海洋プラスチック問題に挑む!ニッスイ、養殖フロートの切り替え完了で環境負荷を大幅削減 〜 持続可能な水産業の実現に向けた先進的取り組み 〜 | グリーンジョブのエコリク

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2025.6.4

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海洋プラスチック問題に挑む!ニッスイ、養殖フロートの切り替え完了で環境負荷を大幅削減 〜 持続可能な水産業の実現に向けた先進的取り組み 〜

世界中で深刻化する海洋プラスチック問題は、地球環境だけでなく、企業の事業活動にも大きな影響を及ぼしています。そうした中、株式会社ニッスイは、2025年4月24日に、同グループの養殖事業において、いけす用フロートの全面的な切り替えを完了したことを発表しました。この取り組みは、海洋へのプラスチック流出リスクを大幅に低減するものであり、持続可能な水産業の実現に向けたニッスイの強いコミットメントを示すものです。

発泡スチロールとは?その利点と課題

発泡スチロール(正式名称:発泡ポリスチレン)は、非常に軽く、断熱性や緩衝性に優れているため、漁業におけるフロート(浮き)や食品容器、家電製品の梱包材など、多岐にわたる分野で活用されています。その特性から、水産物の鮮度保持や輸送効率の向上に大きく貢献してきました。

しかし、その一方で、環境への課題も指摘されています。特に、自然界に流出した発泡スチロールは、時間の経過とともに細かく砕け、マイクロプラスチックとなって海洋環境を汚染する原因となることが懸念されています。

発泡スチロール破片による海洋ごみ問題

海に流れ出た発泡スチロールの破片は、海洋生物が誤って摂取したり、サンゴ礁などに絡みついたりすることで、生態系に悪影響を及ぼすことが報告されています。特に、漁業で使用されるフロートは、長期の使用や波浪による劣化で破片となりやすく、海洋ごみ問題の一因となっていました。こうした現状は、海洋生態系への影響だけでなく、漁業そのものの持続可能性も脅かす深刻な問題として認識されています。

発泡スチロールのリサイクル – 環境負荷低減への努力

発泡スチロールは、技術的にはリサイクルが可能な素材です。使用済みの発泡スチロールを回収し、固形燃料化したり、新たなプラスチック製品の原料として再利用したりする取り組みが進められています。例えば、全国発泡スチロール協会(JEPCA)などが中心となり、リサイクル率の向上に向けた活動が行われています。

しかし、漁業で使用されるフロートのように、広範囲に分散し、回収が困難なものについては、リサイクルシステムの構築が課題となっていました。

ニッスイグループ養殖事業、ナイロンカバー付きフロートの使用終了の影響

ニッスイグループは、2020年に策定した「ニッスイグループ プラスチック問題に対する基本方針」に基づき、漁具による海洋プラスチック問題への対処を進めてきました。その具体的な取り組みの一つが、養殖場のいけすで使用していたナイロンカバー付き発泡スチロール製フロートから、海洋へのプラスチック流出リスクの低い仕様のフロートへの切り替えです。そして、2025年3月末をもって、この切り替えが完全に終了したことを発表しました。

図1 フロートの切り替え
出所)株式会社ニッスイ「ニッスイグループ養殖事業、ナイロンカバー付きフロートの使用終了、 海洋へのプラスチック流出リスクを低減」(※1

この取り組みは、以下のような点で大きな影響をもたらします。

  • 海洋プラスチック流出リスクの低減: 劣化による発泡スチロール破片の海洋への流出が大幅に抑制されます。
  • 環境保護への貢献: 海洋生態系への負荷を軽減し、持続可能な海洋環境の保全に貢献します。
  • 企業の環境意識向上: 水産業界における環境配慮の先進事例となり、他の企業への波及効果も期待されます。
  • 企業価値の向上: ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の観点からも、企業の持続可能性と社会的責任を果たす姿勢が評価され、企業価値の向上に繋がります。

ニッスイグループによる養殖フロートの全面切り替えは、海洋プラスチック問題に対する企業の具体的な行動を示す重要な事例です。これは、単なる資材の変更に留まらず、持続可能な水産業の未来を見据えた、環境と経済を両立させるための先進的な取り組みと言えるでしょう。

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執筆者

神戸 修

神戸 修(こうべ おさむ)

株式会社グレイス ゼネラルマネージャー

大阪学院大学 流通科学部流通科学科卒 学生時代より、就活・キャリア支援のサークルを立ち上げ人材ビジネス会社、給食会社にて法人営業、採用、広報業務に従事 アニュアルレポート、統合報告書の作成 東日本大震災等では現地の医療関連従事者の業務サポートを手がける

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