イングランドの生物多様性ネットゲインについて | グリーンジョブのエコリク

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イングランドの生物多様性ネットゲインについて|グリーンジョブのエコリク コラム

2025.3.21

トピック

イングランドの生物多様性ネットゲインについて

地球上の生物多様性は、かつてないほどのスピードで失われています。森林伐採、都市開発、気候変動など、人間の活動がその主な原因です。
このままでは、生態系が崩壊し、私たちの生活する地球が崩壊するのを防ぐため、「2020年を基準として、2030年までに自然の損失を食い止め、反転させ、2050年までに完全な回復を達成する」という「ネイチャーポジティブ」という目標を掲げています。

図1 2030 年までのネイチャー・ポジティブに向けた自然のための測定可能な世界目標
出所)WWF「生きている地球レポート2022」(※1

ネイチャーポジティブとは

ネイチャーポジティブとは、自然生態系の損失を食い止め、回復させていくことを意味する言葉です。
現在、世界の生物多様性は減少し続けており、1970年以来、約68%の生物多様性が失われたと言われています。

生物多様性は年間約44兆ドルの経済価値創出を支える自然資本であり、この喪失は社会・経済に大きな悪影響を及ぼしかねません。

2021年、12の民間企業や自然保護団体のCEOが共同で「A Nature-Positive World: The Global Goal for Nature」という文章を公表し、「ネイチャーポジティブ」という目標を設定しました。

ネイチャーポジティブに関する世界の動向

(昆明・モントリオール生物多様性枠組み)

「昆明・モントリオール生物多様性枠組み」とは、生物多様性に関する国際目標を定めた枠組みであり、カナダのモントリオールで2022年12月に開催されたCBD COP15(国連生物多様性条約締約国会議)の最終会合において採択されました。
2030年までに、これまで減少傾向であった生物多様性の状態を回復軌道に乗せるという実質的なネイチャーポジティブを目指す目標が掲げられています。

(G7 2030年自然協約)

2030年自然協約とは、イギリスのコーンウォールで2021年6月に開催されたG7サミットにおいて採択された生物多様性保全のための協約です。この協約では、ネイチャーポジティブの達成を目指すことと、今後10年間で「移行」「投資」「保全」「説明責任」の四つを柱とした行動が盛り込まれています。
「移行」については森林や農地などの合法的・持続可能な利用の推進、「投資」については開発やビジネス上の投資の意思決定における自然資本への影響の考慮、「保全」については世界の陸地と海域の30%を保護する30by30(サーティバイサーティ)の達成、「説明責任」についてはこの協約へのコミットや進捗の定期的なレビューの実施などが記載されています。

(30by30について)

30by30(サーティ・バイ・サーティ)は、自然が適切に保全されている場所を一定面積以上、維持することが必要だという考え方に基づいています。

30by30は、科学的データに基づき国際的な議論がなされたあと、イギリス・コーンウォールで2021年6月に開催されたG7サミットで合意された「G7・2030年自然協約」、そしてカナダ・モントリオールで2022年12月に開催された生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で採択された「昆明―モントリオール生物多様性世界枠組み」の目標3に記載されました。

また、2023年3月に閣議決定された新しい生物多様性国家戦略(生物多様性国家戦略 2023-2030)にも、30by30が達成すべき目標の一つとして盛り込まれています。(※2

30by30に対する日本の現状

生物多様性条約に基づいた、2011年からの新戦略計画(ポスト2010年目標)で、2050年までに「自然と共生する世界」を実現することを目指し、2020年までに生物多様性の損失を止めるため効果的かつ緊急の行動を実施という目標に対して、日本は「少なくとも陸域及び内陸水域の17%、また沿岸域及び海域の10%」が達成されていますが、30by30を達成するにはまだ努力が必要な状況です。

図2 愛知ターゲット20の目標
出所)CEPAジャパン「国連生物多様性の10年 愛知目標とは」(※3

2022年3月に30by30ロードマップを策定

(OECMの設定・管理)

生物多様性条約では、OECMに関して4つの基準を提示しています。

  1. 保護地域ではないこと
  2. 管理や統治がされていること
  3. 生物多様性域内保全に長期期間の効果的な貢献がされていること
  4. 生態系の機能やサービス、文化的、精神的、社会経済的、その他地域関連価値を保全していること

30by30ロードマップでは、30by30目標を主にOECMにより達成を目指すことが記されています。 その推進のため、日本におけるOECMを国が「自然共生サイト」として認定する仕組みを設け、2023年には全国100地域以上を先行して認定し、その後さらに拡大していくことが記されています。

(「生物多様性のための30by30アライアンス」の発足)

30by30ロードマップを実効的に進めていくための有志連合として、ロードマップ発表と同時に「生物多様性のための30by30アライアンス」が発足しました。

図3 アライアンスの全体構造
出所)環境省「アライアンス要綱 / 参加登録 生物多様性のための 30by30アライアンスの発足について」(※4

(生物多様性の重要性や保全活動の効果の「見える化」)

自然のめぐみを適切に維持・向上するためには、30by30が目標に掲げている面積を達成するだけでなく、保全の質を確保する必要があります。
そのためには、すでに得られている生物多様性情報に加えて、デジタル技術を活用した広域調査を行い、生物多様性の重要性や保全活動の効果を「見える化」して提供しています。

動画 国連広報センター「UNESCO: 生物多様性の保全を学ぶ」(※5

(脱炭素、循環経済、有機農業、都市緑化などの取り組みとの連携)

自然を維持・向上していくためには、まず自然の劣化を食い止める必要があります。そのためには、自然と表裏一体である気候変動や、海洋プラスチック汚染などの環境問題に対処する活動との連携が欠かせません。
また、自然保全がなされている自然共生サイトだけでなく、里地里山での有機農業をはじめとした人がなりわいを営んできた場所や、都市における緑化などについても考慮する必要があります。

イギリスの挑戦:生物多様性ネットゲイン政策

30by30ロードマップは、あくまでも国が30by30達成に向けて示した道筋です。その達成には、私たちの意識の向上や実際の行動が不可欠です。
イギリスは世界に先駆けて「生物多様性ネットゲイン(BNG)」政策を導入しました。これは、開発事業者が生物多様性を現状よりも10%以上増加させることを義務付ける画期的な取り組みです。
具体的には、開発前に地域の生物多様性を評価し、開発後にそれを上回る改善を行う必要があります。例えば、開発地の一部を緑地として保全したり、別の場所で失われた生態系を再生したりする方法があります。

BNGがもたらす可能性と課題

BNG政策は、ネイチャーポジティブ(自然再興)の実現や、自然市場の拡大に大きく貢献すると期待されています。企業は環境への影響を積極的に改善し、新たなビジネスチャンスも生まれるでしょう。
しかし、課題もあります。生物多様性の評価方法の確立、地方自治体の能力向上、長期的なモニタリング体制の構築など、解決すべき点は少なくありません。

(企業にとってのメリット)

BNGへの取り組みは、企業にとって単なる義務ではありません。環境リスクの低減、企業イメージの向上、そして新たなビジネス機会の創出など、多くのメリットがあります。

(未来への提言)

BNG政策は、まだ始まったばかりです。成功のためには、政府、企業、そして市民一人ひとりの協力が不可欠です。私たちは、自然と共生する持続可能な未来を目指し、共に歩んでいく必要があります。

まとめ

愛知目標にあった20の目標のうち日本は、目標11は達成したものの、多くのものが未達でした。
同じ失敗を繰り返さないために、30by30、そしてそれを含めた昆明―モントリオール生物多様性世界枠組みの達成に向けて、あらゆる組織・個人の力を結集して取り組んでいく必要があります。

(個人の取り組み)

30by30ロードマップには「国民は、一人ひとりが持続可能で生物多様性に配慮した生産活動への理解を深め、配慮型消費行動や生物多様性に関連した寄付、地域で行われる各種生態系の質を高める取組への積極的参加等により、30by30目標達成に貢献する」と記載されています。
具体的には、「有機野菜を購入する」「生物多様性に配慮して作られた農作物を購入する」「里山整備活動に参加する」「地域のゴミ拾いに参加する」「省エネに取り組む」「生物多様性に関わる仕事に従事する」などがあります。

(企業の取り組み)

管理地の自然共生サイトへの登録、事業活動における保護地域・OECMの保全への貢献、消費者への環境配慮型消費の啓発が期待されています。
具体的には、「国内からの農産品調達において、有機野菜や生物多様性に配慮された農産品を積極的に選ぶ」「生物多様性に配慮した商品であることを積極的にPRする」などがあります。

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執筆者

神戸 修

神戸 修(こうべ おさむ)

株式会社グレイス ゼネラルマネージャー

大阪学院大学 流通科学部流通科学科卒 学生時代より、就活・キャリア支援のサークルを立ち上げ人材ビジネス会社、給食会社にて法人営業、採用、広報業務に従事 アニュアルレポート、統合報告書の作成 東日本大震災等では現地の医療関連従事者の業務サポートを手がける

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