再エネ発電に逆風 - 2024年度、発電所倒産が過去最多に。買取価格低下と燃料費高騰が直撃 | グリーンジョブのエコリク

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再エネ発電に逆風 - 2024年度、発電所倒産が過去最多に。買取価格低下と燃料費高騰が直撃|グリーンジョブのエコリク コラム

2025.5.23

トピック

再エネ発電に逆風 – 2024年度、発電所倒産が過去最多に。買取価格低下と燃料費高騰が直撃

株式会社帝国データバンクは2025年5月6日、再生可能エネルギー発電事業者の経営状況に関するレポートを発表しました。それによると、2024年度の再エネ発電所の倒産件数が過去最多の52件に達し、事業者の経営が深刻な苦境に陥っていることが明らかになりました。背景には、固定価格買取制度(FIT)における買取価格の低下や、バイオマス発電における燃料費の高騰などが複合的に影響していると分析されています。

再生可能エネルギーとは

再生可能エネルギーとは、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなど、自然界に存在するエネルギー源であり、枯渇することなく永続的に利用できるエネルギーのことです。地球温暖化対策の切り札として、その導入が世界中で推進されています。

種類別・再生可能エネルギーの特徴

  • 太陽光発電: 太陽の光エネルギーを電気に変換する発電方式。比較的導入が容易ですが、天候に左右されやすいという課題があります。
  • 風力発電: 風の力で風車を回し、電気に変換する発電方式。広大な土地や洋上での設置に適していますが、騒音や景観への影響が懸念される場合があります。
  • 水力発電: 水の流れを利用して発電する方式。安定的な発電が可能ですが、大規模なダム建設は環境に大きな影響を与える可能性があります。
  • 地熱発電: 地下深くの熱エネルギーを利用する発電方式。安定的な発電が可能ですが、適した地域が限られます。
  • バイオマス発電: 植物や動物由来の有機物(バイオマス)を燃料として発電する方式。廃棄物の有効活用に繋がりますが、燃料の安定確保や燃焼時の環境負荷が課題となる場合があります。

倒産の傾向

帝国データバンクの調査によると、2024年度に倒産した再エネ発電事業者の内訳は、太陽光発電事業者が最も多く、次いでバイオマス発電事業者が目立っています。これは、FIT制度における買取価格の段階的な引き下げが、特に事業規模の小さい太陽光発電事業者の収益を圧迫していること、そしてバイオマス発電においては、燃料となる木質ペレットなどの輸入価格高騰が経営を直撃していることが要因として考えられます。

バイオマス発電

バイオマス発電は、未利用の木材や家畜排せつ物、食品廃棄物など、多様なバイオマス資源を燃料として活用できるため、資源循環型の発電方式として期待されています。しかし、燃料の調達コストや安定供給、発電効率などが事業の成否を左右する重要な要素となります。

「輸入バイオマス燃料」を使うバイオマス発電はFIT制度の対象外の理由

FIT制度は、再生可能エネルギーの導入を促進するために、国が一定期間、固定価格で電力を買い取る制度です。しかし、輸入されたバイオマス燃料を使用した発電は、原則としてFIT制度の対象外となっています。その背景には、以下の理由があります。

1)FIT制度の目的とは

FIT制度の目的の一つに、「地域資源の活用と地域経済の活性化」があります。国産のバイオマス燃料を使用することで、地域の林業や農業の振興、雇用創出に繋がるという考え方があります。

2)どうして国産を選ぶのか

国産バイオマス燃料の利用は、エネルギーの地産地消を促進し、輸送に伴う環境負荷を低減する効果も期待できます。また、国内の未利用資源を活用することで、廃棄物処理問題の解決にも貢献する可能性があります。

3)安価なバイオマスの問題

海外から安価なバイオマス燃料を輸入する場合、その生産過程における環境破壊や労働問題、持続可能性への懸念などが指摘されています。また、品質の低い燃料の使用は、発電設備の故障や事故のリスクを高める可能性もあります。海外製の安価なバイオマス燃料には認証を偽造し、不純物が混ざっていたことによる火災事故の発生も起きています。

今後の課題と対応

再エネ発電事業を取り巻く環境は厳しさを増しており、今後の持続的な成長のためには、以下のような課題への対応が求められます。

  • コスト競争力の強化: 技術革新や効率的な運営により、発電コストを低減する必要があります。
  • FIT制度への依存からの脱却: 制度に頼るだけでなく、市場原理に基づいた自立的な経営を目指す必要があります。
  • 新たな収益源の確保: 電力販売だけでなく、地域熱供給や水素製造など、多角的な事業展開を検討する必要があります。
  • 政策支援の継続と見直し: 政府は、再エネ導入目標の達成に向け、長期的な視点での政策支援を継続するとともに、事業者の実情に合わせた制度の見直しを行う必要があります。
  • 技術開発の推進: より高効率で環境負荷の低い発電技術の開発が不可欠です。

帝国データバンクの調査結果は、再エネ発電事業、特に太陽光発電と輸入燃料に依存するバイオマス発電事業者が厳しい経営状況に置かれていることを示唆しています。脱炭素社会の実現に向けて、再生可能エネルギーは重要な役割を担いますが、その導入を持続可能な形で進めていくためには、事業者の自助努力だけでなく、政府の適切な政策支援と、金融機関や地域社会の理解と協力が不可欠です。企業は、この現状を認識し、再エネ事業への投資や連携においては、事業者の経営状況やリスクを慎重に評価する必要があるでしょう。また、自社のエネルギー戦略においても、長期的な視点とリスク管理の徹底が求められます。

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執筆者

神戸 修

神戸 修(こうべ おさむ)

株式会社グレイス ゼネラルマネージャー

大阪学院大学 流通科学部流通科学科卒 学生時代より、就活・キャリア支援のサークルを立ち上げ人材ビジネス会社、給食会社にて法人営業、採用、広報業務に従事 アニュアルレポート、統合報告書の作成 東日本大震災等では現地の医療関連従事者の業務サポートを手がける

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