エコリクコラム
2020.7.27
トピック
人材採用動向とグリーン・リカバリー
コロナで中途採用市場に変化
月に入り都内で一日当たりの感染者数が最多となる報道が続いています。
政府からは具体的な対策や指針は発表されず、注目の集まったGo to トラベルキャンペーンは、一般旅行客はおろか、観光業者すら制度を理解できていない見切り発車の状態でスタートし、多くの国民を困惑させました。
第1波(3~5月)の時にあった『8割の接触を減らす』という当時は曖昧とされていた行動指針も今となっては一定の効果があったのだろうと思い返されます。
今回はコロナが中途採用に与える影響について、特に環境ビジネス業界にフォーカスしていくと共に世界の環境ビジネスの動向についてまとめてみました。
ポテンシャル採用の激減
コロナの影響が拡大する以前は、転職市場は20代~30歳前半を対象とした『ポテンシャル層』の採用が大変活況でした。
これは、環境ビジネス業界においても同様で、
- 『業界経験不問』
- 『未経験者歓迎』
と謳われる求人依頼が数多く舞い込んできました。
求職者優位で求人を選択できる『売り手市場』が長く続いていたのです。
ところが、コロナの影響が全国に拡大し、4~5月は多くの企業が採用活動をいったん保留となり、6月に入ると求人状況は一変しました。
未経験・ポテンシャル層求人が激減したのです。
あらゆる職種で即戦力を希望
メーカーは生産計画の見通しが不透明なことから人員体制を見直し、一部の日用品・消費財関係を除いて採用活動を引き続き中断、縮小するケースが見受けられます。
コンサルティング業界においても、主要顧客が民間企業となるCSRコンサルにおいては採用自体は継続しつつも、
- 『業界経験者に限る』
- 『営業力・センスのある人材』
というような『経験者』『即戦力』を求める求人依頼に大きく変わりました。
官公庁の仕事が多い建設系の環境コンサルやシンクタンクでは、現状の受注状況は既に入札が行われた後のため現時点では大きな影響はないものの、下期にかけてコロナ関連に予算が割かれることで、発注件数や予算額が減少する懸念の声も聞かれます。
土壌環境分野でも大型の建設プロジェクトがコロナ影響で頓挫したことから全く動きがなく、しばらくは不透明な状況です。
環境汚染防止分野の環境計量証明事業や環境プラント(上下水・廃棄物処理)、再生可能エネルギー関連の職種に大きな変化はありません。
業界の『エッセンシャル・ワーカー』でありコロナ禍でも裏方として機能して社会を支えていく必要があり、安定感を見せています。
事態の好転を待つより好機と捉える
一方で、転職活動自体は活発です。
コロナ感染拡大を契機に自社のリスク管理、職種の安定性、在宅勤務の可否、ワークライフバランスなど様々な視点で今を振り返った結果、転職を検討する人が増えてきています。(在宅で考える時間が増えたのもありそうですね)
『買い手市場』の状況はしばらく継続する見込であり、いま活動を手控えたところであまり意味はありません。
今後は業務の自動化・効率化(AIやRPA)による人員削減も考慮しなければならないからです。
むしろコロナ禍にあって新規人材の受け入れを行う企業こそ、リスク管理に長け、いち早く事業を時代に合わせることで、持続可能な成長路線に舵を切った優良企業と見て積極的に話を聞くチャンスです。
若手・ポテンシャル層でキャリアチェンジを希望する人は、求人チャンスを逃すことなく積極的に活動すると共に、緊急時には『即戦力』として振舞えるよう能力を磨き続けることが必要です。
逆に、ミドルクラスの即戦力層においては、数ある求人の中から、優良企業を見つけ出す『選別』能力がこれまで以上に求められるでしょう。
グリーン・リカバリーによる雇用創出の可能性
世界が新型コロナウイルス感染症後の復興計画に着手するなかで、国連は各国政府に対し、この機会を活用して、より持続可能でレジリエントかつ包摂的な社会を作り上げ『より良い復興(ビルド・バック・ベター)』(※1)を遂げるよう呼びかけています。
欧州委員会は、新型コロナからの経済回復に際して、脱炭素化も同時に進めるべきとのイニシアティブ『グリーン・リカバリー』を提唱しました。
フランス、ドイツでは5月、およそ60兆円の欧州復興プログラムへの共同提案を公表し、脱炭素化に取り組む企業への国家補助金の適用緩和や、セクター別グリーンリカバリー・ロードマップの策定が盛り込まれています。
さらにイギリスでは6月、LGA(Local Government Association)が経済回復に向けて『グリーン・ジョブ』いわゆる環境関連の雇用を促進していくべきと主張(※2)しており、今後10年で70万人、2050年までには100万人以上のグリーン・ジョブが創出されると試算しています。
ここで述べられているグリーン・ジョブは発電分野などのエネルギー関連の職種が中心に挙げられています。
日本国内においては未だこのような議論はなされていませんが、『より良い復興(ビルド・バック・ベター)』を達成するためには既存の産業を『グリーン化』『強靭化』することは必要不可欠であると共に、あらゆる産業に共通する課題です。
現在、『令和2年7月豪雨』により、西日本を中心に甚大な被害が出ています。
防災事業を中心とした気候変動対策も急務となっており、ここでも環境(適応)ビジネスが注目されます。
政策の有無にかかわらず、アフターコロナのより良き世界をつくるために、気候変動対策・エネルギー分野を中心に環境ビジネスが世界中で注目度を高めていくことは想像に難くないでしょう。