エコリクコラム

2025.6.4
トピック
災害対応の未来を拓く!「日本版災害チャータ」実運用スキーム高度化に向けた共同研究が締結! 〜 衛星データの利活用により、災害発生後の迅速な初動対応や復旧・復興支援に貢献 〜
大規模災害が発生した際、いち早く被害状況を把握し、適切な初動対応や復旧・復興支援を行うことは、社会全体の喫緊の課題です。この度、2025年5月22日に、国立研究開発法人防災科学技術研究所(防災科研)、富士通株式会社、株式会社衛星データサービス企画、三菱電機株式会社の4社が、「日本版災害チャータ」の実運用スキーム高度化に向けた共同研究契約を締結しました。
この共同研究は、衛星データを活用することで、災害発生後の迅速な状況把握を可能にし、より効果的な災害対応に貢献することを目指します。
「日本版災害チャータ」の構想とは
「日本版災害チャータ」とは、大規模災害が発生した際に、政府機関や地方公共団体、民間企業などが保有する衛星データを迅速に集約・解析し、災害対策本部などに提供する仕組みの構想です。これにより、被災地の状況を広域的かつ詳細に把握し、救助活動や物資輸送、復旧計画の策定などを効果的に進めることが可能になります。
この構想は、国際的な取り組みである「国際災害チャータ(International Charter ‘Space and Major Disasters’)」の日本版として位置づけられています。国際災害チャータは、加盟国・機関が保有する衛星を災害時に相互利用する枠組みであり、日本もJAXA(宇宙航空研究開発機構)が参加しています。

出所)富士通株式会社「防災科研、富士通、衛星データサービス企画、三菱電機が「日本版災害チャータ」実運用スキーム高度化に向けた共同研究契約を締結」(※1)
今後の予定・将来展望
今回の共同研究契約の締結により、各機関が持つ専門知識と技術を結集し、実用性の高い「日本版災害チャータ」の運用スキームを確立することを目指します。具体的には、以下の取り組みが予定されています。
衛星データの活用技術の高度化:
- 災害状況をより正確に把握するための画像解析技術やAI技術の開発が進められます。
- 夜間や悪天候時でも利用可能なレーダー衛星などのデータ活用も検討されます。
情報提供の迅速化・効率化:
- 災害発生からデータ提供までの時間を短縮するためのシステム構築が図られます。
- 災害対策関係者が使いやすい形で情報を提供するプラットフォームの開発も視野に入れています。
関係機関との連携強化:
- 国や地方自治体、民間企業など、様々な機関との連携を強化し、災害情報の共有体制を確立します。
- 防災訓練などを通じて、実運用における課題を洗い出し、改善を図ります。
将来的には、この「日本版災害チャータ」が、日本の災害対応における重要なインフラとなり、迅速かつ的確な意思決定を支援することで、国民の生命・財産を守ることに貢献することが期待されます。
現状と課題について
現在の災害対応においては、以下のような課題が存在しています。
情報収集の遅れと困難さ:
- 大規模災害発生時には、道路寸断や通信網の障害により、被災地の情報収集が困難になることがあります。
- 被害状況の全容把握には時間がかかり、初動対応が遅れる可能性があります。
データ活用の限定性:
- 既存の衛星データは存在するものの、災害対応に特化した解析や迅速な提供体制が十分に整備されていない場合があります。
- 異なる機関が保有するデータの連携や共有がスムーズに行われないことも課題です。
人材不足:
- 衛星データを解析・活用できる専門人材が不足しているため、データのポテンシャルを最大限に引き出せていない現状があります。
今回の共同研究は、これらの課題を克服し、より高度で実用的な災害対応を実現するための重要な一歩となります。
「日本版災害チャータ」の実運用スキーム高度化に向けた共同研究は、衛星データの力を借りて、災害に強い社会を築くための重要な取り組みです。防災科研、富士通、衛星データサービス企画、三菱電機の知見と技術が結集することで、より迅速で効果的な災害対応が実現されることが期待されます。