サステナビリティ報告の新時代へ! GRIが「サステナビリティ・タクソノミー」をリリース〜複雑なESGデータを読み解く「共通言語」、デジタル化で透明性と比較可能性を向上〜 | グリーンジョブのエコリク

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サステナビリティ報告の新時代へ! GRIが「サステナビリティ・タクソノミー」をリリース〜複雑なESGデータを読み解く「共通言語」、デジタル化で透明性と比較可能性を向上〜|グリーンジョブのエコリク

2025.6.30

トピック

サステナビリティ報告の新時代へ! GRIが「サステナビリティ・タクソノミー」をリリース〜複雑なESGデータを読み解く「共通言語」、デジタル化で透明性と比較可能性を向上〜

企業が持続可能な社会への貢献をどのように果たしているかを示すサステナビリティ報告は、投資家や消費者、そして社会全体の注目を集めています。その国際的なガイドライン策定を担うGRI(Global Reporting Initiative)は、2025年6月19日、デジタル報告書に向けた「サステナビリティ・タクソノミー」をリリースしました。この新たなツールは、膨大で複雑になりがちなサステナビリティ情報を、より効率的かつ体系的に分析することを可能にし、企業とステークホルダー双方に大きな恩恵をもたらすと期待されています。

GRIとは

GRIは、Global Reporting Initiative(グローバル・レポーティング・イニシアティブ)の略称で、サステナビリティ報告に関する国際的な基準「GRIスタンダード」を策定・普及している非営利団体です。

  • 設立と目的: 1997年に米国で設立され、現在はオランダのアムステルダムに拠点を置いています。その主な目的は、組織が経済、環境、社会へのインパクトを透明かつ比較可能な形で報告するための共通言語を提供することです。これにより、企業の説明責任と持続可能な開発への貢献を促進することを目指しています。
  • GRIスタンダード:
    • GRIスタンダードは、サステナビリティ報告における最も広く利用されているフレームワークの一つです。企業が自社のサステナビリティパフォーマンスを測定し、開示するための具体的な指標とガイダンスを提供します。
    • このスタンダードは、企業が環境(例:温室効果ガス排出量、水使用量)、社会(例:労働慣行、人権、地域社会との関係)、ガバナンス(例:反腐敗、多様性)といった多岐にわたる側面でどのように事業を行っているかについて報告するための枠組みを定めています。
    • GRIスタンダードは、定期的に改訂され、世界の最新のサステナビリティ動向や報告ニーズに対応しています。
  • 影響力: GRIスタンダードに準拠した報告は、投資家、サプライヤー、顧客、NGOなど、多様なステークホルダーが企業のサステナビリティに関する情報を理解し、意思決定を行う上で重要な基準となっています。

タクソノミーとは

「タクソノミー(Taxonomy)」とは、もともと生物学における「分類学」を意味する言葉ですが、ビジネスや情報科学の分野では、特定の情報を体系的に分類・整理するための枠組みや体系を指します。

  • 目的:
    • 情報の構造化: 膨大な情報を論理的な階層やカテゴリに整理し、分かりやすく構造化します。
    • 検索性と比較可能性の向上: 情報にタグ付けを行うことで、必要な情報を迅速に検索できるようになり、異なるデータ間の比較が容易になります。
    • 共通言語の確立: 特定の分野において、関係者間で情報の認識を統一するための「共通言語」として機能します。
  • 具体的な活用例:
    • 財務報告: 企業が財務諸表をデジタルで提出する際に使用されるXBRLタクソノミー(例:EDINETで利用される金融庁のタクソノミー)は、会計情報を標準化し、分析を容易にします。
    • データ管理: データベースや情報システムにおいて、データを効率的に管理・検索するためにタクソノミーが利用されます。
    • コンテンツ分類: ウェブサイトや文書管理システムでコンテンツを分類し、ユーザーが求める情報にアクセスしやすくするために使われます。

サステナビリティ報告の分野においても、企業が多岐にわたるESG情報をどのように分類し、開示するかを標準化する上で、タクソノミーは極めて重要な役割を果たします。

GRIがリリースした「サステナビリティ・タクソノミー」の内容とは

GRIが今回リリースした「サステナビリティ・タクソノミー」は、企業がGRIスタンダードに基づいて作成するサステナビリティ報告書を、デジタル形式でより効率的かつ効果的に活用するためのツールです。

  • 主な目的と機能:
    • デジタル報告の標準化: GRIスタンダードに沿ったサステナビリティ情報に、XBRL(eXtensible Business Reporting Language)というデジタルタグを付与するためのルールを提供します。これにより、報告書がコンピュータで読み取り可能な形式となり、データ処理が容易になります。
    • データ利用の促進: 投資家、アナリスト、規制当局、研究者などのステークホルダーが、企業から開示されるサステナビリティデータを迅速かつ容易に収集、分析、比較できるようにします。これにより、企業間のパフォーマンス評価や、業界全体のトレンド分析が促進されます。
    • レポーティング効率の向上: 企業は、このタクソノミーを利用することで、データの収集、整理、報告のプロセスを効率化できます。手作業によるデータ入力や変換のミスを減らし、報告作業の負担を軽減することが期待されます。
    • 多様な報告要件への対応: 世界中でサステナビリティ報告に関する規制要件が増加・多様化する中、このタクソノミーは、企業が異なる報告フレームワークや規制要件に柔軟に対応するための基盤を提供します。例えば、ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)の開示基準など、他の主要な報告基準との相互運用性も視野に入れられています。
  • 具体的な内容:
    • GRIスタンダードの各開示項目(例:温室効果ガス排出量、水使用量、従業員に関するデータなど)に対応するデジタルタグが定義されています。
    • 企業は、これらのタグを自社の報告データに付与することで、情報が標準化され、他の報告書と比較可能な形になります。
    • タクソノミーは、GRIスタンダードの普遍的な開示事項だけでなく、特定のセクターに関する開示事項(例:農業、金融など)にも対応できるよう設計されており、包括的な情報開示をサポートします。
  • 期待される効果:
    • 透明性の向上: デジタル化と標準化により、企業のサステナビリティパフォーマンスがより明確になり、グリーンウォッシングの防止にも貢献します。
    • 意思決定の質の向上: 投資家やその他のステークホルダーは、より信頼性の高い比較可能なデータに基づいて、投資判断や企業評価を行うことができるようになります。
    • 持続可能な社会への貢献: 企業が自社のインパクトをより正確に把握し、改善策を講じることを促進することで、持続可能な社会の実現に貢献します。

GRIがリリースした「サステナビリティ・タクソノミー」は、サステナビリティ報告のあり方を根本から変革する可能性を秘めた、画期的なツールです。これまで複雑で比較が難しかった企業のESGデータを、デジタル化と標準化によって「共通言語」として整理することで、情報の透明性と比較可能性を劇的に向上させます。

これにより、企業はより効率的にサステナビリティ情報を開示できるようになり、投資家やその他のステークホルダーは、信頼性の高いデータに基づいて企業を評価し、より責任ある意思決定を行うことが可能になります。

このタクソノミーは、増え続けるサステナビリティ報告の要請に応えるだけでなく、企業が自社の環境・社会的なインパクトをより深く理解し、具体的な改善行動へと繋げるための強力な基盤となるでしょう。サステナブルな未来を築くためには、企業の説明責任と情報開示の進化が不可欠であり、GRIの「サステナビリティ・タクソノミー」は、その重要な一歩となることに期待が集まります。

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執筆者

神戸 修

神戸 修(こうべ おさむ)

株式会社グレイス ゼネラルマネージャー

大阪学院大学 流通科学部流通科学科卒 学生時代より、就活・キャリア支援のサークルを立ち上げ人材ビジネス会社、給食会社にて法人営業、採用、広報業務に従事 アニュアルレポート、統合報告書の作成 東日本大震災等では現地の医療関連従事者の業務サポートを手がける

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