国立環境研究所、早稲田大学の研究チームの研究結果に注目 21世紀の暑さの中で運動部活動はできるのか? | グリーンジョブのエコリク

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2025.5.19

トピック

国立環境研究所、早稲田大学の研究チームの研究結果に注目
21世紀の暑さの中で運動部活動はできるのか?

国立環境研究所、早稲田大学の研究チームは、国内で数百万人が参加する学校の運動部活動に着目して、将来の気候変動による暑熱影響と対策の効果を評価した研究結果を2025年4月8日に発表しました。この研究は、将来の気候変動下における運動部活動の持続可能性と、熱中症リスク軽減のための対策の重要性を示唆するものです。

21世紀の暑さの中で運動部活動はできるのか? —国内842都市・時間別の予測データに基づく分析結果について

  1. 研究の背景と目的 近年、地球温暖化の影響により、日本国内においても夏季の気温上昇が顕著であり、熱中症による健康被害が深刻化しています。特に、屋外での活動が多い学校の運動部活動は、生徒たちの健康リスクを高める可能性があります。本研究では、将来の気候変動予測に基づき、全国の都市における運動部活動の時間帯別の暑熱リスクを評価し、対策の効果を検証することを目的としています。
  2. 研究手法 研究チームは、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のシナリオに基づいた将来の気温予測データと、熱中症の危険度を示す指標であるWBGT(湿球黒球温度)を用いて分析を行いました。国内842都市を対象に、運動部活動が行われる可能性のある時間帯(午前、午後)におけるWBGTの変化を予測し、熱中症リスクの程度を評価しました。
  3. ※WBGTとは

    WBGT(湿球黒球温度)は、熱中症を予防するための指標で、気温だけでなく、湿度、日射・輻射熱を取り入れた温度です。人体の熱収支に影響を与えるこれらの要素を考慮しているため、より実際に近い熱中症の危険度を評価することができます。環境省の「熱中症予防情報サイト」などで、WBGTに基づいた熱中症予防のための情報が提供されています。

  4. 研究結果と考察 研究の結果、将来の気候変動が進行した場合、特に夏季において、多くの地域で運動部活動が高リスクとなる時間帯が大幅に増加する可能性が示唆されました。一方、適切な暑熱対策(活動時間の変更、休憩の確保、水分補給の徹底、日陰の利用など)を導入することで、熱中症リスクを低減できる可能性も示されました。この研究は、将来世代が安全に運動に取り組むための対策を検討する上で重要な情報を提供しています。

平均気温の上昇について

  1. 世界の平均気温の上昇 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書によると、世界の平均気温は今後も上昇し続けると予測されています。温室効果ガスの排出量が多いシナリオでは、今世紀末には産業革命前と比較して大幅な気温上昇となる可能性があります。
  2. 日本の平均気温の上昇 日本の平均気温の上昇幅は、世界平均よりも大きいと予測されています。気象庁の「日本の気候変動2020」によると、21世紀末には、温暖化対策を取らない場合(RCP8.5シナリオ)、年平均気温が現在よりも4.5℃程度上昇する可能性があります。このような気温上昇は、熱中症リスクの増大に直接的に影響を与えます。

熱中症を防ぐための取り組み

熱中症を防ぐためには、各団体や学校、地域社会が連携し、様々な対策を講じる必要があります。以下に主な取り組みを挙げます。

  • 環境省: 「熱中症予防情報サイト」を通じて、WBGTに基づいた熱中症の危険度や予防方法に関する情報を提供しています。また、「熱中症警戒アラート」を発表し、高温が予想される日には注意を呼びかけています。
  • 日本スポーツ協会: 熱中症予防のためのガイドラインを作成し、スポーツ活動中の適切な水分補給、休憩、暑さ対策などを推奨しています。また、指導者向けの講習会などを通じて、熱中症に関する知識の普及啓発を行っています。
  • 文部科学省: 学校における熱中症対策として、運動部活動の時間や場所の見直し、休憩時間の確保、適切な水分補給の指導などを求めています。また、熱中症に関する教職員向けの研修などを実施しています。
  • 各学校・運動部: 地域の気象情報やWBGTを参考に、練習時間や内容を調整したり、こまめな水分補給や休憩を促したりするなどの対策を実施しています。冷却グッズの活用や、体調不良者の早期発見と対応も重要です。
  • 地方自治体: 地域住民や学校関係者向けに、熱中症予防に関する啓発活動や講習会などを実施しています。また、WBGT測定器の貸し出しや、暑さ対策のための設備整備を支援するなどの取り組みも行われています。
  • 企業: スポーツドリンクや冷却グッズの開発・販売を通じて、熱中症対策をサポートしています。また、従業員向けの熱中症対策ガイドラインを作成したり、啓発活動を行ったりする企業もあります。

国立環境研究所と早稲田大学の研究チームによる今回の発表は、将来の気候変動が運動部活動に与える深刻な影響と、対策の必要性を改めて示しました。企業においては、このような研究結果を踏まえ、従業員の健康管理はもちろんのこと、熱中症対策に関連する製品やサービスの開発、情報提供などを通じて、安全なスポーツ環境づくりに貢献していくことが期待されます。

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執筆者

神戸 修

神戸 修(こうべ おさむ)

株式会社グレイス ゼネラルマネージャー

大阪学院大学 流通科学部流通科学科卒 学生時代より、就活・キャリア支援のサークルを立ち上げ人材ビジネス会社、給食会社にて法人営業、採用、広報業務に従事 アニュアルレポート、統合報告書の作成 東日本大震災等では現地の医療関連従事者の業務サポートを手がける

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