エコリクコラム

2025.5.28
トピック
2025年に改正されたクリーンウッド法の影響と木材需要
クリーンウッド法は、違法伐採された木材の流通を防止し、合法に伐採された木材の利用を促進するための法律です。
2017年に制定され、2025年4月に改正されました。改正により、木材関連事業者への法規制が強化され、違法伐採の防止がさらに厳しくなりました。
諸外国の合法伐採木材等の流通・利用促進の取組み
諸外国では、違法伐採木材の流通防止と合法伐採木材の利用促進に向けた取り組みが進んでおり、日本でもこれらの動きに対応する必要があります。例えば、アメリカ合衆国では、違法伐採木材の輸入を禁止する「レーシー法」が制定されています。また、欧州連合(EU)では、合法伐採木材の流通を促進する「EU木材規制(EUTR)」が施行されています。
2025年4月施行の改正クリーンウッド法とは
(改正の背景)
2017年に制定されたクリーンウッド法では、努力義務であったこともあり、違法伐採木材の流通が依然として問題となっていました。そのため違法伐採木材の流通を防止するための法規制が不十分でした。
(改正のポイント)
改正のポイントは次の3点です。
- ① 対象範囲が拡大され、小売業者も対象となる。
- ② 違法伐採木材の流通を防止するための措置が強化される。
- ③ 違反者に対する罰則が厳しくなる。
(改正の罰則)
- ① 違反者には、100万円以下の罰金が科される。
- ② 重複違反者には、300万円以下の罰金が科される。
改正に向けて行う事
対象業者は木材関連事業者、木材製品製造業者、木材製品販売業者になります。
取り組むべき内容は、違法伐採木材の流通を防止するための措置の検討、違法伐採木材の流通を防止するための情報の収集、違法伐採木材の流通を防止するための教育・啓発活動などです。

出所)林野庁「クリーンウッド法の概要」(※1)
木材の需要とウッドショック
2021年頃からウッドショックと呼ばれる木材価格の高騰が起きました。
その発端は、新型コロナウイルス感染症の拡大です。
世界的なロックダウンにより、人々の生活様式は一変し、住宅需要が急増しました。
しかし、サプライチェーンの混乱や物流問題は、木材の供給を大きく遅らせました。さらに、アメリカや中国での住宅需要の急増が拍車をかけ、世界的な木材不足を引き起こしました。
ウッドショックによる木材価格の高騰は、住宅建設コストを押し上げ、中小工務店の経営を圧迫しました。また、DIY用木材の価格も高騰し、一般消費者の生活にも影響を与えました。
輸入木材への依存からの脱却、国産材の活用、サプライチェーンの多様化、そして持続可能な森林管理と木材利用の重要性を再認識することになりました。
2023年に入り、木材価格は落ち着きを見せ始めていますが、依然として高水準で推移しています。世界的なインフレや金利上昇の影響で、住宅需要は減速傾向にありますが、気候変動対策としての木材利用の推進や、国内での木材自給率向上の動きなど、長期的な木材需要はまだまだ高いです。
(住友林業と大東建託の業務提携)
住友林業と大東建託は、2025年2月13日に業務提携を発表しました。この提携により、両社は木材の利用促進に向けた取り組みを強化しています。(※2)
1)提携の背景と目的
- 木材の需要拡大と供給安定化
- 木材の利用促進による環境負荷の軽減
- 木材産業の活性化
2)国産材の利活用拡大、輸入木材と国産木材の需要と供給
3)今後の課題、自然エネルギー活用への可能性
木材の需要拡大と供給安定化に向けて、さらなる取り組みが必要です。また、自然エネルギー活用と木材の利用を組み合わせた新たなビジネスモデルの創出も期待されます。
木材業界の今後の動向
木材業界の未来は、ウッドショックの影響を受けながらも、新たなビジネスチャンスと挑戦を秘めています。
(国産材・地域産材の積極的な利用)
ウッドショックの影響を受けても、国産材や地域産材の価格は安定していることが一部で見られます。これらの材料を使った新商品やサービスが求められています。
(新商品の開発・製造)
高品質化粧板や不燃突板複合板など、新しい木材製品の開発・製造が期待されています。これらは建設業界や家具業界への供給チャンスともなり得ます。
(自然エネルギーの活用)
バイオマス発電など、木材をエネルギー源とする取り組みが進んでいます。こうした動向は、木材業界に新たなビジネス機会をもたらしています。
今後の木材業界は、これらのチャンスを最大限に活かすことで、ウッドショックという困難を乗り越え、新たな発展の道を切り開くことが期待されます。また、サステナビリティが抱える課題解決にもつながります。