英国政府は企業による炭素クレジットの取引と資金調達を支援 日本への影響は | グリーンジョブのエコリク

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英国政府は企業による炭素クレジットの取引と資金調達を支援 日本への影響は|グリーンジョブのエコリク コラム

2025.5.21

トピック

英国政府は企業による炭素クレジットの取引と資金調達を支援 日本への影響は

4月17日、英国政府は自主的カーボン及び自然市場の信頼性向上に向けた新たな方針を発表しました。この方針は、企業や団体によるカーボンクレジットおよびネイチャーポジティブ関連のクレジット取引において、明確な基準を設けることで、これらの市場を気候変動対策の推進と経済成長を両立させるための重要な手段として強化することを目的としています。

グリーンファイナンスとは

グリーンファイナンスとは、気候変動対策や環境保全に貢献する事業に対して行われる投融資の総称です。再生可能エネルギー事業への投資、省エネルギー技術の開発、持続可能な資源管理、生物多様性の保全など、幅広い分野が対象となります。グリーンボンドの発行やESG投資の拡大などが、グリーンファイナンスの代表的な例として挙げられます。

日本におけるグリーンファイナンスの発行実績

日本においても、近年グリーンファイナンスへの関心が高まっており、グリーンボンドの発行額は増加傾向にあります。環境省のデータによると、2023年のグリーンボンド発行額は過去最高を記録しました。これは、企業のESG経営への意識の高まりや、投資家の環境問題への関心の高まりを反映したものです。政府もグリーンファイナンスの推進に向けた様々な政策を打ち出しており、今後もその市場規模の拡大が期待されています。

英国政府が発表した自主的カーボン及び自然市場の信頼性向上に向けた新方針について

英国政府が発表した新方針は、自主的なカーボン市場と自然市場の信頼性を高め、その成長を促進するための具体的な措置を示しています。

  • 「良質なクレジット」の定義明確化: カーボンオフセットや自然保護活動によって生まれたクレジットについて、その品質を保証するための明確な基準を設けます。これにより、市場の透明性と信頼性を向上させ、企業のグリーンウォッシュを防ぐことを目指します。
  • 使用目的の開示義務化: クレジットを購入した企業に対し、その使用目的を明確に開示することを義務付けます。これにより、クレジットがどのように気候変動対策や自然保護に貢献しているのかを可視化し、市場の信頼性を高めます。
  • 年次サステナビリティ報告への反映: 企業に対し、購入したクレジットに関する情報を年次のサステナビリティ報告書に記載することを求めます。これにより、企業の気候変動対策や自然保護への取り組みの透明性を高め、投資家やステークホルダーへの説明責任を強化します。
  • 市場規模の成長予測: 英国政府は、自主的カーボン市場が2050年までに最大2,500億ドル、自然市場が690億ドルの規模に成長する可能性があると予測しています。この成長を後押しすることで、気候変動対策と経済成長の両立を目指します。
  • 高信頼性クレジット(CCP)の活用促進: 先住民や地域社会の権利を尊重し、高い環境効果を持つ「高信頼性クレジット(CCP)」の活用を促進します。これにより、社会的な側面にも配慮した質の高いクレジットの供給を増やし、市場の持続可能性を高めます。
  • 国際基準整備における主導的立場: 英国政府は、自主的カーボン市場と自然市場に関する国際的な基準整備において主導的な役割を果たすことを強調しています。これにより、グローバルな市場の整合性を高め、より効果的な気候変動対策を推進します。
  • パブリック・コンサルテーションの実施: 新方針の策定にあたり、政府は12週間にわたるパブリック・コンサルテーションを実施し、民間企業や業界団体からの意見を広く募集します。これにより、実効性の高い方針を策定し、市場の円滑な発展を目指します。

日本への影響、今後の課題

英国の新方針は、日本においても自主的なカーボン市場や自然市場の発展に影響を与える可能性があります。日本企業がグローバルなサプライチェーンの中で事業を展開する上で、国際的な動向を把握し、信頼性の高いクレジットを活用していく必要性が高まります。

今後の課題としては、日本国内における自主的なカーボン市場の活性化、自然市場の整備、そして、質の高いクレジットを評価・認証する仕組みの構築などが挙げられます。また、企業が英国のような国際的な基準に沿った情報開示を進めるための支援策も重要となるでしょう。グリーンファイナンスの推進と並行して、自主的な市場の信頼性を高める取り組みが、日本の脱炭素化に向けた重要な要素となります。

英国政府による自主的カーボン及び自然市場の信頼性向上に向けた新方針は、これらの市場が気候変動対策と経済成長の双方に貢献するための重要な一歩と言えます。日本企業もこの動向を注視し、国際的な基準に合わせた取り組みを進めることで、持続可能な社会の実現に貢献していくことが期待されます。

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執筆者

神戸 修

神戸 修(こうべ おさむ)

株式会社グレイス ゼネラルマネージャー

大阪学院大学 流通科学部流通科学科卒 学生時代より、就活・キャリア支援のサークルを立ち上げ人材ビジネス会社、給食会社にて法人営業、採用、広報業務に従事 アニュアルレポート、統合報告書の作成 東日本大震災等では現地の医療関連従事者の業務サポートを手がける

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