エコリクコラム
2017.9.20
インタビュー
大谷 徹 氏・鶴間 亮一 氏 | 幅広い環境保全事業に上流側で携わる仕事
エネルギー、社会インフラ、防災・環境保全などで発展を続けている「国際航業株式会社」。
環境保全部の大谷様、鶴間様に環境保全事業の仕事内容、やりがいなどをお話しいただきました。
これまでのご経歴をお聞かせください。
◇大谷
平成元年に新卒で入社して、29年目になります。入社時から約10年間、建設コンサルタント分野で河川の環境計画業務に携わりました。河川行政の中核である河川法は、洪水を抑える治水機能、水を利用する利水機能、環境という大きな3本柱から成り立っています。このうち私は環境分野で環境整備事業、例えば親水護岸や公園を作る業務に従事し、国の施策である「ふるさとの川整備事業」などを主に行なってきました。
その後、河川の環境に関する研究所「財団法人リバーフロント研究所」に3年間出向しました。財団では国の施策を作る側で業務に携わる経験ができました。
戻ってきてからは、地理空間情報に関する技術分野で、航空レーザ測量の河川分野での活用について10年近く取り組み、約10年前に今の部署に移りました。現在部門長を務めている「環境保全部」は、河川・水環境、海洋、資源循環からエネルギーまで環境保全に関わる幅広い仕事をしています。
環境保全は幅広い分野です。当社の「環境保全部」は様々な業務を担当しており、自然環境や生活環境業務を担う部署「環境グループ」を鶴間がマネージメントしています。
具体的には、環境アセスメント関連業務が中心ですが、生活環境における騒音調査なども行います。また、廃棄物処理場の計画や設計を行う「資源環境推進グループ」、土壌や地下水の汚染調査や対策を行っている「環境ソリューショングループ」、太陽光や風力など再生可能エネルギーに関するコンサルティングを行っているグループなどがあります。さらに、地域の保全・防災に欠かせないハザードマップや河川の防災計画を作るグループも含め「環境保全部」は安全・環境両方に携わる8つのグループで組織されています。
◇鶴間
私は中途採用で、平成20年に入社しました。それまでは、環境調査や環境アセスメント業務を請け負う会社にいました。当社に転職して、この9月で9年になります。
大学時代は環境系の学科で生物調査を専門としていましたので、就職後も専門を活かして環境調査・・・主に自然環境系の調査に携わってきました。当社では、自然環境調査をはじめ、環境アセスメント等の業務の受注から納品まで携わり、多くの実績を積んでいます。
また、環境グループのグループ長になった約3年前からは、組織のマネージメントと実際の業務両方に携わっています。
大谷さんは大学で河川の勉強をされていたのですか?
◇大谷
いえ、大学時代は人工衛星の画像を解析し、緑被率を計算する研究などを行っていました。衛星画像を扱っている関係で国際航業に入社したというわけです。建設コンサルタント部門に配属されても地理空間情報に関する部署の方と一緒に仕事をすることも多く、大学時代の勉強も十分役に立っていると感じます。
業務の内容をお聞かせください。
◇大谷
環境分野では、国や県、市町村から受託する環境調査や環境アセスメントがメインで、たとえば国土交通省の「河川水辺の国勢調査」という河川環境の基礎調査や、大気質や騒音・振動の調査を行う生活環境調査を受託しています。
また、公共事業やエネルギー関連施設についての環境アセスメントを行っています。近年では民間企業の工場などにおける環境調査や環境アセスメントへ業容を拡大しています。
その他、自然循環という観点に立ち、廃棄物処理業務、再生可能エネルギーの導入コンサルティング、土壌地下水汚染対策業務、廃棄物処理施設の計画、中間処理施設や最終処分場の計画・設計など、一連の業務を手がけています。土壌地下水汚染対策業務では、まず土壌汚染を調査し、もし汚染が発見された場合には、法律に基づいた対策を実施します。
具体的な仕事内容、事例をお聞かせください。
◇鶴間
例えば「河川水辺の国勢調査」では、河川やダムに赴いて生物の状況を調査し、その結果をとりまとめます。環境アセスメントでは、新たに何かを建設する候補地について、調査方法を検討し、調査を行い、建設した場合の影響やそれを回避・低減するための対策を検討してとりまとめます。私は学生の頃に専門としていた哺乳類を中心に調査を行っていますが、植物や昆虫類などを専門とするメンバーとチームを組んで、一緒に調査します。
最近は、生物多様性というキーワードが注目されており、「生物多様性の保全に取り組むために、企業として工場でできることを教えて欲しい」というご相談を受けることがあります。現状を調査・解析させていただいた上で、最適な保全活動をご提案するような仕事も増えています。
具体的にはどのような活動を提案されていますか?
◇鶴間
例えば何か貴重な生物や環境が見つかった場合には、それらの維持管理を提案しています。また、従業員の皆様に貴重な生物の存在を知っていただくよう、看板の設置や観察会の実施を推奨することもあります。担当部署が少人数のときには、広く従業員を巻き込んでいくような仕組みを提案しています。
このような活動は、継続が重要ですから、一回調査しただけで終わってしまわないよう、できるだけ息の長い仕組みを構築することを意識しています。
お二人の所属する「環境保全部」は防災関係のお仕事もあるとのこと。防災は直接環境に関係しませんが、環境ビジネスの中でも注目が集まってきているビジネスだと思います。
◇大谷
最近では地球温暖化をはじめとする気候変動によって、洪水などの災害リスクが高くなっており、防災関連のニーズは高いと思います。
当社は、航空測量技術で空から調査して災害のリスクを把握し、防災・減災計画の作成や防災施設の設計、維持管理など防災に関する一連の業務を行っています。
仕事、業務でのやりがいをお聞かせください。
◇大谷
さまざまな仕事を経験しましたが、一番初めに手がけた河川環境の整備計画は、自分が描いた絵がそのまま地図に残る仕事でした。子供を連れて行って「これはパパが一緒にやった仕事だよ」と見せることができる喜びがありますね。また、防災関連業務は、地域の安全・安心に貢献している点で非常にやりがいがあります。
◇鶴間
私は生き物が好きで大学で勉強し、この業界に入りました。それだけに純粋に生き物が見られる、さまざまなところに行けることも楽しみではあります。また、私たちは建設コンサルタントとして、事業者に近い立場で建設事業に携わります。環境への影響を回避・低減する提案を通して、自然を護りつつ、事業も進められるようにアレンジすることができます。1つ1つの事業で自然環境を守る取り組みを積み重ね、持続可能な未来につながっていけばと思っています。
今後どういった人物と一緒に仕事がしたいか、どんな方を求めておられますか。
◇大谷
大前提として、仕事に誇りを持って楽しめる方です。そして、さまざまな人と一緒に仕事をすることになるため、コミュニケーション力の高い方を求めています。この仕事は率先してチャレンジしていくスタンスが重要で、受け身ではないことが求められますね。
◇鶴間
大谷の言う通りです。特に、環境グループは生活環境系・自然環境系の特殊な技能や専門性を持った人が多い部門です。自分の専門に特化することも大事ですが、お客様とコミュニケーションをとるには、さまざまな視点を持つことが重要です。そして、建設コンサルタントとして、開発と環境保全との折り合いを上手につけるバランス感覚が大事です。
バランス感覚というのは仕事をしていく上で身につけていくものなのでしょうか?
◇鶴間
そうですね。関係者とのコミュニケーションを通じて経験を積むことで身についていくと思います。様々な意見を吸い上げて、自分でしっかりと考え咀嚼していくことが重要だと考えます。
環境ビジネスへ就職・転職を考えられている方へアドバイスをお願いします。
◇大谷
私は転職経験がないのですが、就職・転職先を事業規模で検討する方法もあると思います。当社は環境省や国土交通省の仕事など、国の仕事に携わることができる環境にあると思います。
御社の魅力はどのようなところでしょうか
◇大谷
当社の魅力は、建設コンサルティングと地理空間情報を担当する部署が、同じビルの中に入っており、全く違う分野の専門家と直接コミュニケーションが取れること、また海外や民間企業など幅広いチャネルを持っていますので、自分たちの技術をいろんなところに展開できるというチャンスがあることではないでしょうか。
グループ間での技術交流は盛んに行われているのでしょうか?
◇大谷
社内の連携を密にとることはもちろん、関連企業とも連携しています。例えば北陸の関連会社3社や北海道の子会社には、お互いの長所を活かした技術支援や共同作業を実施しています。
◇鶴間
私は仕事の上流側から関わりたかったために当社へ転職しました。技術者としてどこをどう伸ばしたいか、自分がどういう技術者になりたいかをぶれないで持っていれば転職はうまくいくと思います。
専門性をお持ちなら、さらに尖らせて、誰にも負けないようにすれば強力な武器になります。一方でそうではない方も多いと思いますが、バランス感覚や調整力は十分強みになります。専門性だけにこだわらず、自分が技術者として成長できるかどうかという視点で転職を考えていくことがよいのではないでしょうか。
貴重なお話をいただきありがとうございました。
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