エコリクコラム

2025.3.26
トピック
GRESB(グレスビー)とは?不動産ESG評価の重要指標を解説
近年、ESG投資が世界的に拡大する中で、不動産分野においても環境・社会・ガバナンス(ESG)への取り組みが重要視されています。その評価指標として注目されているのが「GRESB(グレスビー)」です。
GRESBとは
GRESB(Global Real Estate Sustainability Benchmark)は、不動産会社やファンドなどのESGへの取り組みを評価する国際的なベンチマークです。2009年に欧州の主要な機関投資家グループによって設立され、現在では世界中の投資家が投資判断の材料として活用しています。
GRESBは、以下の2つの側面から不動産のサステナビリティを評価します。
- マネジメントコンポーネント: ESGに関する方針や組織体制、取り組み状況などを評価
- パフォーマンスコンポーネント: 実際の環境パフォーマンス(エネルギー消費量、温室効果ガス排出量など)を評価
米国の「LEED」や「WELL」との違い
GRESBと混同されやすい指標として、米国の「LEED」や「WELL」があります。これらの違いは以下の通りです。
- LEED: 個別の建物に対する環境性能評価システム
- WELL: 建物の居住者の健康やウェルビーイングに焦点を当てた評価システム
- GRESB: 不動産会社やファンド全体のESGへの取り組みを評価
つまり、LEEDやWELLは建物単位の評価であるのに対し、GRESBは組織全体の評価という点で大きく異なります。
GRESBの評価尺度
GRESBの評価は、以下の2つのコンポーネントで構成されています。
1)マネジメントコンポーネント
ESGに関する方針、組織体制、ステークホルダーとの連携などを評価します。主な評価項目は以下の通りです。
- ESG戦略とガバナンス
- リスク管理
- ステークホルダーとのエンゲージメント
2)パフォーマンスコンポーネント
実際の環境パフォーマンスを評価します。主な評価項目は以下の通りです。
- エネルギー消費量
- 温室効果ガス排出量
- 水消費量
- 廃棄物管理
GRESB評価を受けるメリット
GRESB評価を受けることで、投資家と不動産会社それぞれにメリットがあります。
1)投資家
- 投資先のESGリスクと機会を把握できる
- ESGパフォーマンスの高い投資先を選別できる
- 投資先とのエンゲージメントに活用できる
2)不動産会社
- ESGへの取り組みを可視化できる
- 投資家からの信頼性向上につながる
- ESGに関する改善点を把握できる
GRESB評価を向上させるには
GRESB評価を向上させるためには、以下の取り組みが有効です。
- ESGに関する方針や目標を明確化する
- ESGに関するデータ収集・管理体制を強化する
- エネルギー効率の高い設備を導入する
- 再生可能エネルギーの利用を促進する
- ステークホルダーとの対話を重視する
今後の課題と展望
GRESB評価は、不動産セクターのESGへの取り組みを促進する上で重要な役割を果たしていますが、今後の課題も存在します。
1)気候変動に関する取り組み
気候変動対策は、GRESB評価の中でも特に重視されています。不動産会社は、温室効果ガス排出量の削減目標を設定し、具体的な削減計画を実行する必要があります。
2)ネットゼロに向けた課題
ネットゼロ目標の達成は、不動産セクターにとって大きな課題です。エネルギー効率の向上や再生可能エネルギーの利用だけでなく、サプライチェーン全体での排出量削減が求められます。
3)今後の展望
GRESBは、今後も不動産セクターのESG評価における重要な指標として活用されるでしょう。不動産会社は、GRESB評価を向上させることで、投資家からの信頼を獲得し、持続可能な社会の実現に貢献するとともに、企業価値の向上にもつなげることができます。