エコリクコラム
2024.10.7
トピック
ドイツの環境を守る取組-後世に引き継ぐために
ミツバチ大作戦
私はフォーミュラ・ワン(以降、「F1」と記載)という車のレースが好きで、機会があれば国内のみならず海外にも観に行っていました。しかし、サーキットは交通の便がいいところにはなく、たいていは都市から離れた大自然の中にあり、かなり大変な思いをして行くことになります。
昨年の日本グランプリのときに、ドイツ人の元F1ドライバーであるセバスチャン・ベッテルが、鈴鹿サーキットのコース内のエリアに蜂などの隠れ家となる「昆虫ホテル」を設置する取組を行っていました。F1は環境に負荷が大きい化石燃料を使うので、近年は環境に配慮した取組が行われるようになり、彼はその一環で、生物多様性への関心を高めるためのプロジェクト「Buzzin’ Corner」を立ち上げたのです。それにしても、ベッテルの取組はどうしてミツバチなのかと思っておりましたが、6月にドイツに行ったときに、その謎をベルリン在住の友達が解き明かしてくれました。
ベルリンのティーアガルテンという公園に、映画「ベルリン・天使の詩」の中でシンボル的に登場した戦勝記念塔ジーゲスゾイレがそびえ立っています。このモニュメントへ続く道路の分離帯が、まるで自然の野花が咲き乱れているかのような場所になっていました。友達はそこを指さし、ここの土地の環境に合う花を実験的に色々植えていると説明してくれました。そして、草花が自然になじんだという証拠にミツバチが見られるようになったそうです。日本でも銀座や新宿のビルの屋上で養蜂が行われていると聞いて、ミツバチが環境保全の指標になっていることを知りました。
野花
ベルリンで見られたような、その土地の環境に適した草花を植える取組は、他のドイツの都市でも実施されており、例えば、デッサウにあるバウハウスの校舎周辺でも見られました。一見、何もしていないただの草がぼうぼうと生えているようにも見えますが、看板には「ここでは、野生のミツバチや蝶の生息を促すために花が咲きほこる牧草地が作られています(直訳)」とありました。(※本ページ最上部の画像:バウハウス近くに咲く花の案内板 出所:筆者撮影)
日本でよく見られる同じ種類の花が画一的に植えられている花壇とはまったく違う景色で、子供の頃に田舎の近所の野原で見た風景を思い出しました。
ドイツでは植え替えをしなくても自然にその土地にあった花が咲き続け、そしてミツバチが来るように模索しているようです。東京でも更地になってしばらく放置されている土地には、どこから来たのか様々な色の花が咲いていることがあります。それが自然なこととしてあらためて見ると、案外気持ちのよいものに思えてきます。
省エネ改修
ベルリンのティーアガルテンにあるインターバウと呼ばれる集合住宅群には、1957年にヴァルター・グロピウスやアルヴァ・アアルト、オスカー・ニーマイヤー、ル・コルビュジエなどの有名な建築家によって設計された建物が建っており、今でも使われています。建物は改修が行われ、外観は綺麗になったそうです。また、住宅にはクーラーが付いていないので外の熱を室内に入れない、冬は室内の熱を外に逃がさない対策が施されており、省エネ改修による快適性も追及されていました。私が訪ねたユニットは古い木枠の窓に内窓を付けて二重窓になっていました。また、個別に改修が行われていたユニットの窓は、見た目が変わらないようにガラスをLow-Eガラスに替えられ、断熱性能を上げていました。建物が建ってから60年以上が経ち、周りの木々も大きく成長したので、窓を2か所開けると涼しい風が室内を通り抜けるそうです。
しかしながら、昨今の地球温暖化による暑さに白樺が耐えられず、立ち枯れしている木をいくつも見かけました。同じ場所にあった木は同じ種類の木を植えることになっており、今は暑さに強い品種の白樺へ植え替えているそうです。同じ環境と景色を守り続けるために、むやみやたらと木を植えているわけではないその意識に驚きました。そこにあった木もそこの環境を作る一員なのです。
ヤモリの家
集合住宅の壁には丸い穴が開いていました。キツツキなどの鳥が巣穴を作って住んでいるそうです。そして、住宅を改修するときはその建物に住んでいるヤモリや鳥などの生き物の数を数え、改修後も同じ家に住めるように家を作ってあげるそうです。以下の写真の建物の軒下に付いている、穴の開いた直方体のものが、改修後に新たに作られたキツツキかヤモリの新居です。
世界遺産となった「ベルリンのモダニズム集合住宅群」をいくつか訪れた際には、住民が建物とともにその周辺環境も楽しんで生活していることと、その環境を守り続けていることに感動しました。その環境は住民ではない人が訪れても気持ちのよいものでした。
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