地域まるごと「脱炭素経営」へ!環境省が示す支援体制構築の道筋 〜中小企業支援がカギ!地方創生とGXを両立する新たなガイドブック〜 | グリーンジョブのエコリク

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地域まるごと「脱炭素経営」へ!環境省が示す支援体制構築の道筋〜中小企業支援がカギ!地方創生とGXを両立する新たなガイドブック〜|グリーンジョブのエコリク

2025.6.18

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地域まるごと「脱炭素経営」へ!環境省が示す支援体制構築の道筋 〜中小企業支援がカギ!地方創生とGXを両立する新たなガイドブック〜

経済産業省が「GX(グリーントランスフォーメーション)推進法」を施行するなど、日本全体で脱炭素への動きが加速する中、企業経営においても「脱炭素経営」への転換は避けて通れない課題となっています。しかし、特に人的・資金的リソースが限られる中小企業にとって、その道のりは決して平坦ではありません。こうした状況を打破すべく、環境省は「地域ぐるみでの支援体制構築ガイドブック ~地域で脱炭素経営を推進する意義~」を公表しました。本ガイドブックは、地域全体で中小企業の脱炭素経営を後押しするための実践的な手引きとなるものです。

ガイドブックのターゲットと意義

本ガイドブックがターゲットとするのは、主に以下のような「地域ぐるみでの脱炭素経営支援」を担う主体です。

  • 地方公共団体(都道府県・市町村):地域政策の立案者、推進者として、支援体制の司令塔となる役割。
  • 金融機関:脱炭素投資への融資や情報提供など、資金面からの支援を担う。
  • 商工会議所、商工会、中小企業団体中央会などの中小企業支援機関:中小企業に寄り添い、具体的な支援メニューを提供する。
  • 地域企業:脱炭素経営に取り組む中小企業、およびその取り組みを支援する大企業や専門企業。
  • 金融その他、地域で脱炭素に関わる団体・専門家:コンサルタント、研究機関など。

本ガイドブックの最大の意義は、中小企業が脱炭素経営に取り組むことの重要性を明確にし、それが地域経済の活性化や持続可能性向上に直結することを具体的に示す点にあります。脱炭素経営は、単なる環境対策ではなく、企業価値向上、新たなビジネス機会創出、サプライチェーン強靭化、そしてひいては地域経済の発展に繋がる「攻めの経営」である、というメッセージが込められています。

各章の説明:地域支援体制構築へのロードマップ

ガイドブックは、地域での支援体制構築に向けた具体的なステップを、以下の章立てで解説しています。

第1章:なぜ地域で脱炭素経営を推進するのか

この章では、脱炭素経営が中小企業にもたらす具体的なメリットを詳述しています。例えば、大手企業からのサプライチェーン脱炭素化要請への対応、エネルギーコスト削減、新たな事業機会の創出、企業イメージ向上による人材確保、金融機関からの評価向上などが挙げられます。また、地域全体で取り組むことで、個社の努力にとどまらず、地域全体のブランド力向上や、新たな産業クラスター形成への可能性も示されています。気候変動による災害リスクの高まりといった喫緊の課題への対応としても、脱炭素経営の重要性を説いています。

第2章:脱炭素経営を進めるためのステップ

中小企業が脱炭素経営に着手する際の具体的なステップを、初心者にも分かりやすく解説しています。具体的には、以下の4項目になります。

  1. 現状把握:自社のCO2排出量算定(スコープ1, 2, 3など)、エネルギー使用量の把握。
  2. 目標設定:削減目標の設定(SBTs、RE100などを参考に)。
  3. 対策の検討・実施:省エネ設備の導入、再生可能エネルギーへの切り替え、業務プロセスの改善など。
  4. 効果の検証と情報開示:削減効果のモニタリングと、対外的な情報開示。 といった段階を踏むことの重要性を説き、各ステップで利用できるツールや相談窓口の例を提示しています。

第3章:地域での支援体制構築の進め方

本ガイドブックの核心となる章です。地方公共団体や支援機関が、どのように連携し、中小企業の脱炭素経営をサポートする体制を築くべきかを具体的に示しています。

  • 情報提供・意識啓発:セミナー開催、ウェブサイトでの情報発信、専門家派遣。
  • 資金支援:補助金・助成金の活用、金融機関との連携による優遇融資。
  • 専門家派遣・相談窓口設置:CO2排出量算定支援、省エネ診断、再エネ導入コンサルティング。
  • マッチング・ネットワーク構築:脱炭素技術を持つ企業と、導入を検討する企業のマッチング、地域内での優良事例共有。
  • サプライチェーン連携:地域の大手企業と中小企業間の脱炭素連携促進。 などが盛り込まれており、地域の実情に応じた柔軟な体制構築の重要性が強調されています。

第4章:地域における好事例集

実際に地域ぐるみで脱炭素経営支援に取り組んでいる地方公共団体や支援機関の好事例が紹介されています。具体的な取り組み内容、成果、そして成功要因や課題解決のヒントが提供されており、他の地域の担当者にとって、実践的な学びの機会となるでしょう。これにより、各地域が自らの強みを活かした独自の支援モデルを構築する際の参考とすることが期待されます。

現状と課題

本ガイドブックが提示する方向性は非常に有効ですが、実現にはいくつかの課題も存在します。

現状:

  • 中小企業の認識格差: 大手企業に比べて、中小企業経営者層の脱炭素経営への意識や危機感には、依然として大きな地域差・業種差があります。
  • 支援機関のノウハウ不足: 脱炭素に関する専門知識を持つ地域の中小企業支援機関はまだ少なく、担い手不足が深刻です。
  • 資金調達の障壁: 中小企業にとって、脱炭素投資は初期費用が大きく、資金調達が困難なケースが多く見られます。
  • 地域間連携の不足: 個別の地方公共団体や支援機関が単独で取り組む傾向があり、広域的な連携による支援体制構築が不十分です。

課題:

  • 「自分ごと化」の推進: 中小企業経営者が、脱炭素経営を単なるコストではなく、自社の成長戦略として「自分ごと」として捉えられるような、具体的なメリット提示と成功事例の普及が急務です。
  • 支援人材の育成: 脱炭素経営をサポートできる専門家やコンサルタントの育成、および既存の支援機関職員へのリスキリング(再教育)を加速させる必要があります。
  • 金融機関との連携強化: 脱炭素投資に対するインセンティブ融資や保証制度の拡充など、金融機関と連携した資金面での支援策をさらに強化する必要があります。
  • デジタル技術の活用: CO2排出量算定ツールの提供や、情報共有プラットフォームの構築など、デジタル技術を活用した効率的な支援体制の構築が求められます。
  • 成功事例の横展開と情報共有: 各地域で生まれた好事例を積極的に共有し、成功ノウハウを全国に横展開する仕組みを強化することが重要です。

環境省の「地域ぐるみでの支援体制構築ガイドブック」は、中小企業が脱炭素経営に本格的に取り組むための、実践的かつ重要な羅針盤となります。地域全体で脱炭素経営を推進することは、地球温暖化対策に貢献するだけでなく、地域経済の活性化、新たな雇用創出、そして持続可能な社会の実現に繋がる「地域GX」の中核をなすものです。

このガイドブックが示すロードマップを参考に、地方公共団体、金融機関、中小企業支援機関、そして地域企業がそれぞれの役割を果たし、連携を強化することで、日本全体での脱炭素化の動きをさらに加速させることが期待されます。地域における脱炭素経営が、「やらされ仕事」ではなく、「未来を創る投資」として認識され、多くの企業が前向きに取り組む環境が整っていくことを願います。

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執筆者

神戸 修

神戸 修(こうべ おさむ)

株式会社グレイス ゼネラルマネージャー

大阪学院大学 流通科学部流通科学科卒 学生時代より、就活・キャリア支援のサークルを立ち上げ人材ビジネス会社、給食会社にて法人営業、採用、広報業務に従事 アニュアルレポート、統合報告書の作成 東日本大震災等では現地の医療関連従事者の業務サポートを手がける

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