エコリクコラム

2025.4.22
トピック
持続可能なスポーツ2030 – 環境とスポーツの調和を目指す新たな指針
2025年3月20日、ドイツ連邦環境・自然保護・原子力安全・消費者保護省(BMUV)は、環境スポーツ委員会が策定した「持続可能なスポーツ2030」の改訂版を公表しました。「持続可能なスポーツ2030」の改訂版のポジションペーパーは、スポーツ界における環境への配慮と持続可能性の推進を目的としています。
ドイツ連邦環境・自然保護・原子力安全・消費者保護省(BMUV)とは
BMUVは、ドイツの環境保護、自然保護、原子力安全、消費者保護を担う政府機関です。環境スポーツ委員会は、BMUVの傘下組織であり、スポーツと環境の両面から持続可能な社会の構築を目指しています。
ポジションペーパー「持続可能なスポーツ2030」の内容について
「持続可能なスポーツ2030」は、スポーツ界における環境への影響を最小限に抑え、持続可能な未来を創造するための指針です。このペーパーでは、スポーツ組織、競技団体、アスリート、ファンなど、スポーツに関わるすべてのステークホルダーに対して、具体的な行動目標と方策を示しています。
ドイツ連邦環境・自然保護・原子力安全・消費者保護省(BMUV)の諮問機関である「環境とスポーツ」委員会は、ポジションペーパー「持続可能なスポーツ2030」を改訂しました。
主な更新点:
- 持続可能性の理解を明確化: ペーパー冒頭に持続可能性に関する定義を新設。
- 都市空間におけるスポーツ: 都市空間の定義を明確化し、デジタル化と活動誘導に関する最新動向を追加。
- 関連戦略の更新: 国家生物多様性戦略やEU復興規則など、スポーツに関連する政策を反映。
- 大規模スポーツイベント: BMUVと内務省支援のポータルサイト開設に伴い、全面的に改訂。
- 「持続可能な開発のための教育(BNE)」を新設: スポーツを通じた環境教育の重要性を強調。
- デジタル化の活用: スポーツにおける持続可能な開発の鍵として、環境負荷軽減や自然保護に役立つデジタル技術の活用を推進。
目的:
スポーツ界全体(組織、団体、選手、ファン)に対し、環境への影響を最小限に抑え、持続可能な未来を創造するための具体的な行動目標と方策を示す。
期待される効果:
- 自然スポーツにおける環境負荷と社会的な対立の軽減(デジタルな活動誘導による)。
- スポーツ参加者の環境意識の向上と行動変容。
- 持続可能なスポーツイベントの推進。
- スポーツを通じた環境教育の促進。
スポーツが環境問題にもたらす影響とは
スポーツ活動は、エネルギー消費、水資源の利用、廃棄物の発生など、環境に様々な影響を与えます。また、スポーツ施設の建設や運営、観客の移動など、間接的な環境負荷も発生します。
イベントにおける持続可能性とは
スポーツイベントは、多くの観客を動員し、環境への影響が大きい場合もあります。しかし、適切な対策を講じることで、環境負荷を軽減し、持続可能なイベントを実現することができます。
イベントが環境に与える影響とは?
- エネルギー消費: 照明、空調、交通など、イベント運営には大量のエネルギーが必要です。
- 水資源の利用: 選手や観客の飲料水、トイレの洗浄など、大量の水資源が消費されます。
- 廃棄物の発生: チケット、プログラム、包装材など、大量の廃棄物が発生します。
- 交通渋滞: イベント会場へのアクセスや駐車場の混雑により、交通渋滞が発生します。
国内イベントにおけるCO2排出量削減の取り組み事例
- 再生可能エネルギーの利用: 太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを積極的に活用することで、CO2排出量の削減に貢献できます。
- 省エネ対策の推進: LED照明の導入、省エネ型の空調システムの採用など、エネルギー効率の向上を図ることができます。
- 廃棄物の削減: リサイクル可能な素材の使用、ゴミの分別回収の徹底など、廃棄物の発生を抑制することができます。
- 交通手段の多様化: 公共交通機関の利用促進、自転車や徒歩での来場を促すなど、交通渋滞の緩和に努めることができます。
環境に配慮したイベントを成功させるためのポイント
- 企画段階:環境負荷を最小限に抑える設計
- 明確なサステナビリティ目標の設定:
- イベントの目的と合わせて、具体的な環境目標を設定します(例:CO2排出量〇〇%削減、廃棄物〇〇kg削減、再生可能エネルギー利用率〇〇%など)。
- 目標はSMART(Specific, Measurable, Achievable, Relevant, Time-bound:具体的、測定可能、達成可能、関連性がある、期限付き)であることを意識しましょう。
- 環境負荷の少ない会場選定:
- 公共交通機関でのアクセスが容易な場所を選ぶことで、参加者の移動によるCO2排出量を削減します。
- 既存の施設を優先的に検討し、新たな建設を避けることで、資源の消費を抑えます。
- 自然光や自然換気を活用できる会場を選ぶことで、エネルギー消費を削減します。
- 環境認証(例:ISO 14001、LEED認証など)を取得している施設を優先的に検討します。
- サプライヤーの選定における環境基準の導入:
- ケータリング、印刷物、装飾、輸送など、あらゆるサプライヤーに対して環境基準(例:地元の食材の使用、再生紙の使用、環境に配慮した輸送方法の採用など)を設定し、遵守を求めます。
- サプライヤーの環境への取り組み(認証取得状況、環境報告書の提出状況など)を評価基準に含めます。
- 参加者への環境配慮の呼びかけ:
- イベントのウェブサイトや告知物で、公共交通機関の利用、マイボトルの持参、ゴミの持ち帰りなどを推奨します。
- 環境に配慮した行動を促すインセンティブ(例:マイボトル持参者への割引、公共交通機関利用促進キャンペーンなど)を検討します。
- デジタルツールの活用:
- 紙の資料を減らすため、プログラム、地図、アンケートなどをデジタル形式で提供します。
- オンラインでの参加オプションやハイブリッド形式のイベントを検討することで、移動による環境負荷を削減します。
- カーボンオフセットの検討:
- どうしても削減できないCO2排出量について、植林活動や再生可能エネルギー事業への投資などを通じてオフセットすることを検討します。信頼できるオフセットプロバイダーを選定することが重要です。
- 実施段階:環境負荷を低減する運営
- エネルギー効率の高い運営:
- 必要な時だけ照明や空調を使用し、こまめな消灯・温度調整を徹底します。
- 省エネ性能の高い機器(LED照明、高効率空調など)を導入します。
- 再生可能エネルギー(例:太陽光発電システム、バイオマス発電など)の導入を検討します。
- 水資源の節約:
- 節水型の水栓やトイレを設置します。
- 雨水利用システムの導入を検討します。
- 参加者に節水を呼びかけます。
- 廃棄物の削減とリサイクルの徹底:
- 使い捨て製品の使用を極力避け、繰り返し使える食器や備品を導入します。
- ゴミの分別回収を徹底し、リサイクル率の向上を目指します。分かりやすい分別表示を設置し、参加者に協力を呼びかけます。
- コンポスト化可能な生ゴミは、堆肥化して再利用することを検討します。
- 不要になった装飾や備品は、リサイクルまたは再利用できる方法を探ります。
- 環境に配慮した飲食の提供:
- 地元の食材や旬の食材を積極的に使用し、輸送による環境負荷を削減します。
- ベジタリアンやビーガン向けのオプションを用意し、食の多様性に対応します。
- 食品ロスを削減するため、適切な量の食材調達と調理、残飯の堆肥化などを実施します。
- 使い捨て容器の使用を避け、リユース可能な食器や容器を提供します。
- 移動手段の環境負荷低減:
- スタッフや出演者の移動には、公共交通機関や電気自動車、自転車などを推奨します。
- 送迎が必要な場合は、効率的なルート設定や乗り合わせを促進します。
- 騒音や光害への配慮:
- 周辺住民への影響を考慮し、音量や照明の調整を行います。
- 野生生物への影響を最小限に抑えるため、照明の向きや明るさを調整します。
- グリーン調達の推進:
- 事務用品、清掃用品、備品など、イベントで使用するあらゆる物品について、環境負荷の少ない製品(再生材使用、省エネ製品、エコラベル認証製品など)を優先的に調達します。
- 事後評価:改善につなげるための分析
- 環境目標の達成度評価:
- 設定した環境目標に対する実績を測定・分析し、達成度を評価します(例:CO2排出量、廃棄物量、リサイクル率など)。
- 目標未達成の場合は、その原因を特定し、改善策を検討します。
- 参加者からのフィードバック収集:
- アンケートなどを通じて、参加者の環境意識や環境対策への評価、改善点などの意見を収集します。
- サプライヤーとの連携評価:
- サプライヤーの環境基準遵守状況や協力度合いを評価し、今後の連携に活かします。
- 成功事例と課題の共有:
- 成功した取り組みや改善が必要な課題を記録し、今後のイベント開催に活かします。
- 得られた知見やノウハウを、他のイベント主催者や関係者と共有することも重要です。
- 環境報告書の作成・公開:
- イベントの環境への取り組みや成果をまとめた報告書を作成し、ウェブサイトなどで公開することで、透明性を高め、社会への情報発信を行います。
成功のための心構え:
- トップダウンでのコミットメント: イベント主催者のリーダーシップと、環境配慮への強いコミットメントが不可欠です。
- 全スタッフの意識向上: 環境配慮の重要性を全スタッフが理解し、日々の業務で実践できるよう、研修や情報共有を徹底します。
- 継続的な改善: 一度だけでなく、常に環境負荷の低減に向けた改善を意識し、PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)を回していくことが重要です。
- コミュニケーションの重視: 参加者、地域住民、サプライヤーなど、あらゆるステークホルダーとの良好なコミュニケーションを図り、協力を得ることで、より効果的な環境対策を進めることができます。
これらのポイントを参考に、イベントの特性や規模に合わせて、できることから段階的に取り組むことが、環境に配慮したイベントを成功させるための鍵となります。
最新技術を活用したイベントのCO2削減
- ドローンによる観戦: ドローンを利用した観戦システムの導入により、交通渋滞の緩和やエネルギー消費の削減が期待できます。
- バーチャルリアリティ(VR)を活用したイベント: VR技術を活用することで、遠隔地からイベントに参加したり、イベントの雰囲気をリアルに体験したりすることができます。
イベントの未来:脱炭素社会における役割
スポーツイベントは、脱炭素社会の実現に向けた重要な役割を果たすことができます。環境に配慮したイベントの開催を通じて、脱炭素社会への意識を高め、行動を促すことができます。
「持続可能なスポーツ2030」は、スポーツ界における環境への取り組みの指針となるものです。このペーパーを参考に、スポーツ関係者は環境への配慮を強化し、持続可能なスポーツの推進に努めていくことが求められます。
企業広報として、この情報を発信することで、スポーツ界における環境への取り組みの重要性を社会に広めることができます。また、企業が環境に配慮したスポーツイベントを開催することで、社会貢献活動の一環として、企業イメージの向上にも繋がります。