には、初期投資や労力、知識の習得が必要となる場合があり、その障壁をいかに下げるかが重要です。
- 品種や地域特性への適応: 再生農業の手法は、作物の品種や地域の気候・土壌条件によって最適な方法が異なるため、個別最適化のための研究と情報共有が求められます。
- 産学連携の継続性: 今回のような産学連携が一時的なものに終わらず、長期的な視点で研究と実践を継続していくための体制構築も課題となるでしょう。
東京農工大学とサントリーによるサツマイモ栽培における再生農業の実証は、環境負荷低減と持続可能な農業の実現に向けた意欲的な挑戦です。緑肥やバイオ炭といった手法の導入は、土壌の健全化と炭素貯留を同時に進める可能性を秘めています。
この共同研究が成功し、その成果が広く共有されることで、日本の農業全体における再生農業への転換が加速し、地球環境と食料生産の持続可能性に大きく貢献することが期待されます。企業と大学がそれぞれの強みを活かし、社会課題の解決に挑む今回の取り組みは、今後の産学連携モデルとしても注目されるでしょう。