エコリクコラム

2025.2.14
トピック
地域医療とドクターヘリ、そしてまちづくりの関係
以前のコラム「長く健康でいるために」でも記載しましたが、日本人の死因上位は、1位が悪性新生物(腫瘍)、2位が心疾患、3位が老衰、4位が脳血管疾患です。(厚生労働省の令和5年(2023) 人口動態統計月報年計より)

出所)令和5年(2023) 人口動態統計月報年計より抜粋(※1)
また、脳梗塞の「ゴールデンタイム」は発症後4.5時間以内と言われています。
ある程度自分や家族が高齢になる、また持病がある場合にとって、住む地域の医療機関の状況を気にする人が増えてくると思います。
何かがあった時にこのゴールデンタイム内に治療をしてもらえる病院があれば、安心して暮らせるかもしれません。
地域医療格差問題
地域医療の問題には、医師の絶対数の不足と偏在の2つの問題がよくあげられます。
地域により、領域別の専門医の配置にかなり偏りがあるため、各地域・各領域が抱える課題は多岐にわたります。
この対応として地域の救急や専門医療を担う「地域医療支援病院」*が指定され、地域医療支援病院と一般病院・診療所との間での機能分化・連携推進が促されています。
*「地域医療支援病院」とは地域医療を担う、かかりつけ医等を支援する能力を備えている地域医療の確保を図る病院のことで、都道府県知事が個別に承認しています。
令和6年9月1日現在で707医療機関が承認されています。→地域医療支援病院一覧
ドクターヘリ運航体制の確立
(ドクターヘリの運航)
地域において必要な救急医療が適時適切に提供できる体制の構築を目指し、早期の治療開始、迅速な搬送を可能とするドクターヘリの運航体制が2001年から開始されました。
2024年現在、56機のドクターヘリが配備されています。
厚生労働省HP「第24回救急・災害医療提供体制等の在り方に関する検討会」(※2)によると、平成31/令和元年度の全要請38,114件で、その対応の構成比率は、全出動(現場出動、施設間搬送、その他)62.2%、任務中止は15.0%、 不応需(天候不良、重複要請、その他)は22.8%でした。
対前年度比較では、全要請件数は-1.6%と微減(38,727件→38,114件)でしたが、天候不良による不応需が13.0%増(3,122件→3,528件)、任務中止も5.1%増(5,430件→5,731件)となり、全出動(任務完了)は5.0%減(24,966件→23,707件)となりました。(現場出動は5.8%の減少(19,938件→18,790件))
ヘリコプターは飛行機と違い、レーダーでの観測ではなくパイロットの目視による飛行(有視界飛行)となります。
そのため雨、雲、雪、霧(煙霧)、みぞれ、もや、スモッグ、砂塵、火山灰、黄砂等の状況によりパイロットが目視できない場合は、ドクターヘリの運航ができません。
雨雲レーダー等で雲の動き、切れ目を予測して航空ルートを確保するなど、技術革新が進む世界ではありますが、地域によってドクターヘリの任務中止に格差があるのも事実です。

出所)「第24回救急・災害医療提供体制等の在り方に関する検討会」(※2)
(ドクターヘリの実績)
平成30年度・平成31/令和元年度ドクターヘリ診療例(25,622例・23,922例)の疾病構成では、全診療例25,622例の疾病構成比率は、外因性疾患48.0%、心大血管疾患15.0%、脳血管障害15.7%、その他の内科疾患21.3%でした。また、平成31/令和元年度の全診療例23,922例の疾病構成比率は、外因性疾患46.9%、心大血管疾患15.1%、脳血管障害17.1%、その他の内科疾患20.9%でした。

出所)「第24回救急・災害医療提供体制等の在り方に関する検討会」(※2)
ドクターヘリは、時速約200kmの速度で飛行します。そのため居住地域近くの病院に専門医が配置されていなくても、基地病院にたどり着ける可能性は高いです。
(早期搬送の問題点)
ヘリコプターは、空港等以外の場所で離着陸を行ってはいけないと航空法で決まっていますが、一定の要件を満たした場所については国土交通大臣の許可を得ることにより離着陸を行うことができます。(事前申請から承認まではおおよそ2週間程度)
ヘリコプターが緊急で捜索活動、救助活動等を行う場合は特例により、航空法で定められた着陸条件を満たしているなどの場合は事後の許可で着陸が可能であり、ドクターヘリもこの条件にあたります。
(1) 一般離着陸場
(2) 防災対応離着陸場
(3) 特殊地域離着陸場
(4) 建築物上離着陸場
このうちドクターヘリが多く着陸する基準は(2)の防災対応離着陸場か、(1)一般離着陸場になります。
※(3)特殊地域離着陸場は人がいない山岳地域等、(4)建築物上離着陸場は屋上ヘリポートなどが該当します。緊急性が高い場合は公園などの広い敷地を利用することが多いため、ドクターヘリが着陸する可能性が高い場所は(2)ないし(1)になります。
一般離着陸場において、『図4 一般場外離着陸の進入区域、進入表面、転移表面の略図』のように、ヘリコプターが着陸できる広さおよび、進入、離脱方向の勾配に障害物がないことが求められます。
ドクターヘリなどの災害時のヘリコプターが着陸する場合はこの一般離着陸上の離着陸地帯を15m上空に引き上げた仮想着陸地帯を設置面と考え、すべての勾配が15m引き上げられた状態となります。

出所)国土交通省「ヘリコプターの場外離着陸場について」(※3)

出所)国土交通省「ヘリコプターの場外離着陸場について」(※3)
防災とまちづくり
まちづくりを行う上で、コラム「ロコモから考える安全に歩けるまちづくり」にも記載しましたが、国土交通省は、「居心地が良く歩きたくなる」空間づくりを促進し、魅力的なまちづくりを推進しています。(※4)
この取り組みの中では、ドクターヘリが着陸すること、緊急車両が簡単に侵入できるように考えられた公園の建設も行われています。
地域住民の命を守るための取り組み、特に地方における医療を支えるにはドクターヘリをスムーズに受け入れることができる場所が必要になります。