エコリクコラム
2024.7.22
トピック
ドイツのモビリティ事情
ドイツ再訪
建築を学んでいた大学4年のときに卒業設計と卒業論文の単位だけ残し、教授に卒論を書くためにヨーロッパに行って来ますと伝えて、同級生と二人で6月から2か月半、旧西ヨーロッパとイギリスをバックパックで回りました。それ以来、実に30年以上ぶりにドイツに行って来ました。
当時は西ドイツと東ドイツに分かれていて、その後、ベルリンの壁がまさか壊されるとは思いもよりませんでした。今回は旧東ドイツだったところへも行くことができました。何年も前から有名な建築物の改修が始まり、ベルリンにあるミース・ファン・デル・ローエが設計した新ナショナルギャラリーや旧東ドイツだったデッサウにあるバウハウスなど運良くすべて綺麗になっていました。
今回のドイツ訪問ではリサイクルとモビリティ事情を調査するつもりでおりました。しかし、リサイクルについては、リサイクルするビン・缶・紙類とそれ以外にざっくり分けてごみ箱に入れ、あとは回収後分別されるというものでした。 そこで今回はモビリティについてお知らせしたいと思います。
電気自動車(EV)の普及に向けて
EUは2035年までにすべてのガソリン車の新車販売を禁止するとしていましたが、合成燃料を利用する車の販売を認める方向になりました。しかしながら、電気自動車(Electric Vehicle/以降、EVと記載)へ切り替えていくことに変わりありません。
自動車販売台数に対するEV率は、2023年において日本は約3.6%、ドイツは2022年の31%からは下がりましたが24%でした。
ドイツにおける公共EV充電スポット(充電スタンド)数は、2023年には10万スポットを超えています。日本においては、災害対策用に充電機能も兼ねて自治体の公用車にEV等が導入されており、役所の駐車場には充電設備の設置が進んでいます。また、道の駅や新築マンションなどでも充電器が導入され始めています。
日本よりEVの普及率が高いドイツでは、道路脇の駐車エリアにも充電器が設置されていました。
自転車事情
ドイツでは車道の歩道側に白い線が引かれ、幅の広い自転車レーンがありました。また、歩道に赤茶色で塗装されている自転車レーンもありました。
交差点の先頭で自転車が待つことができるエリアが設けられている場所もあり、扱いはまさに「車両」でした。(※本ページ最上部の画像参照 出所:筆者撮影)
そして、ベルリン市内では完全な自転車専用道路が町の中にあり、自動車は住民だけが通ることができるそうです。シェアモビリティ
シェアサイクルは日本のようなサイクルポートというのがなく、乗り降り自由だったことには驚きました。よって、いたるところに自転車が乗り捨てられていました。さて充電はどうしているのかと聞くと、充電することを登録した者が自転車の充電器を家に持ち帰り、充電して戻しているそうです。それがちょっとした小遣い稼ぎになっているようで、マンパワーをかけずにシェアサイクルを運営できる、実に合理的なシステムだと思いました。
学生時代、バックパックで一緒に行った友達がドイツ人から自転車を借りてベルリンを観光した帰路にパンクし、押して帰って来たことがありました。そのときドイツ人に、電車に乗せて帰って来ればよかったのにと言われ、友達にはそのような考えすらありませんでした。そして今も電車とバスに自転車を持ち込める車両があります。混んでいる車両で自転車は邪魔だと思うのですが、誰も嫌な顔はしていませんでした。 今、日本でも私の住む西武多摩川線では、電車の1両目に自転車を持ち込めます。観光地ではありませんが、その路線はアメリカンスクールや国際基督教大学、東京外国語大学があり、外国人が多く住むエリアだからできたことかもしません。
ドイツでは、シェア電動キックボードに乗っている人も多く、これもポートがないようであちこちに転がっていました。自転車同様に何社も参入しており、色々なタイプのキックボードを見かけました。そして、自転車レーンを走っていたので、最近日本のニュースでよく聞くような人混みをぬって走るようなことはありませんでした。
ラストワンマイルの移動手段を普及させるには
ドイツで自転車や電動キックボードが走りやすいと思った理由は、路上駐車がないことです。駐車灯を付けてずっと停まっている車は見かけませんでした。人のピックアップは、人が歩道で待っていてそこに車が現れ、さっと乗せていました。
また、車と逆走する自転車はなく、規則を守ることも自転車等の利用を推し進める理由の一つと気付きました。
車より環境負荷の少ない自転車などの利用を増やすには、ハード面だけでなく、我々の意識も変えていかなければならないと改めて思いました。
前回、ベルリンに行った時はベルリンの壁があり、ブランデンブルク門に近寄れませんでしたが、今回はEUROサッカーで門の前に大型ビジョンが設置され、周りはバリケードで囲まれていました。また、ドイツの進化を確かめに訪れることにします。