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2025.5.16

トピック

マイクロプラスチック削減に向けたグッド・プラクティス集とは

2025年4月10日、環境省は「マイクロプラスチック削減に向けたグッド・プラクティス集の取りまとめについて」を公表しました。この冊子は、企業がマイクロプラスチックの排出削減に向けた取り組みを行う際に役立つ情報を提供しています。

マイクロプラスチックとは

マイクロプラスチックとは、5mm以下のプラスチック片のことです。マイクロプラスチックは、海洋環境に深刻な影響を与えています。例えば、海洋生物がマイクロプラスチックを誤って食べてしまうことで、生態系に悪影響を及ぼす可能性があります。

背景・概要について

環境省では、2019年に「海洋プラスチックごみ対策行動計画」を策定しました。この計画では、マイクロプラスチックの排出削減に向けた取り組みを推進しています。

「マイクロプラスチック削減に向けたグッド・プラクティス集」は、この計画に基づいて作成されたものです。この冊子には、マイクロプラスチックの排出削減に向けたさまざまな取り組みが紹介されています。

掲載事例について

「マイクロプラスチック削減に向けたグッド・プラクティス集」には、以下の事例が掲載されています。

1. 発生抑制

  • Less Micro Plasticプロジェクト(伊藤忠ファッションシステム株式会社): 繊維製品からのマイクロプラスチック流出抑制を目指し、排出量50%削減を目標とした生地・製品をLMP認証商品として展開。
  • マイクロプラスチックファイバー排出抑制生地・製品の開発【Less Micro Plastic(LMP)認証取得】(タキヒヨー株式会社): LMP認証を取得した繊維くずの少ない生地や製品を開発。
  • 繊維くずを抑制する機能性衣料用テキスタイル(帝人フロンティア株式会社): 繊維の構造を工夫し、洗濯時のマイクロプラスチックの脱落を抑制するテキスタイルを開発。

2. 流出抑制

  • 繊維くず測定方法の国際標準化とデータ蓄積(日本化学繊維協会): マイクロプラスチック流出量の測定方法を標準化し、データ収集と活用を推進。
  • ヒュームセプターMP2フィルター(マンホールタイプ) / 集水桝用MP2フィルター(集水桝タイプ)(株式会社イトーヨーギョー): 下水道や雨水排水路のマンホールや集水桝に設置し、マイクロプラスチックの流出を抑制するフィルターを開発。
  • スポーツ施設マイクロプラスチック流出抑制システム(ミズノ株式会社): 人工芝グラウンドなどからのマイクロプラスチック流出を防ぐシステムを開発。

3. 代替

  • 天然素材充填材を用いた人工芝システム(住友ゴム工業株式会社): 人工芝の充填材に天然素材を使用し、マイクロプラスチックの発生を抑制。
  • 天然由来シリカビーズによる、マイクロプラスチックビーズの代替(AGC株式会社): 化粧品などに使用されるマイクロプラスチックビーズを天然由来のシリカビーズで代替。
  • 海水中でも生分解性を有するカネカ生分解性バイオポリマー Green Planet®の開発(株式会社カネカ): 海洋環境中で分解される生分解性ポリマーを開発し、プラスチック代替として利用。
  • 生分解性樹脂を用いたヒートシール紙の開発(日本製紙株式会社): 包装材などに使用されるプラスチックを、生分解性樹脂を用いた紙で代替。
  • セルロースによるマイクロプラスチックビーズの代替(レンゴー株式会社): 化粧品や工業用途のマイクロプラスチックビーズをセルロースで代替。
  • 海洋生分解性プラスチックを使用した製品開発(三菱ケミカル株式会社): 海洋環境で分解されるプラスチック素材を用いた製品を開発。
  • 海洋生分解する真球状ポリアミド4微粒子を開発(東レ株式会社): 海洋環境で分解されるポリアミド4の微粒子を開発し、マイクロプラスチック代替として利用。

4. 回収

  • 環境水試料からマイクロプラスチックを回収する自動前処理装置(株式会社島津製作所): 環境水中のマイクロプラスチックを効率的に自動で回収・分析する装置を開発。
  • 水面ドローンJELLYFISHBOTによるマイクロプラスチックの自動回収(株式会社平泉洋行): 水面に浮遊するマイクロプラスチックを自律的に回収するドローンを開発。
  • 濾過装置を具備するバラスト水処理装置を使用したマイクロプラスチックの回収(JFEエンジニアリング株式会社): 船舶のバラスト水処理装置にマイクロプラスチック回収機能を追加。
  • サイクロンセパレータを活用した効率的なマイクロプラスチック回収装置(三浦工業株式会社): 排水処理施設などにおけるマイクロプラスチック回収装置を開発。
  • 船外機のマイクロプラスチック回収装置(スズキ株式会社): 船外機にマイクロプラスチックを回収する機能を搭載。

5. 普及啓発

  • 樹脂ペレット等の流出抑制活動(日本プラスチック工業連盟): プラスチック成形工場などからの樹脂ペレット流出防止に向けたガイドライン策定や啓発活動を実施。

これらの事例は、各企業がそれぞれの事業特性や技術を生かし、マイクロプラスチック問題の解決に貢献しようとする意欲的な取り組みを示しています。このグッド・プラクティス集が、他の企業によるマイクロプラスチック削減に向けた取り組みを推進する一助となることが期待されます。

その他の動き

  • 2025年の合意を目指したプラスチック汚染対策条約の動き
    • 2025年までに、プラスチック汚染対策に関する国際条約の締結を目指しています。
  • WWFジャパンは、2025年2月に、報告書『日本におけるゴーストギア対策の現在地―漁業系プラスチックごみの解決に向けて―』を発行した。
    • この報告書では、日本の海洋プラスチックごみ問題の現状と対策について詳しく解説しています。

マイクロプラスチックは、海洋環境に深刻な影響を与えています。マイクロプラスチックの排出削減に向けて、企業が取り組むことが重要です。

「マイクロプラスチック削減に向けたグッド・プラクティス集」は、企業がマイクロプラスチックの排出削減に向けた取り組みを行う際に役立つ情報を提供しています。

マイクロプラスチックには、レジンペレット等の最初から小さなサイズのものや、大きなプラスチックが使用中の摩耗等により劣化、微細化したものがありますが、いずれも海洋等の環境中に流出してしまうと回収が難しいため、発生抑制、流出防止、代替素材の普及等に取り組むことが重要です。一方、マイクロプラスチックによる汚染削減に向けた技術の活用や開発が世界的にも期待されています。こうした中、日本企業等が有する既存の技術やノウハウを、マイクロプラスチック対策の観点から再評価するとともに、現時点で利用可能な最良の事例として、国内外に普及していくことが重要です。

環境省では、マイクロプラスチックの発生抑制、流出抑制、代替、回収等に資する日本企業等の最新の取組や技術を、グッド・プラクティス集として本年度も取りまとめ発表しています。

この本資料が、国内における取組を後押しするとともに、国際的なマイクロプラスチック対策の推進の一助となることを期待しています。

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執筆者

神戸 修

神戸 修(こうべ おさむ)

株式会社グレイス ゼネラルマネージャー

大阪学院大学 流通科学部流通科学科卒 学生時代より、就活・キャリア支援のサークルを立ち上げ人材ビジネス会社、給食会社にて法人営業、採用、広報業務に従事 アニュアルレポート、統合報告書の作成 東日本大震災等では現地の医療関連従事者の業務サポートを手がける

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