エコリクコラム

2025.5.2
トピック
ISSBがIFRS S2改訂案を2025年4月28日に公表
国際的なサステナビリティ開示基準の策定を担うISSBが、気候変動関連の情報開示基準であるIFRS S2について、企業が適用しやすいようにするための改訂案を2025年4月28日に公表しました。多くの企業は、この改訂案の内容をもとに、今後の情報開示に備える必要があります。
この改訂案は、企業がより有用で比較可能な気候変動関連情報を投資家に提供できるようにすることを目的としています。ISSBは、この改訂案について、利害関係者からの意見を2025年6月27日まで募集し、それらを検討した上で、最終的な基準を公表する予定です。
ISSBによるIFRS S2の改訂案公表は、企業の気候変動情報開示の実務的な課題に対応し、より質の高い情報開示を促進するための重要な動きです。企業は、この改訂案の内容をもとに、意見募集期間中に意見を提出し、今後の基準の最終化に備えることが求められています。
ISSBとは
- 設立: IFRS財団によって2021年11月に設立
- 目的: 投資家の意思決定に役立つ、グローバルなサステナビリティ開示基準を開発
- 基準: IFRSサステナビリティ開示基準(IFRS S1、IFRS S2など)
気候関連のガバナンス開示と課題とは
IFRS S2では、企業に対して、気候関連のリスクと機会に関するガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標についての開示を求めています。
- ガバナンス開示の重要性:
企業の気候変動への取り組み体制や責任体制を示すことは、投資家にとって重要 - 課題:
開示要求事項の解釈や適用に関する疑問
企業が実務上、開示情報を収集・報告する際の困難さ
IFRS S2「気候関連開示」に関する改訂案の詳細
ISSBは、企業がIFRS S2を適用する際の課題を軽減し、より質の高い情報開示を促進するために、以下の主要な分野で改訂案を提示しています。
気候関連のリスクと機会のガバナンス
- 開示要求事項の明確化:
気候関連のリスクと機会を評価し、管理する上での取締役会および経営陣の役割に関する要求事項をより明確に記述。
企業内の責任体制をより適切に反映した開示を促進。 - 最高意思決定機関による監督に関する追加ガイダンス:
最高意思決定機関(取締役会)が、気候関連のリスクと機会をどのように監督しているかについて、具体的なガイダンスを提供。
監督プロセスにおける重要な要素(例:戦略的意思決定への統合、資源配分への影響)を解説。
排出量開示
- GHGプロトコルとの整合性の明確化:
IFRS S2とGHGプロトコルとの関係性を明確化し、両基準の整合性を確保。
企業がGHGプロトコルを用いて算定した排出量を、IFRS S2に基づいて報告する際のガイダンスを提供。 - スコープ3排出量の開示に関するガイダンスの強化: :
スコープ3排出量の算定と報告に関するガイダンスを強化し、企業がより正確かつ比較可能な情報を提供できるようにする。
スコープ3排出量の算定における課題や、開示する上での重要な考慮事項を解説。 - 特定の排出量カテゴリに関する開示の緩和: :
特定のスコープ3排出量カテゴリについて、開示の義務付けを緩和する提案。
企業が、重要性の低いカテゴリや、算定が著しく困難なカテゴリについて、開示の負担を軽減できるようにする。
移行計画
- 移行計画の定義の明確化: :
移行計画の定義を明確化し、企業が気候変動への対応をどのように計画しているかをより適切に開示できるようにする。
移行計画に含めるべき要素や、開示する上での重要な考慮事項を解説。 - 移行計画の進捗状況の開示に関するガイダンスの追加::
企業が移行計画の進捗状況をどのように開示するかについて、追加のガイダンスを提供。
移行計画の目標達成に向けた進捗状況、目標達成を阻害する要因、計画の変更などを開示する際のガイダンス。
レジリエンス
- シナリオ分析に関するガイダンスの明確化: :
気候変動のレジリエンス評価におけるシナリオ分析の適用に関するガイダンスを明確化。
企業が、様々な気候変動シナリオ下での事業のレジリエンスをどのように評価し、開示するかを解説。 - 気候変動のレジリエンス評価における不確実性の考慮::
気候変動のレジリエンス評価における不確実性の考慮に関するガイダンスを追加。
企業が、シナリオ分析における不確実性をどのように考慮し、開示するかを解説。