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建設業界に革命!CO2を7割削減、施工時間も半減する次世代コンクリート「ハイプロダクリート」が誕生|グリーンジョブのエコリク コラム

2025.6.5

トピック

建設業界に革命!CO2を7割削減、施工時間も半減する次世代コンクリート「ハイプロダクリート」が誕生

東急建設株式会社(本社:東京都渋谷区、社長:寺田光宏)と東京理科大学(東京都新宿区、学長:石川正俊)は、建設業界の未来を大きく変える可能性を秘めた新技術を共同開発しました。その名も、CO2排出量を最大で73%削減し、さらに施工時間を58%も短縮できる画期的なコンクリート「ハイプロダクリート(High-producrete)」(商標登録出願中)です。

この「ハイプロダクリート」は、環境負荷の低減と建設現場の生産性向上という、現代社会が抱える二つの大きな課題を同時に解決する、まさに「夢のコンクリート」と言えるでしょう。

コンクリートとは

私たちの身の回りにある建物や道路、橋などの社会インフラの多くに欠かせない材料が「コンクリート」です。コンクリートは、主にセメント、水、砂、砂利を混ぜ合わせて作られ、時間とともに固まって非常に高い強度を発揮します。

その耐久性や強度、そして加工のしやすさから、古くから現代に至るまで、建設分野で最も広く使われている材料の一つです。しかし、その主原料であるセメントの製造過程で、大量のCO2が排出されることが、環境問題への大きな課題となっていました。

ハイプロダクリートとは

「ハイプロダクリート」は、このコンクリートが抱える環境課題と施工効率の課題を同時に解決するために開発された、次世代のコンクリートです。

最大の特徴は、一般的なコンクリートの主原料である「ポルトランドセメント」の一部、または大部分を、「混和材」と呼ばれる別の材料に置き換えている点です。今回開発された「ハイプロダクリート」は、特に新設の土木構造物向けに、高炉スラグ微粉末という混和材を多く使用することで、従来のコンクリートと同等以上の強度を保ちつつ、高い流動性を実現しています。

この流動性の高さが、施工時間の短縮にも大きく貢献しています。実大施工実験では、CO2排出量を最大で73%削減するとともに、施工時間を58%も短縮できることが確認されました。さらに、出来上がった壁は、初期欠陥が少なく、表面気泡や色むらも少ない、非常に良好な仕上がりを見せたといいます。

開発の経緯

近年、地球温暖化対策としてCO2排出量の削減が世界的な急務となっています。建設業界も例外ではなく、コンクリート製造におけるCO2排出量の多さが課題として認識されていました。

特に、コンクリートの主成分であるセメントの製造過程で発生するCO2は、全体の排出量に大きく影響します。そのため、セメントの使用量を減らし、その代わりにCO2排出量の少ない材料や、産業廃棄物などを有効活用できる混和材を用いる研究が活発に進められていました。

また、建設現場においては、少子高齢化による人手不足が深刻化しており、いかに効率よく、少ない人数で施工を進めるかという「省力化」も喫緊の課題でした。東急建設と東京理科大学は、これらの課題を同時に解決する技術として、「CO2排出量削減」と「施工の省力化」の両立を目指し、今回の「ハイプロダクリート」の開発に至りました。

開発コンセプト

「ハイプロダクリート」の開発コンセプトは、まさにその名称が示す通り、「High-production(高い生産性)」「High-product quality(高い製品品質)」を両立させることです。

このコンセプトを実現するために、主に以下の点が重視されました。

  • セメント使用量の極小化: 主たるCO2排出源であるポルトランドセメントの使用量を大幅に削減することで、環境負荷を低減します。
  • 混和材の最適化: 高炉スラグ微粉末などの混和材を適切に組み合わせることで、強度や耐久性を維持しつつ、セメントの使用量を減らします。
  • 流動性の向上: 現場での打設作業を容易にし、緻密な充填を可能にすることで、施工時間を短縮し、高品質な構造物を実現します。

これらのアプローチにより、環境性能と施工性能の両面で優れた次世代コンクリートの開発に成功しました。

コンクリート、モルタル、セメントの違いとは

ここで、コンクリートを取り巻く基本的な材料について、改めて確認しておきましょう。

  • セメント: 水を加えて練ると固まる、粉末状の材料です。コンクリートやモルタルの「接着剤」の役割を果たします。主に石灰石を焼成して作られます。
  • モルタル: セメントと水に「砂」を加えたものです。コンクリートよりも骨材が細かいため、滑らかな表面を作ることができ、レンガの目地や壁の仕上げなどに使われます。
  • コンクリート: セメント、水、砂に「砂利(粗骨材)」を加えたものです。砂利が入ることで強度が増し、建物や道路など、大きな構造物の建設に使われます。

このように、セメントがコンクリートの主原料であるため、セメントの製造過程で排出されるCO2の削減は、建設分野全体の低炭素化において非常に重要な課題です。

「ハイプロダクリート」は、このセメントの置き換えという、まさに本質的なアプローチで課題に挑んでいます。現在、コンクリート業界では、より環境に優しいセメントの開発や、今回のハイプロダクリートのようにセメントの使用量を減らす技術、さらには建設廃棄物をリサイクルして骨材として再利用する取り組みなども進められています。

東急建設と東京理科大学が開発した「ハイプロダクリート」は、環境負荷の低減と建設現場の効率化という、現代社会が求める二つの大きなニーズに応える画期的な技術です。

CO2排出量を大幅に削減し、施工時間も短縮できるこのコンクリートは、建設業界のサステナビリティ向上と生産性向上に大きく貢献することが期待されます。東急建設は今年度中にこの「ハイプロダクリート」を現場に適用する予定です。

この技術が広まることで、私たちの住む街がより環境に優しく、そして効率的に作られるようになる未来が、そう遠くないかもしれません。

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執筆者

神戸 修

神戸 修(こうべ おさむ)

株式会社グレイス ゼネラルマネージャー

大阪学院大学 流通科学部流通科学科卒 学生時代より、就活・キャリア支援のサークルを立ち上げ人材ビジネス会社、給食会社にて法人営業、採用、広報業務に従事 アニュアルレポート、統合報告書の作成 東日本大震災等では現地の医療関連従事者の業務サポートを手がける

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