エコリクコラム

2025.4.30
トピック
ネイチャーポジティブ経済移行戦略について
環境省は2025年3月25日、2024年3月策定の「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」に基づき、「ネイチャーポジティブ経営推進プラットフォーム」を開設し、「NPEプラットフォーム会員」募集を開始しました。ネイチャーポジティブ経済移行戦略は、環境省、農林水産省、経済産業省、国土交通省が合同で策定しており、ネイチャーポジティブを実現するための産業転換方針を掲げています。
ネイチャーポジティブとは
ネイチャーポジティブとは、生物多様性の損失を止め、回復させることを目指す概念です。企業活動が自然に与える影響を最小限に抑え、自然資本を積極的に回復させることを意味します。
ネイチャーポジティブ経営推進プラットフォームの背景および目的
- COP15で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」を受け、日本政府はネイチャーポジティブ経済への移行を推進
- 企業がネイチャーポジティブ経営を実践するための情報提供、事例紹介、ネットワーキングの場を提供
- 企業と金融機関、NGO、研究機関などの連携を促進
引用元:環境省「ネイチャーポジティブ経営推進プラットフォームの開設と会員募集のお知らせ」(※1)
ネイチャーポジティブ経営とは
ネイチャーポジティブとは、自然資本と生物多様性の損失を止め、回復させることを目指す概念です。企業がネイチャーポジティブ経営を実践することで、以下のような効果が期待されます。
- リスクの軽減: 自然資本への依存度が高い企業は、資源の枯渇や生態系の変化によるリスクにさらされます。ネイチャーポジティブ経営は、これらのリスクを軽減します。
- 新たなビジネス機会の創出: 自然資本と生物多様性の保全に関連する新たな市場や技術が生まれています。ネイチャーポジティブ経営は、これらの機会を捉えることを可能にします。
- 企業の評判向上: 環境意識の高まりとともに、企業の社会的責任が重視されています。ネイチャーポジティブ経営は、企業の評判向上に貢献します。
ネイチャーポジティブ経営の潮流
近年、気候変動と並んで生物多様性の損失が深刻な問題として認識されるようになり、ネイチャーポジティブ経営への関心が高まっています。
- 国際的な枠組み:生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」では、2030年までに生物多様性の損失を止め、回復させる目標が掲げられました。
- 企業への影響:金融機関や投資家は、企業の自然資本と生物多様性に関する情報開示を求めるようになっています。また、消費者も環境に配慮した製品やサービスを選ぶ傾向が強まっています。
企業が取り組むこと
企業の中には、自社の生物多様性の取り組みとして、KMGBFのターゲット3「30by30目標」に参加する企業も少なくありません。
陸と海のそれぞれ少なくとも30%を、保護地域またはOECM (保護地域以外で生物多様性保全に資する地域)に指定し、保全する、というこのターゲットに、企業が加わることの意味は大きいです。30by30と同時に、企業が取り組むべきターゲットがあります。
ターゲット15の「ビジネスの影響評価・開示」です。
このターゲット15が事業者、特に大企業や金融機関等に求めているのは、生物多様性にかかわるリスクや、生物多様性への依存や影響を評価し、持続可能な消費のために必要な情報を開示することです。
これらを通じて、ビジネスがもたらす生物多様性への負荷を削減し、正の影響を増加するための措置を、確実に講じることです。これは、各企業が手掛け、金融機関や機関投資家が投融資の対象とするビジネスそのものを、持続可能(サステナブル)なものに切り替えていく必要があることを示しています。
その意味で、30by30のような、緑地の保全や回復といった、地域や社会貢献(CSR)的な取り組みとは根本的に異なる、ビジネスの本質にかかわる取り組みといえます。
ビジネスを通じてしか達成できない「ターゲット15(「ビジネスの影響評価・開示」)」は、企業や金融に求める、最重要の目標なのです。
その他としては、生物多様性目標を設定し、具体的な行動計画を策定すること、サプライチェーン全体で取り組みを推進、自然資本への投資やイノベーションを促進があります。

出所)PwC「自然資本/生物多様性の潮流」(※2)
投資家が注目する生物多様性の取り組みとは
- 事業活動が生物多様性に与える影響の評価と開示
- 生物多様性目標の設定と達成に向けた具体的な行動計画
- 生物多様性保全に貢献する製品・サービスの開発
- 自然資本への投資
ネイチャーポジティブ経営は、企業が持続可能な成長を実現し、社会からの信頼を得るための重要な戦略です。企業は、積極的にネイチャーポジティブ経営を実践し、自然と共生する社会の実現に貢献することが求められ、今後関連する求人の増加も予想されています。