エコリクコラム

2025.5.14
トピック
地方公共団体向け食品ロス削減推進計画策定マニュアルとは
2025年4月8日、環境省は「地方公共団体向け食品ロス削減推進計画策定マニュアル」を公表しました。このマニュアルは、地方公共団体が食品ロス削減のための推進計画を策定する際に役立つよう作成されたものです。
食品ロスとは
食品ロスとは、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品のことです。日本では、年間で約646万トンもの食品ロスが発生しています。これは、1人あたり1日約180グラムの食品を捨てていることになります。食品ロスは、家庭、飲食店、小売店など、さまざまな場所で発生しています。
地方公共団体向け食品ロス削減推進計画策定マニュアルの作成背景と経緯
食品ロスは、環境問題だけでなく、社会問題でもあります。食品ロスを減らすことは、資源の有効活用や、食料安全保障の確保にもつながります。
環境省では、2019年に「食品ロス削減推進法」を制定しました。この法律では、地方公共団体に食品ロス削減のための推進計画を策定する努力義務を課しています。
地方公共団体は、食品ロス削減推進計画を策定することで、食品ロスを減らすための具体的な対策を講じることができます。
地方公共団体向け食品ロス削減推進計画策定マニュアの活用方法
地方公共団体向け食品ロス削減推進計画策定マニュアルは、地方公共団体が食品ロス削減推進計画を策定する際に役立つ情報を提供しています。
マニュアルには、食品ロスの現状分析、削減目標の設定、推進施策の検討、各主体の役割と行動、計画の進捗確認と見直しなど、計画策定のステップが詳しく解説されています。
また、マニュアルには、参考資料として、用語集や関連資料・URLも掲載されています。
対象となる食品ロスとは
地方公共団体向け食品ロス削減推進計画策定マニュアルで対象となる食品ロスは、家庭、飲食店、小売店、食品製造業など、さまざまな場所で発生する食品ロスです。
各主体に求められる役割と行動
食品ロス削減を実現するためには、それぞれの主体が具体的な行動を起こすことが不可欠です。以下に、各主体に求められる役割と具体的な行動例を挙げます。
1)消費者
消費者は、食品ロス削減において最も重要な役割を担っています。日々の生活の中で意識を変え、行動に移すことが求められます。
- 買い物時:
- 必要な量だけを購入する: 家族構成や消費ペースを考慮し、食べきれる量だけを購入する。
- 衝動買いを避ける: 特売品などに惑わされず、本当に必要なものだけを選ぶ。
- 購入前に冷蔵庫や食品庫を確認する: 同じ食材の重複購入を防ぐ。
- 賞味期限・消費期限を確認する: 期限の近いものから優先的に購入する。
- 「てまえどり」を意識する: 陳列棚の手前にある、期限の近い商品から選んで購入する。
- 調理時:
- 食材を無駄なく使い切る: 皮や葉なども工夫して調理する。
- 適切な量を調理する: 作りすぎを避け、食べきれる量だけを作る。
- レシピサイトなどを活用する: 残り物を使ったレシピを参考にする。
- 食事時:
- 食べられる量だけ盛り付ける: 無理な食べ残しをしない。
- 外食時には食べきれる量を注文する: 食べ残しを持ち帰ることも検討する(持ち帰り可能な場合)。
- 保管時:
- 適切な方法で保存する: 冷蔵・冷凍保存などを適切に行い、食品の鮮度を保つ。
- 期限表示を確認し、早めに消費する: 古いものから順に使う。
2)農林漁業者・食品関連事業者(製造、加工、流通、小売、外食など)
食品の生産から消費に至るまでの各段階で、食品ロス削減に向けた取り組みが求められます。
- 農林漁業者:
- 需要に応じた生産: 市場のニーズを把握し、過剰な生産を避ける。
- 規格外品の有効活用: 規格外品を加工品に利用したり、直接販売したりする。
- 収穫・保管方法の改善: 鮮度を保ち、ロスを減らすための技術を導入する。
- 食品製造・加工業者:
- 製造工程の見直し: 歩留まりを向上させ、不良品の発生を抑える。
- 包装・容器の工夫: 賞味期限の延長や、使い切りやすい容量にする。
- 規格基準の見直し: 安全性を確保しつつ、過度な品質基準を見直す。
- フードバンク等への提供: まだ食べられる余剰品を積極的に寄付する。
- 食品流通業者:
- 効率的な物流システムの構築: 輸送中の品質劣化を防ぎ、リードタイムを短縮する。
- 温度管理の徹底: 食品の鮮度を維持するための適切な温度管理を行う。
- 納品期限・販売期限の見直し: 安全性を確保しつつ、柔軟な期限設定を検討する。
- 食品小売業者:
- 需要予測の精度向上: 販売データを活用し、適切な量を仕入れる。
- 陳列方法の工夫: 消費者の手に取りやすいように工夫し、死角を減らす。
- 値引き販売の活用: 賞味期限が近づいた商品を積極的に値引き販売する。
- バラ売り・少量販売の推進: 消費者のニーズに合わせた販売方法を提供する。
- フードバンク等への提供: 売れ残りや返品されたまだ食べられる商品を寄付する。
- 外食事業者:
- メニューの見直し: 食材を無駄なく使えるメニューを開発する。
- 適量メニューの提供: 小盛りやハーフサイズなどの選択肢を用意する。
- 食材の使い回し・再利用: 衛生管理を徹底した上で、可能な範囲で食材を有効活用する。
- 予約管理の徹底: キャンセルによる食材ロスを減らす。
- 食べ残し削減の啓発: ポスター掲示や声かけなどで、食べきりを促す。
- 従業員への教育: 食品ロス削減の重要性を理解させ、意識向上を図る。
3)農林漁業者・食品関連事業者以外の事業者
直接食品を扱わない事業者も、食品ロス削減に貢献できる可能性があります。
- 宿泊業:
- 食事の予約システムの見直し: 事前の人数把握を徹底し、食材の準備量を最適化する。
- ハーフバイキングなどの導入: 食べたいものを必要なだけ選べるようにする。
- 宴会時の食べ残し削減の呼びかけ: 開始前や終了時にアナウンスを行う。
- イベント主催者:
- 参加人数に応じた飲食物の準備: 事前の参加者数を正確に把握する。
- 使い切り容器の使用: 洗浄の手間を省き、衛生的な提供を心がける。
- 余った飲食物の有効活用: 参加者への配布や、フードバンクへの寄付を検討する。
4)マスコミ、消費者団体、NPO
広報・啓発活動を通じて、社会全体の意識向上と行動変容を促す役割が期待されます。
- マスコミ(テレビ、新聞、雑誌、ウェブメディアなど):
- 食品ロス問題に関する情報発信: 現状や影響、削減に向けた取り組みなどを報道する。
- 消費者の意識啓発: 食品ロスの現状や、家庭でできる対策などをわかりやすく伝える。
- 事業者や地方公共団体の取り組みを紹介: 成功事例などを共有し、他への波及を促す。
- 消費者団体:
- 消費者への啓発活動: 講演会やイベントなどを通じて、食品ロス削減の重要性を訴える。
- 事業者への提言: 消費者の視点から、食品ロス削減に向けた取り組みを促す。
- 情報提供: 食品ロスに関する調査結果や、削減に役立つ情報を提供する。
- NPO(非営利団体):
- フードバンク活動の推進: まだ食べられる食品を必要とする人々に届ける。
- 食品ロス削減に関する啓発活動: 地域社会や特定の層に向けて、啓発活動を行う。
- 政策提言: 食品ロス削減に向けた制度や仕組みづくりを働きかける。
5)地方公共団体
食品ロス削減を推進するための主体的な役割が求められます。
- 推進計画の策定・実施: 地域の実情に合わせた食品ロス削減計画を策定し、具体的な施策を実行する。
- 関係主体との連携: 消費者、事業者、NPOなど、地域の様々な主体と連携し、協働して取り組む体制を構築する。
- 住民への啓発・情報提供: 食品ロスに関する情報や、削減に向けた具体的な行動を周知する。
- 事業者への支援: 食品ロス削減に取り組む事業者への支援策(補助金、技術指導など)を検討・実施する。
- 分別収集・リサイクルの推進: 食品廃棄物の分別収集を徹底し、堆肥化や飼料化などのリサイクルを促進する。
- イベントやキャンペーンの実施: 食品ロス削減をテーマにしたイベントやキャンペーンを実施し、住民の関心を高める。
- 学校教育との連携: 次世代を担う子どもたちへの食品ロスに関する教育を推進する。
- 先進事例の調査・導入: 他の自治体や海外の先進的な取り組みを調査し、参考にしながら効果的な施策を導入する。
- 目標設定と進捗管理: 食品ロス削減目標を設定し、定期的に進捗状況を評価・見直しを行う。
これらの主体がそれぞれの役割を認識し、連携しながら具体的な行動を起こすことで、効果的な食品ロス削減が実現できると考えられます。
食品ロス削減推進計画をどのように進めるのか
食品ロス削減推進計画は、次のようなステップで進められます。
- 現状分析
- 食品ロスの現状を把握し、問題点を分析する。
- 発生量、原因、場所、種類などを調査する。
- 目標設定
- 現状分析に基づき、食品ロス削減の目標を設定する。
- 「2030年までに家庭からの食品ロスを半減する」などの具体的な目標を掲げる。
- 施策検討
- 目標達成に向けた具体的な施策を検討する。
- 消費者、事業者、地方公共団体など、各主体が取り組める施策を考える。
- 実施
- 検討した施策を実際に実施する。
- 関係機関や団体と連携し、協力しながら取り組む。
- 評価・見直し
- 定期的に施策の効果を評価し、必要に応じて見直しを行う。
- 目標達成に向けた進捗状況を確認し、新たな施策の検討を行う。
食品ロス削減推進計画策定のポイント
食品ロス削減推進計画を策定する際には、以下のポイントに注意しましょう。
- 地域の実情に合わせた計画を策定する
- 地域の産業や消費者の特性などを考慮し、効果的な施策を検討する。
- 多様な主体との連携を重視する
- 消費者、事業者、地方公共団体など、様々な主体と連携することで、より効果的な対策を展開できる。
- 継続的な取り組みを重視する
- 食品ロス削減は一朝一夕で解決できる問題ではない。継続的に取り組むことが重要。
食品ロスは、環境問題だけでなく、社会問題でもあります。食品ロスを減らすことは、資源の有効活用や、食料安全保障の確保にもつながります。
地方公共団体は、食品ロス削減推進計画を策定することで、食品ロスを減らすための具体的な対策を講じることができます。
地方公共団体向け食品ロス削減推進計画策定マニュアルは、地方公共団体が食品ロス削減推進計画を策定する際に役立つ情報を提供していますが、食品ロスを減らすために、各主体が役割を果たすことが重要です。
関係する事業者は食品ロス削減推進計画を策定し、実施することで、食品ロスを減らすことができますが、実現には一人ひとりの意識改革が求められます。