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2025.6.12

トピック

国交省、建築物LCA算定の義務化へ動く!2028年度導入で環境負荷低減と国際標準化を推進

国土交通省は、建設分野における脱炭素化を加速させるため、新たに建てる建築物の「LCA(ライフサイクルアセスメント)」算定制度を2028年度から導入する方針を固めました。これは、建築物の一生を通じて排出されるCO2などの環境負荷を可視化し、より環境に配慮した建築を促す画期的な取り組みです。

LCA(ライフサイクルアセスメント)とは

LCA(ライフサイクルアセスメント)とは、製品やサービスの「ゆりかごから墓場まで」、つまり原材料の調達から製造、使用、廃棄、リサイクルに至るまでの全ライフサイクル段階において、それが環境に与える影響を定量的に評価する手法です。これにより、どの段階で最も環境負荷が大きいかを特定し、改善策を検討することが可能になります。

建築物LCAとは

建築物LCAは、このLCAの考え方を建築物に適用したものです。具体的には、建築物のライフサイクル全体、すなわち「原材料の調達」から「建設」、「運用(使用中のエネルギー消費だけでなくメンテナンス費用なども含む)」、そして「解体・廃棄物処理」までの各段階で発生する環境負荷(主に二酸化炭素排出量)を算定し、評価します。

建築物LCAにおいて特に注目されるのが、以下の2つの概念です。

  • アップフロントカーボン(Upfront Carbon) アップフロントカーボンとは、建築物や製品のライフサイクルにおける「製造」および「建設」の初期段階で発生するCO2排出量のことを指します。主に建材の製造・運搬、そして施工段階で排出される環境負荷を示し、建築物のライフサイクル全体を通じた環境負荷を最小限に抑えるためには、この初期段階での炭素排出量削減が重要視されています。
  • エンボディドカーボン(Embodied Carbon) エンボディドカーボンとは、建設セクターが排出するCO2のうち、建物を建てる際に排出されるCO2排出量のことを指します。アップフロントカーボンと同様に、建材の製造、輸送、建設プロセスにおける炭素排出量を含みます。
出所)国土交通省「建築物におけるLCAの推進について」(※1

対象になる建築物は

国土交通省は、2028年度からの建築物LCA制度の導入を目指しており、その具体的な「対象となる建築物」の範囲は、今後制度の検討を進める中で決定されていく見込みです。現在、有識者による「建築物のライフサイクルカーボン算定・評価等を促進する制度に関する検討会(建築物LCA制度検討会)」が設置され、制度の詳細について本格的な検討が進められています。

現状と課題について

建築物LCAの義務化は、建設分野の脱炭素化を大きく推進する可能性を秘めていますが、同時にいくつかの課題も存在します。

  • 算定手法の確立と統一性: 建築物のライフサイクルは複雑であり、多岐にわたるデータが必要となります。正確かつ統一された算定手法の確立が不可欠です。
  • データ基盤の整備: 算定に必要な建材ごとの環境負荷データや、建設・運用・解体段階のデータなど、網羅的かつ信頼性の高いデータ基盤の整備が急務となります。
  • 中小企業への対応: 大手企業に比べてLCA算定のための専門知識やリソースが不足している中小建設業者への支援策も検討が必要です。
  • 国際標準化への対応: 日本がLCA算定を義務化することで、国際的な環境評価基準との整合性を図り、国際標準化をリードしていくことも重要な目標とされています。異なる国や地域でLCAの算定基準が異なると、国際的な比較や連携が難しくなるため、国際的な協力が求められます。

国土交通省による建築物LCA算定の義務化は、日本の建設業界が持続可能な社会の実現に向けて大きく舵を切ることを意味します。この制度により、建築物の環境性能が客観的に評価され、低炭素な建材の選択や省エネルギーな設計・運用がより一層推進されることが期待されます。

2028年度の制度開始に向けて、算定手法の確立、データ基盤の整備、そして国際標準化への貢献といった課題を着実にクリアしていくことが、今後の建設分野の脱炭素化の鍵となるでしょう。

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執筆者

神戸 修

神戸 修(こうべ おさむ)

株式会社グレイス ゼネラルマネージャー

大阪学院大学 流通科学部流通科学科卒 学生時代より、就活・キャリア支援のサークルを立ち上げ人材ビジネス会社、給食会社にて法人営業、採用、広報業務に従事 アニュアルレポート、統合報告書の作成 東日本大震災等では現地の医療関連従事者の業務サポートを手がける

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