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世界の水素エネルギーの取り組みと 気候変動サミット

2021.5.27

トピック

世界の水素エネルギーの取り組みと 気候変動サミット

日本政府は昨年12月に、国内の水素利用量について、2030年時点で1,000万トンまで規模を拡大する方針を発表し、水素エネルギーの活用に向け動きを強化しています。これまでの取り組みの一つとして、2016年に電源開発や川崎重工等が集まった企業団体が「技術研究組合CO2フリー水素サプライチェーン推進機構(HySTRA)」を設立し、オーストラリアで使われていない褐炭から水素を製造、液化して日本に輸送するプロジェクトが進められ今年中の実用化に向けて進行しています。(※1※2

ただし、褐炭から水素を製造する過程でCO2を排出しており、真に「CO2フリー」と呼べるのか、疑問が残ります。そんな中で世界的に注目されているのは、製造から利活用まで環境に配慮したグリーン水素です。ここでは各国の取り組みについて、4月22日・23日に開催された気候変動サミットの内容にも触れながらまとめていきます。

これまでの欧州での取り組みやニュース

【ドイツ】

2020年6月に国家水素戦略が発表され、再生可能エネルギー由来の電力のみを利用し生産されるグリーン水素の利用に重点を置くこととしている。中でも、輸送・交通領域における水素エネルギーの利用に焦点を当てており、ドイツ水素協議会では、ここに貢献する企業・研究所へ総額90憶ユーロ(約1.1兆円)の投資を実施することを発表した。(※3※4

【フランス】

産業、エネルギー、EVの領域でグリーン水素の活用を普及させるべく技術革新を目指している。そのために2030年までに6.5GWの新エネルギーの製造基盤を作ることを目標に、水素をはじめとした環境配慮型技術の開発に70億ユーロ(約9000億円)を投資するとのこと。(※3※5

【スペイン】

2020年10月にクリーン水素戦略が決定。国内の電力大手のイベルドローラは、グリーン水素開発の新事業部門を設立し、ヨーロッパ最大の産業用グリーン水素の工場が2021年中に完成予定と発表。ここには水素の生産設備と出力100MWの太陽光発電施設を併設し再エネを用いた水素製造を実施、また700人近くの新規雇用を見込んでいる。(※3※6

世界が注目する気候変動サミット 水素への言及はあったか?(※7

バイデン政権となったアメリカが、パリ協定復帰を宣言し、当初述べていた通りに4月22日、23日気候変動サミットを開催しました。各国のエネルギー政策、2030年・2050年に向けた脱炭素化への目標や計画が発表され、アメリカでは23兆ドル(約2484兆円)の経済効果、新規の雇用創出にもつながるといわれています。

そのためには新しい技術開発が急務とされ、国際エネルギー機関(IEA)の調査によると、ここに課題があるとされています。2050年のCO2排出削減目標達成に向けて、再エネや水素利活用といった現行の技術開発・改善では到達できず、未開拓の領域・分野における技術開発が求められています。

Leaders Summit on Climate IEA発表より作成
Leaders Summit on Climate IEA発表より作成

今回のサミットにおいて、日本をはじめ、一部の国・地域では水素エネルギーについて言及しています。例えばデンマークでは、風力発電の次に注目するエネルギー源として、水素を挙げており、電力利用だけでなく燃料として船舶や飛行機等の交通・輸送分野での活用に向けて技術開発を進めていく方針を打ち出しています。しかしながら水素の利活用だけが重視されているわけではなく、各国が協働して、あらゆる再エネ技術を複合的に活用する必要性を訴えています。アメリカとノルウェー、カナダ、カタール、サウジアラビアはネット-ゼロ開発フォーラム立ち上げを発表しました。また、イギリスが中心となっている「THE GLOBAL POWER SYSTEM TRANSFORMATION CONSORTIUM」(グローバル電力システム変革コンソーシアム)にアメリカが参加を表明し、蓄電システムやスマートグリッド等の電力システムを一般化し普及することで脱炭素社会に向けて動き出しています。(※8

サミットの中でビル・ゲイツ氏は、技術を占有するのではなく、各国で共有することで、さらなる技術革新を生み出すことを訴えており、水素社会をはじめ、脱炭素社会の実現に向けて、世界で同じ方向を向いて行動していかなければなりません。国内においても実用性があり、サステナビリティに対応した技術を開発していく為には、一般企業・研究機関だけでなく、官民連携事業の推進や、気候変動に高い関心をもつ投資家の参入などにより経済基盤を確立し、新事業における雇用創出、国際協力を進めていくことが求められています。

執筆者

株式会社グレイス

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