自主的な排出量取引制度であるGX-ETSとは? | グリーンジョブのエコリク

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自主的な排出量取引制度であるGX-ETSとは?|グリーンジョブのエコリク コラム

2025.4.18

トピック

自主的な排出量取引制度であるGX-ETSとは?

地球温暖化対策が喫緊の課題となる中、日本政府は2050年カーボンニュートラル実現に向けた戦略「GX(グリーントランスフォーメーション)」を推進しています。

GX(グリーントランスフォーメーション)とは

GX(グリーントランスフォーメーション)とは、化石エネルギー中心の産業構造・社会構造から、クリーンエネルギー中心へ移行するための変革です。具体的には、以下のような取り組みが含まれます。

  • 再生可能エネルギーの導入拡大
  • 水素・アンモニアなどの次世代エネルギーの活用
  • 省エネルギー技術の開発・普及
  • 炭素回収・有効利用・貯留(CCUS)技術の活用
  • サーキュラーエコノミー(循環経済)の推進

GXは、単なる環境対策ではなく、経済成長と両立させることを目指しています。

GXリーグとは

GXリーグとは、2050年のカーボンニュートラル実現と社会変革を目指し、GXに挑戦する企業が、官・学とともに協働する場です。参加企業は、排出量削減目標の設定や排出量取引への参加を通じて、脱炭素社会の実現に貢献します。

GX-ETSとは

GX-ETSとは、GXリーグにおける自主的な排出量取引制度のことです。参加企業は、CO2削減量・吸収量を取引できます。この制度は、企業が排出量削減目標を達成するための柔軟な手段を提供し、脱炭素投資を促進することを目的としています。

GX-ETSの背景

世界各国でETS(排出量取引制度)が導入される中、日本でも独自の制度設計が求められていました。GX-ETSは、企業の自主性を尊重しつつ、排出量削減を促すための制度として導入されました。

GX-ETSの仕組み

GX-ETS(GX排出量取引制度)は、参加企業が排出量削減目標を設定し、それを報告するプログラムです。2023年12月31日現在、GXリーグに参加している企業は658社です。GX-ETSのルールは、専門家や参加企業との協議を通じて策定されています。

GX-ETSの第1フェーズでは、企業は2030年と2025年の直接排出と間接排出の削減目標、および第1フェーズ(2023-2025年)の合計削減目標を設定します。また、企業は実際の排出量を報告し、第三者機関による検証を受けます。企業は排出枠を売買でき、目標を上回った企業は超過削減を売却することができます。企業が目標達成に向けた進捗状況と取引活動は、「GXダッシュボード」に公開されます。

図1 GX-ETS 第1フェーズの概要
出所)GXリーグ「GX-ETSの概要」(※1
図2 GX-ETS の段階的発展のイメージ
出所)GXリーグ「GX-ETSの概要」(※1

2026年度頃以降は、本格稼働予定となる第2フェーズになりますが、第1フェーズの動向や国際社会の変化を参考にしながら検討されていくことになります。参加対象企業や目標設定の水準などが今とは違うものになる可能性もあります。

2033年度頃(第3フェーズ)からは、GX推進法によって排出枠の有償化が定められるとされており、段階的に発展していくと予想されています。
このように、ETSの導入により各企業が基準年度を設定し、2030年度および2025年度の削減目標、さらに2023年度から2025年度の総削減量目標を策定します。
その後、年度ごとに排出量実績を算定・報告し、目標を上回る削減を達成した場合、超過削減枠として取引が可能となります。一方で、目標未達の場合は、他社からの超過削減枠やカーボンクレジットの購入、もしくは未達理由の説明が求められます。

GX-ETSは、企業の自主性を尊重しつつ、全体としての温室効果ガス削減を促進することを目的としています。
これにより、企業間の協力や技術革新を通じて、持続可能な社会の実現を目指していきます。また、GX-ETSは日本初の全国規模の排出量取引制度であり、企業の一定以上の排出削減努力が「超過削減枠」として取引されるでしょう。

企業の対応策

  • 目標設定と戦略策定: 自社の排出量削減目標を設定し、目標達成に向けた戦略を策定する必要があります。
  • 排出量算定と可視化: サプライチェーン全体の排出量を算定し、可視化することが重要です。
  • 排出量取引の活用: 排出量取引市場を活用し、排出枠やクレジットの売買を行うことで、排出量削減目標の達成を目指します。
  • 情報開示とコミュニケーション: 排出量削減の取り組みや排出量取引の状況について、積極的に情報開示を行うことが求められます。

GX-ETSがもたらす影響

  • 脱炭素投資の促進: GX-ETSは、企業に脱炭素投資を促し、グリーンイノベーションを加速させます。
  • 企業の競争力強化: 脱炭素化に積極的に取り組む企業は、投資家や消費者からの評価を高め、競争力を強化できます。
  • 新たなビジネスチャンスの創出: 脱炭素関連の技術やサービスに対する需要が高まり、新たなビジネスチャンスが生まれます。

まとめ

GX-ETSは、カーボンニュートラル実現に向けた新たな挑戦です。今後、企業は、政府の政策を理解し、GXリーグへの参加、排出権取引の活用、GX経済移行債の発行を進めることで、企業は持続可能な経営を実現できます。2026年の本格導入に向け、企業は今から対応策を講じることが求められるでしょう。

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執筆者

神戸 修

神戸 修(こうべ おさむ)

株式会社グレイス ゼネラルマネージャー

大阪学院大学 流通科学部流通科学科卒 学生時代より、就活・キャリア支援のサークルを立ち上げ人材ビジネス会社、給食会社にて法人営業、採用、広報業務に従事 アニュアルレポート、統合報告書の作成 東日本大震災等では現地の医療関連従事者の業務サポートを手がける

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