ミスをする理由は何か? | グリーンジョブのエコリク

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2025.2.4

トピック

ミスをする理由は何か?

ミスをしない人はいませんが、ミスには防げるミスも多くあります。労働災害の分野でよく知られているハインリッヒの法則ではないですが、小さなミスが積み重なるといつか重大なミスが生じ、会社に対して損害が起きる可能性があります。

そのため、ミスの理由を科学的に検証していきます。

ハインリッヒの法則とは・・・アメリカの損害保険会社の安全技師であったハインリッヒが発表した法則で「1:29:300の法則」とも呼ばれます

(詳しくは 厚生労働省HP(※1)を参照)

ミスの種類 ①メモリーミス

ミスの種類の中には『忘れてしまった』ということがあると思います。

梅本堯夫「失語症研究」(※2)によると、そもそも人の記憶は「感覚記憶」という感覚器官で瞬間的に情報が保管され、必要でないと1~2秒で消えるもの、「短期記憶」は感覚記憶よりは長い時間保存されますが、数十秒覚えられる記憶で一度に8個以上のことを記憶することが困難だと言われています。

「中期記憶」は短期記憶を24時間以内1回、7日間で7回以上復習することで数か月の間、記憶されると言われています。
数年記憶として残る「長期記憶」については、単に回数だけではなく、感情の起伏や複数の記憶が組み合わさったエピソード記憶とすることが重要だと言われています。
仕事上で忘れてしまったというものは「短期記憶」から「中期記憶」への移行がうまくいっていないことが原因です。

エビングハウスの忘却曲線では人の記憶は1時間後には約50%忘れると言われています。
また、仕事の理解が不十分、仕事の本質を理解していない、その仕事の前後を理解、把握できていないなどもこのメモリーミスにつながる恐れがあります。

また、精神的ゆとりも大事です。
脳は緊張状態に陥ってしまうと緊急時に分泌される「ノルアドレナリン」などの神経伝達物質が脳へ過剰に働きかけることで、思考がフリーズしてしまいます。
特に「ノルアドレナリン」は短期記憶の機能をつかさどるワーキングメモリを鈍らせる働きがあるため、脳内の情報処理がうまくいかず、「言われたことが頭に入らない」、「言われたことが理解できない」といった状況になります。

業務の指示をする際に相手にプレッシャーを与えないこともミスを減らすには重要なことです。

対策としては脳が記憶を忘れてしまうなら、「覚えておかなければいけないこと」をメモやTodoで管理する、システムでアラートを入れるなど自らの記憶に過信しないことが一番です。

ミスの種類 ②アテンションミス

アテンションミスは、ケアレスミスといわれる『見落とし』のことです。

どうして『見落とし』が起きるのか。これは上司が部下を『叱責』しても『アテンションミス』はなくなりません
「アテンション」とは「注意・関心」のことですが、この「注意・関心」が記憶されるのは『短期記憶』で使用される『ワーキングメモリ』を使用しています。

ワーキングメモリは容量が小さく、記憶としてほとんど脳に定着しないため、「わかったつもり」、「できているつもり」になってしまいます。
また、焦るとワーキングメモリの活動が鈍くなるため記憶があいまいになり、理解力が低下します。

対策としてはミスが多い作業や、緊急時の作業、心にゆとりが持てない作業などにはチェックリストを作り、一つずつ確認することが大切です。

ミスの種類 ③コミュニケーションミス

愛知学院大学 岡本真一郎氏の「ミス・コミュニケーションはどのように発生するのか」(※3)の調査結果では上位は1位「聞き間違い」、2位「指示対象による間違い」、3位「推意」となっていました。

  • 1位の「聞き間違い」は発音、速度により聞き間違いが起きやすく、コロナ禍以降のオンラインでの打ち合わせなどでは、機器により発生する頻度が高い。
  • 2位の「指示対象による間違い」は「それ」、「あれ」などの指示語が共通認識になっていないためコミュニケーションミスの頻度が高い。
  • 3位の「推意」は、情報の送り手の意図とは別の意味で受け取ってしまうことでの差が起きている。原因としては情報の送り手と受け手の間に、属する世代・文化や知識量、理解力などの明確な相違・格差があるため起きやすい。

対策としては、口頭のみではなく記録を残す、繰り返し確認する、不明点をすぐに質問する、指示語は避けて、具体的に説明するなどがあります。

ミスの種類 ④ジャッジメントミス

ノーベル経済学賞を取った心理学者のダニエル・カーネマンは脳の中では「速い思考」と「遅い思考」の2つが使われていて、特に速い思考が判断の誤りにつながると言っています。(参照:『ファスト&スロー(上・下)』ダニエル・カーネマン[著](※4))

速い思考は直感や感情のように自動的に発動するもので、日常生活のおおかたの判断を下しています。一方、遅い思考は熟慮とでも呼ぶべきもので、意識的に努力しないと起動しません。速い思考の判断を退けて遅い思考を働かせるのは、多くの人にとって難しいと言われています。

速い思考とは、過去の経験でうまくいった、うまくいかなかったなど、検証されたわけでもなく、自分の思い込みで判断をして起きるミスのことです。

対策としては速い思考が下す判断を遅い思考で検証するというプロセスが有効だと言われています。
後は経験することです。初めての経験だと心にゆとりがなくなり、脳が緊張状態になり、思考がフリーズしてしまいます。

気持ちにゆとりがないときこそ、少し時間をとるなど心がけましょう。

普段からミスをしないためには

 自分自身の行動や状態を客観的に振り返る

振り返るときはその時の『出来事』、『状況』、『行動』、『感情』で振り返ると記憶もよみがえりやすく、また問題も見えてきます。

 ワーキングメモリを鍛える

ウェイン・キルヒナー氏が、脳の機能や活動を調査するために考案したNバック課題がワーキングメモリを鍛えるのに有効です。

 検証論文 ワーキングメモリにおける短期的トレーニングの影響(※5

Nバック課題とは、一定の間隔で提示される文字や数字などを見て、N個前に提示されたものと同じかどうかを判断します。Nが大きくなるほど難易度が上がります。
また、このNバック課題は前頭前皮質の脳機能を調べる方法であり、軽度認知障害(MCI)やアルツハイマー型認知症の診断に有効とされています。

 最後に

ミスが起きるのは脳の機能が低下している、ミスしたときの手順や行動が適切ではない部分があることが多いです。

もちろん、自分自身に問題がある場合もあります。ミスの原因を調べ対策することが大切です。
ミスをしないことが一番ですが、ミスを悔やむのではなく、勉強だと思っていただければと思います。

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執筆者

神戸 修(こうべ おさむ)

  

株式会社グレイス ゼネラルマネージャー

大阪学院大学 流通科学部流通科学科卒
学生時代より、就活・キャリア支援のサークルを立ち上げ人材ビジネス会社、給食会社にて法人営業、採用、広報業務に従事
アニュアルレポート、統合報告書の作成
東日本大震災等では現地の医療関連従事者の業務サポートを手がける

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