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CO2からエネルギーを産み出す!|グリーンジョブのエコリク コラム

2025.3.3

トピック

CO2からエネルギーを産み出す!

地球温暖化の進行とともに、大気中の二酸化炭素濃度は加速度的に増加し、気候変動による深刻な影響が世界各地で顕在化しています。
異常気象による災害の頻発、海面の上昇、生態系の破壊など、その影響は多岐にわたり、この地球自体の持続可能性を脅かす深刻な課題となっています。

こうした状況に対し、CO2排出量の削減と並行して、大気中からCO2を直接回収し、有効活用する技術の開発が急務となっています。
ケンブリッジ大学の研究者たちは、太陽光を動力源とし大気中のCO2を直接回収し持続可能な燃料に変換するという研究を発表(※1)しましたので、この研究結果を説明いたします。

直接空気回収と利用について

ケンブリッジ大学の研究結果は、夜間のうちに空気からCO2を回収し、日中に太陽エネルギーを利用して合成ガス(一酸化炭素と水素の混合物)に変換する機能的な反応器の実証に成功したというものです。
この研究結果は現在のCO2削減計画に大きな影響を与える可能性があります。

図1 DACCU through a dual-bed flow reactor consisting of DAC and CO2U units.

a、夜間にライトを消して運転しているシステムの概略図。b、日中にライトを点灯して運転しているシステムの全体概略図。c 、化学的 CO 2回収および放出方程式を備えた炭素回収ユニット。 d、太陽光駆動 CO 2 U ユニットの材料構成と関連する還元および酸化反応。 RT、室温。MFC、マスフローコントローラー。PEI、ポリエチレンイミン。PET、ポリ(エチレンテレフタレート)。EG、エチレングリコール

出所)Nature Energy「Direct air capture of CO2 for solar fuel production in flow」(※1

システムは周囲の温度および圧力条件下で動作し、従来のCO2変換方法と比較してエネルギー需要を削減します。

(太陽光発電プロセス)

太陽光を効果的に利用してCO2変換に必要な化学反応を促進し、持続可能な燃料生産が可能であることが実証されました。

(統合システム)

CO2回収と変換を単一のフローシステムに統合し、プロセスを効率化し、潜在的にコスト削減します。
分離された捕獲段階と反応段階を持つ二重床システムの使用は、より効率的なプロセスを可能にします。

(合成ガス生産)

さまざまな化学物質や燃料合成プロセス用の汎用性の高い原料である合成ガスの生産を検証しています。

研究結果が抱える課題

この研究結果には、まだまだ解決しないといけない課題があります。

(拡張性)

産業レベルへの技術のスケールアップが課題です。商業的に実行可能にするためには、システムの全体的な効率を改善する必要があります。
各国の電源構成比較を見ても、再生エネルギーの構成比にはばらつきがあることから、導入までには時間がかかることが予想されます。

図2 各国の電源構成の比較
出所)資源エネルギー庁「再生可能エネルギーの導入状況」(※2

(効率と安定性)

CO2回収と変換の効率、および反応器で使用される材料の長期安定性を改善するために、さらなる研究が必要です。特に光触媒の長期耐久性を今後検証する必要があります。

(経済的実行可能性)

技術の採用には経済的実現可能性が重要です。費用対効果の高い材料と製造プロセスが不可欠です。
今後は、ビジネス展開できるための投資と現在のエネルギーインフラに組み込んでいくことができるかなど検証が必要です。

(昼夜運転)

夜間にCO2を回収、昼間に太陽光を使用してエネルギーに変換という流れは、効率的ですが、回収されたCO2の効率的な貯蔵と、利用可能な太陽光の非常に効率的な利用が必要になります。

(対抗反応)

現在の研究では、解重合されたポリエチレンテレフタレートプラスチック(PET)の酸化が対抗反応として使用されていますが、広範な採用のためには、より環境に優しい対抗反応を見つける必要があります。

(まとめ)

この研究はCO2を回収することでエネルギー化するという、CO2削減への取り組みとしてかなり有望ですが、拡張性、効率、経済的実行可能性に関連する課題を克服するためにさらなる研究が必要でもあります。

けれど、この革新的な技術は、化石燃料に依存しないクリーンなエネルギーサイクルを構築する可能性を秘めており、地球温暖化対策の切り札として期待できます。

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執筆者

神戸 修

神戸 修(こうべ おさむ)

  

株式会社グレイス ゼネラルマネージャー

大阪学院大学 流通科学部流通科学科卒
学生時代より、就活・キャリア支援のサークルを立ち上げ人材ビジネス会社、給食会社にて法人営業、採用、広報業務に従事
アニュアルレポート、統合報告書の作成
東日本大震災等では現地の医療関連従事者の業務サポートを手がける

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