2025年 コーポレートPPAの注目が加速する | グリーンジョブのエコリク

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2025年 コーポレートPPAの注目が加速する|グリーンジョブのエコリク コラム

2025.3.12

トピック

2025年 コーポレートPPAの注目が加速する

「コーポレートPPA」とは、企業が発電事業者から自然エネルギーの電力を長期的に購入する契約のことです。
このコーポレートPPAを企業が購入するメリットは、再生可能エネルギーによる電力を長期間、安定的に調達できる点があります。
そして、発電事業者側としては、売電先が長期に渡って固定されることで、安定した事業を営むことができます。

このコーポレートPPAがこれほど注目を集める理由は3つあります。

  1. 気候変動リスクを懸念し、温室効果ガスを減らす取り組みへの関心が高まっている。
  2. 再生可能エネルギーの比率を増やすことで、国内のエネルギーの自給自足を推進できる。
  3. 再生可能エネルギーを安定的に調達し、国際的なイニシアティブのRE100やCDP、パリ協定の実現に貢献するSBTに準拠する有力な手段となる。

コーポレートPPAに関するトピックは4つ

2025年のコーポレートPPAのトピックは次の4つです。

  1. 契約単価の上昇
  2. 市場価格の低下
  3. 電気料金の制度変更
  4. 洋上風力発電の拡大

この4つを1つずつひも解いていきます

(契約単価の上昇)

日本国内で締結するコーポレートPPA(Power Purchase Agreement、電力購入契約)の大半は太陽光発電です。太陽光発電のコストは 2023年度に平均11円/kWh(キロワット時)程度で、コーポレートPPAの契約単価は需要の増加に伴って上昇しました。
それでも、通常の電気料金が高い水準にあるため、需要家は経済性の面でコーポレートPPAの方がメリットを期待できます。

(市場価格の低下)

2022年度の卸電力市場は化石燃料の輸入価格の高騰などにより、年間の平均取引価格が20円/kWhを超える異常な状態でした。2023年度には電力の需給状況が改善して、11円/kWh弱まで低下しました。今後もさまざまな要因で市場価格が変動すると予想されます。
コーポレートPPAの中でもバーチャルPPA(需要家が環境価値だけを購入)では、市場価格の変動が需要家の電力調達コストに影響を与えます

(電気料金の制度変更)

電気料金に影響を与える新制度が2024年度に開始されました。
発電事業者が送配電網の使用料の一部を負担する「発電側課金」、小売電気事業者などが供給力確保のために負担する「容量拠出金」の導入です。通常の電気料金と同様に、オフサイトPPAの契約単価にも影響が及ぶ可能性は大きく、新制度の対象外になるオンサイトPPAのメリットが高まります

(洋上風力発電の拡大)

自然エネルギーの電力は洋上風力発電で拡大していきます。発電所の規模が大きいため、大型のコーポレートPPAを締結できます。 当面は太陽光に比べて発電コストが高いですが、フィードインプレミアム(FIP)を適用して、契約単価を低く抑えることが可能です。バーチャルPPAとFIPを組み合わせることによって、市場価格が変動する影響も抑制できます。

コーポレートPPAの契約形態について

コーポレートPPAの契約形態は、大別して「オンサイトPPA」と「オフサイトPPA」に分けられます。
この違いは、発電設備が需要地点から近いか遠いかになります。
そしてオフサイトPPAは「フィジカルPPA」と「バーチャルPPA」に分かれます。

図1 コーポレートPPAの選択肢
出所)自然エネルギー財団「コーポレートPPA日本の最新動向 2024年版」(※1

オンサイトPPAについて

オンサイトPPAは発電コストをもとに、固定価格で契約することです。通常の電力契約では、小売電気事業者の電力調達コストのほかに、託送料、燃料費調整額、再エネ賦課金が上乗せされます。

図2 通常の電力契約
出所)自然エネルギー財団「コーポレートPPA日本の最新動向 2024年版」(※1
図3 オンサイトPPAの契約形態
出所)自然エネルギー財団「コーポレートPPA日本の最新動向 2024年版」(※1

(オンサイトPPA例について)

  • 工場や建築物の屋根に設置
  • 休耕田や広範囲な空き地などの地上に設置
  • 大型ショッピングモールや大学などのカーポートに設置
  • 水上設置

オフサイトPPAについて

『事業拠点から離れた場所にある発電設備から送配電ネットワークを経由して電力の供給を受ける』仕組みです。
オンサイトPPAと違って、企業は発電設備の設置場所を提供する必要がありませんが、発電事業者に対して送配電ネットワークの使用料(託送料金)を支払う必要があります。
そのため、オフサイトPPAは需要家にとってコストが割高になりやすいのが特徴です。

さらに、2024年4月から導入された「容量拠出金」の影響が大きいです。

(容量拠出金について)

容量拠出金は、国内の電力の自給を維持するために、発電所を所持していない事業者に課された費用のことです。
発電所を所持していない小売事業者や一般送配電時事業者、配電事業者は、自社で電力を生み出すことができないため、他の発電事業者や卸電力市場から電力を買って、それを消費者に売っています。

発電所を持っていると費用がかかるので損をするようになると、発電所を廃止する事業者が出てくる可能性があり、電力不足が深刻化するおそれがあります。
そのため、発電事業者から電力を買っている事業者は、対価として容量拠出金を支払うよう定められました。
また、容量拠出金を理由に値上げを発表した新電力会社が増えて来ていて、今後も増える可能性があります。

フィジカルPPAとバーチャルPPAについて

フィジカルPPAは、PPA事業者所有の太陽光発電を自社の敷地内もしくは外に無償で設置してもらい、電力の自家消費を行える運用方法です。
一方、バーチャルPPAの場合は、従来通り小売電気事業者から電力を購入し、固定料金と市場価格の差額をPPA事業者へ支払います。
フィジカルPPAは電力と環境価値を受け取れますが、バーチャルPPAは環境価値を受取り、卸電力市場から電力を受け取ります。
フィジカルPPAは、PPA事業者から無償設置してもらった太陽光発電で発電および自家消費できます。バーチャルPPAの場合は、卸電力市場から間接的に太陽光発電の電力を受け取ります。
バーチャルPPAは価格保証とリスクマネジメントに重きを置いています。

図4 フィジカルPPAの契約形態(100%供給)
出所)自然エネルギー財団「コーポレートPPA日本の最新動向 2024年版」(※1
図5 バーチャルPPAの契約形態(100%供給)
出所)自然エネルギー財団「コーポレートPPA日本の最新動向 2024年版」(※1

バーチャルPPAは、企業が既存の電力契約を維持しながら再生可能エネルギーの環境価値を取得するための有効な手段です。
フィジカルPPAと比較して、物理的な電力の供給を伴わないため、契約の柔軟性が高く、既存の電力契約に影響を与えません。
また、電力価格の変動リスクをヘッジしつつ、企業のサステナビリティ目標を達成することができます。
しかし、バーチャルPPAには市場価格の変動によるコストの変動リスクや、補助金対象外といったデメリットも存在します。
さらに、契約の複雑さや環境価値の適切な認証が求められるため、導入に際しては慎重な検討が必要です。

バーチャルPPAを導入する際には、需要家の電気料金体系や小売電気事業者との関係を十分に理解し、効果的なエネルギー戦略を策定することが重要です。これにより、企業は持続可能性目標の達成とともに、電力コストの最適化を図ることが可能となります。

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執筆者

神戸 修

神戸 修(こうべ おさむ)

  

株式会社グレイス ゼネラルマネージャー

大阪学院大学 流通科学部流通科学科卒
学生時代より、就活・キャリア支援のサークルを立ち上げ人材ビジネス会社、給食会社にて法人営業、採用、広報業務に従事
アニュアルレポート、統合報告書の作成
東日本大震災等では現地の医療関連従事者の業務サポートを手がける

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