ファッション業界に「ごみゼロ」革命!国連環境計画が世界に警鐘 | グリーンジョブのエコリク

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ファッション業界に「ごみゼロ」革命!国連環境計画が世界に警鐘|グリーンジョブのエコリク コラム

2025.5.19

トピック

ファッション業界に「ごみゼロ」革命!国連環境計画が世界に警鐘

2025年3月30日、国連環境計画(UNEP)は、第3回ごみゼロ国際デーにおいて、ファッション・繊維製品の廃棄問題に焦点を当て、世界各地で啓発と課題解決に向けたワークショップやイベントを開催しました。大量生産・大量消費が続くファッション業界に対し、UNEPは「ごみゼロ」という急進的な目標を掲げ、持続可能な循環型経済への移行を強く訴えています。

国連環境計画(UNEP)とは

UNEP(United Nations Environment Programme:国連環境計画)は、環境問題に関する国際的な協調を促進し、持続可能な開発を支援する国連機関です。地球規模および地域規模の環境課題に取り組み、各国政府、企業、市民社会との連携を強化しています。

第3回ごみゼロ国際デーとは

ごみゼロ国際デー(International Day of Zero Waste)は、廃棄物の発生抑制、再利用、リサイクルを推進し、持続可能な消費と生産パターンへの移行を促進するために、国連が定めた国際デーです。

地球はファッションの犠牲者(国連事務総長メッセージ)

グテーレス事務総長は、ファッション産業が地球環境に与える壊滅的な影響を強く訴えました。

  • 過剰な資源消費: 繊維製品の生産には、大量の水、土地、エネルギーといった資源が浪費されています。
  • 有害な化学物質: 数千もの化学物質が使用され、その多くが人体や環境に有害です。
  • 気候変動への影響: 温室効果ガスの排出量が大きく、気候変動を加速させています。
  • 驚異的な廃棄量: 毎秒、ごみ収集車一台分の衣類が焼却または埋め立てられています。

持続可能な開発目標(SDGs)へのコミットメント

この現状を変革し、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた取り組みを強化する必要性を強調しました。特に、持続可能な生産と消費に関する目標12の実現が急務であると訴えました。

希望の兆しと行動への呼びかけ

一方で、変化の兆しがあることも指摘しました。

  • 消費者の意識向上: 持続可能性を求める消費者が増えています。
  • 業界の取り組み: 企業や業界団体が、持続可能性を推進するための重要な取り組みを開始しています(例:ファッション業界気候行動憲章、ファッション協定)。
  • 国連の役割: 国連のゼロ・ウェイスト諮問委員会が、廃棄物削減とSDGs達成に向けたパートナーシップを構築しています。

しかし、確実な変化のためには、更なる行動が不可欠であると強調し、以下の主体に行動を呼びかけました。

  • 消費者: 何を選ぶかを通じて、持続可能なファッションを支持する。
  • 若者と市民社会: 声を上げ、変革を求める。
  • 各国政府: 持続可能性とディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を促進する規制を導入する。
  • 企業: サプライチェーン全体で資源循環、廃棄物削減、資源効率化を進める。

メッセージの結び

グテーレス事務総長は、このごみゼロ国際デーを機に、「私たち全員が、人々と地球に良いファッションセンスを持つことを約束しようではありませんか」と力強く呼びかけ、持続可能なファッションへの転換を訴えました。

日本での取り組み

日本においても、ファッション・繊維製品の廃棄問題は深刻です。政府は、繊維産業の持続可能性を向上させるため、様々な政策を推進しています。

1)繊維産業におけるサステナビリティ推進等に関する政策の方向性

経済産業省は、繊維産業における持続可能性の推進に関する政策の方向性を示しています。これには、以下の内容が含まれます。

  • サプライチェーン全体での環境負荷低減: 原材料調達から製造、流通、販売、廃棄までのライフサイクル全体で、環境負荷を低減するための取り組みを推進。
  • 循環型経済への移行: 繊維製品の回収・リサイクルシステムの構築、リサイクル素材の利用促進、製品の長寿命化などを推進。
  • 消費者への啓発: 消費者に対し、製品の適切な手入れ、修理、リサイクルの重要性を啓発。

2)繊維・アパレル産業における環境配慮情報開示ガイドライン

経済産業省は、繊維・アパレル産業における環境配慮に関する情報開示を促進するためのガイドラインを策定しました。このガイドラインは、企業が環境負荷低減への取り組みを透明性高く開示し、消費者が環境に配慮した製品を選択する際の参考となることを目的としています。

  • 開示項目: 製品のライフサイクル全体における環境負荷(CO2排出量、水使用量、廃棄物量など)、リサイクル素材の使用状況、有害物質の使用状況、サプライチェーンにおける環境・社会配慮など。
  • 開示方法: 製品へのラベル表示、ウェブサイトでの情報公開、環境報告書への記載など。

3)繊維製品における資源循環ロードマップ

環境省は、繊維製品の資源循環を促進するためのロードマップを策定しました。このロードマップは、2030年までの具体的な目標と施策を示しています。

  • 目標:
    • 2030年までに、繊維製品の回収率を〇〇%に向上、リサイクル素材の利用率を〇〇%に向上、焼却・埋立量を〇〇%削減など。
  • 施策:
    • 回収システムの構築: 自治体、事業者、NPOなどが連携し、効率的な回収システムを構築。
    • リサイクル技術の開発・導入: 繊維to繊維リサイクル技術の開発・導入を支援。
    • リサイクル素材の利用促進: リサイクル素材を使用した製品の開発・製造を支援。
    • 消費者への啓発: 消費者に対し、繊維製品の適切な分別、リサイクルの重要性を啓発。

課題について

ファッション業界のごみゼロ化には、多くの課題が残されています。

  • 複雑なサプライチェーン: グローバルに展開するサプライチェーン全体でのトレーサビリティ確保が困難。
  • 消費者の意識: 低価格・大量消費の傾向が根強く、持続可能な製品への関心が低い。
  • リサイクル技術: 繊維to繊維リサイクルの技術はまだ発展途上であり、コストも高い。

企業の取り組み事例(繊維to繊維リサイクルの取り組み状況)

繊維to繊維リサイクルとは、使用済みの繊維製品を新たな繊維製品の原料として再利用する取り組みです。以下に、具体的な企業の取り組み事例を紹介します。

  • 株式会社JEPLAN: BRINGというブランドで、繊維製品の回収・リサイクルを行っています。回収した古着を化学的に分解し、ポリエステルなどの新たな繊維を製造しています。また、古着からバイオエタノールを製造する技術を開発。このバイオエタノールを原料に、新たな繊維を製造する取り組みも進めています。
  • 帝人フロンティア株式会社: 自社製品の回収・リサイクルシステムを構築。回収した製品を新たな製品の原料として再利用するだけでなく、アップサイクルによる高付加価値製品の開発にも取り組んでいます。
  • 株式会社ゴールドウイン: GREEN CYCLEというプロジェクトで、自社ブランド製品の回収・リサイクルを行っています。回収した製品を新たな製品の原料として再利用するだけでなく、イベントなどで回収した古着をリメイクするワークショップも開催しています。

UNEPが提唱する「ごみゼロ」という目標は、ファッション業界にとって大きな変革を求めるものです。しかし、持続可能な社会の実現のためには、避けて通れない道です。日本企業は、政府の政策やガイドラインを遵守し、積極的に繊維to繊維リサイクルなどの取り組みを推進することで、国際社会における競争力を高め、持続可能なファッション業界の構築に貢献することが期待されます。消費者も、製品の適切な手入れ、修理、リサイクルに積極的に参加し、持続可能なファッションを支持していくことが重要です。

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執筆者

神戸 修

神戸 修(こうべ おさむ)

株式会社グレイス ゼネラルマネージャー

大阪学院大学 流通科学部流通科学科卒 学生時代より、就活・キャリア支援のサークルを立ち上げ人材ビジネス会社、給食会社にて法人営業、採用、広報業務に従事 アニュアルレポート、統合報告書の作成 東日本大震災等では現地の医療関連従事者の業務サポートを手がける

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