建設業が抱える課題とサステナビリティ | グリーンジョブのエコリク

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建設業が抱える課題とサステナビリティ|グリーンジョブのエコリク コラム

2025.2.13

トピック

建設業が抱える課題とサステナビリティ

一般社団法人日本建設業連合会HPによると、建設業就業者数は、1997年(685万人)をピークとして減少が続いており、2023年はピーク時比70.5%の483万人まで減少していることがわかります。
そのうち、建設技能者はピーク時(1997年464万人)と比べると66.2%の307万人まで減少しています。

図1 建設業就業者数の推移
出所)一般社団法人日本建設業連合会サイト「建設業の現状 4. 建設労働」(※1

建設業界は若年層にとって魅力的なキャリアパスであるにも関わらず、仕事がきつい、残業が多いなどの多くの誤解が拡がっています。
建設業は働き方改革も進んできており、またIT化は進み、環境に配慮した取り組みも多く実施していて、CO2削減にもかなり注力をしています。

気候変動問題について

環境省HP「産業部門におけるエネルギー起源CO2」によると、鉄鋼業からのCO2の排出が最も多く、全体の4割弱を占めています。その後は、化学工業、機械製造業が続いており、この3業種で全体の排出量の65%を占めています。
建設業は全体の2%とかなりCO2の排出が低いことがわかります。

図2 産業部門からのエネルギー起源CO2排出量の業種別内訳
出所) 環境省サイト「2.3 産業部門におけるエネルギー起源CO2」(※2

また、大手建設業は、事業活動で消費するエネルギーを100%再生可能エネルギーで調達することを目標とする国際的イニシアチブである『RE100』に参加しています。
更に、建設業の多くはCDP、国連グローバルコンパクト(UNGC)、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)が共同で運営しているSBT(Science Based Targets)の認定を受けていることが多いです。
2024年3月時点で、世界のSBT認定企業は4,779社であり、日本企業はそのうち904社にのぼります。業種別では電気機器と並んで建設業の会社が多いく、建設業全体が環境に配慮している事業形態であることがわかります。

法改正

2025年4月から、改正建築基準法および改正建築物省エネ法が施行されます。
今回の建築基準法・建築物省エネ法改正の目的は、建築物分野における省エネ対策を加速させること、および木材利用を促進することです。
国際的な枠組みにより、2050年のカーボンニュートラルおよび2030年度の温室効果ガス46%削減(2013年度比)の実現が、私たちの目標に掲げられています。それらを踏まえて、政府は2021年10月、地球温暖化対策等の削減目標を強化しました。
建築物分野は、日本におけるエネルギー消費の約3割、木材需要の約4割を占めています。
建築物分野における省エネ対策と木材利用の促進は、カーボンニュートラルおよび温室効果ガス削減の目標達成を目指す上で効果が大きいと考えられるため、建築基準法および建築物省エネ法が改正されることになりました。

出所) 国土交通省サイト 建築基準法・建築物省エネ法 改正法制度説明資料より抜粋(※3

カーボンニュートラル化でゼネコンが出来ることは何か?

構造物の建設・供用におけるカーボンニュートラル化は、設計者と発注者など立場によって方策が異なります。
発注者にとっては Scope1、2という構造物を使う過程で削減可能なものが対象となります。
一方で設計者側にとっては、Scope 1、2にとどまらず Scope3、それも上流側の Scope3における対策がCO2削減にとって重要になります。
設計事務所等が材料の供給者にカーボンフットプリントを求める動きもはじまっています。
当然、求められた材料供給者はその原料の製造者にカーボンフットプリントを求めることになり、徐々に上流側へとカーボンニュートラルの動きが伝播しつつある状況にあります。
では、施工側はどうかというと、ゼネコンがカーボンニュートラル化を自身の Scope1、 2で達成したとしても、実際にはそこまで大きな影響がないと言われています。
それは、発注側の仕様に沿って施工するため、使用する重機のハイブリッド化や電気自動車化、あるいは省エネに努めるということが主な CO2排出削減方策になります。
確かに工事において出来ることは少ないですが、そもそも構造物が長く使われる、長寿化されればCO2の排出削減に有効になります。
ただし、建築物は寿命を全うできずに解体されることが非常に多いため、この「寿命(=耐用年数)」には、劣化して駄目になる物理的な耐用年数を筆頭に、機能的耐用年数や経済的耐用年数、法定耐用年数等、様々な種類があります。
また、経済的耐用年数は法定耐用年数とも減価償却という点で深くリンクしていたり、機能的耐用年数も経済的耐用年数と絡んでいたりします。この経済的耐用年数が、最も建築物の寿命を支配しているものであろうと考えます。破壊されれば新しいものを作らなければならず、それには材料が必要になり、当然CO2が排出されます。
建設した建築物は、できる限り長い期間使い続けられるものが一番のCO2排出削減につながるのかもしれません。


2030年・2050年に目指すべき住宅・建築物のあり方

経済産業省は、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、住宅・建築物のあり方を以下のように公表しています。
●2030年:新築の住宅・建築物について、ZEH※4・ZEB※5水準の省エネ性能が確保され、新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備が導入されていること。
●2050年:既存建築物の平均でZEH・ZEB水準の省エネ性能が確保され、導入が合理的な住宅・建築物において、太陽光発電設備などの再生可能エネルギーの導入が一般的になること。
今後はスコープ3のGHG排出量を削減する上で重要となる環境負荷の少ない材料として、グリーンコンクリートや木造の利用拡大が期待されます。

※4 ZEBとはNet Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称で、「ゼブ」と呼びます。快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のこと。

出所) 環境省サイト ZEB PORTAL[ゼブ・ポータル]やさしい説明 1. ZEBとは?(※4

※5 ZEHとは「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅」です。

出所) 国土交通省サイト ZEH・LCCM住宅の推進に向けた取組(※5

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執筆者

神戸 修

神戸 修(こうべ おさむ)

  

株式会社グレイス ゼネラルマネージャー

大阪学院大学 流通科学部流通科学科卒
学生時代より、就活・キャリア支援のサークルを立ち上げ人材ビジネス会社、給食会社にて法人営業、採用、広報業務に従事
アニュアルレポート、統合報告書の作成
東日本大震災等では現地の医療関連従事者の業務サポートを手がける

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