ネイチャーポジティブで事業創出が増えてきている背景 | グリーンジョブのエコリク

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ネイチャーポジティブで事業創出が増えてきている背景|グリーンジョブのエコリク コラム

2025.5.13

トピック

ネイチャーポジティブで事業創出が増えてきている背景

ネイチャーポジティブとは

ネイチャーポジティブとは、自然環境の保全と再生を推進し、生物多様性を回復させることで、自然と人間社会が共生する持続可能な社会の実現を目指す概念です。 ネイチャーポジティブは、2020年に国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で提唱され、世界中で注目を集めています。

カーボンクレジットとは

カーボンクレジットは、温室効果ガスの排出削減量を国が認証したもので、クレジット創出者は売却益を森林整備に活用し、購入企業は森林保全活動の支援や製品・サービスの差別化に利用できます。

自然由来のクレジットとは

自然由来のクレジットは、森林や海洋などの自然環境を利用して温室効果ガスの排出を削減したことを証明するクレジットです。 自然由来のクレジットは、カーボンクレジットの一種であり、森林由来のクレジット、海洋由来のクレジット、湿地由来のクレジットなどがあります。

脱炭素とネイチャーポジティブのシナジー

脱炭素とネイチャーポジティブは、相互補完的な関係にあります。 脱炭素社会の実現には、自然環境の保全と再生が不可欠であり、ネイチャーポジティブの推進は、脱炭素社会の実現に貢献します。 また、ネイチャーポジティブの推進は、自然環境の保全と再生によって、気候変動への適応力や災害リスクの軽減につながります。

自然由来カーボンクレジット市場が活況の具体例

自然由来カーボンクレジット市場は、近年、活況を呈しています。 その背景には、脱炭素社会への移行に伴い、企業が温室効果ガスの排出削減に取り組むことが求められていることや、自然由来のクレジットがカーボンクレジットの中でも信頼性が高く、評価されていることが挙げられます。

自然由来カーボンクレジット市場が活況の具体例として、以下のような取り組みが見られます。

  • 京都府京丹波町: 森林資源が豊富な京丹波町では、「京丹波モデル」と呼ばれる独自のJ-クレジット創出・活用モデルを推進しています。地域内の森林組合や企業と連携し、森林管理による吸収量をクレジット化し、地域の活性化に繋げています。小規模事業者でも取り組みやすい仕組みを構築している点が特徴です。(※1
  • 三重県: 県全体で森林吸収量の活用を推進しており、県有林だけでなく民有林におけるJ-クレジット創出を支援しています。企業のカーボンオフセットニーズと県内の森林資源を結びつけることで、地域経済の活性化と森林保全の両立を目指しています。(※2
  • 東京ガス: 自社で保有する森林でのJ-クレジット創出に加え、ブルーカーボンに関する研究開発や実証実験に取り組んでいます。例えば、海藻の育成によるCO2吸収量のクレジット化を目指すなど、多様な自然由来の吸収源を活用したカーボンクレジット創出を模索しています。
  • アップル (Apple): グローバルなサプライチェーン全体でのカーボンニュートラルを目指す中で、自然由来のソリューションを重視しています。森林再生プロジェクトへの投資や、サプライヤーと共に森林保全に取り組むことで、カーボンオフセットに活用できる高品質な自然由来クレジットの創出を支援しています。
  • 山形県鶴岡市: 森林面積が市域の70%を占める強みを活かし、「森林由来J-クレジット」の創出に注力。地元の森林組合や企業と連携し、NRIの支援を受けながらクレジット創出と地域振興を目指しています。
  • 日本郵政グループ(日本郵便・ゆうちょ銀行・かんぽ生命保険): 保有する森林を活用したJ-クレジットの創出に取り組んでいます。具体的には、森林管理による二酸化炭素吸収量の認証を受け、グループ内での活用や他企業への販売を視野に入れています。これは、金融機関が自社の資産を活用して自然由来クレジット市場に参入する事例として注目されます。
  • 自治体と企業の連携によるブルーカーボン創出: 海藻の藻場や海草の生育場が吸収する炭素「ブルーカーボン」に着目した取り組みも始まっています。例えば、特定の自治体と企業が連携し、藻場の保全・再生プロジェクトを通じてブルーカーボンクレジットを創出し、地域経済の活性化と脱炭素化を両立させる動きが見られます。
  • CODIPs(CO2排出量可視化・削減プラットフォーム): 株式会社シンカブルが運営するこのプラットフォームは、企業や自治体のカーボンオフセットニーズに対し、森林保全プロジェクトなど自然由来の高品質なカーボンクレジットを提供しています。これは、自然由来クレジットの仲介・販売を担うプラットフォームの登場を示す事例です。

これらの事例は、地域特性を活かした自治体の取り組み、多様な自然由来の吸収源に着目するエネルギー企業の動き、そしてグローバル企業がサプライチェーン全体で自然由来クレジットを活用する方向性を示しています。

課題と解決にむけて

自然由来カーボンクレジット市場の普及には、いくつかの課題があります。 その課題としては、自然由来のクレジットの価格がまだ高いため、企業が導入しにくいことや、自然由来のクレジットの品質が保証されていないことが挙げられます。 これらの課題を解決するためには、自然由来のクレジットの価格を下げるための仕組みの構築や、自然由来のクレジットの品質を保証するための制度の整備が必要です。

ネイチャーポジティブは、自然環境の保全と再生を推進し、生物多様性を回復させることで、自然と人間社会が共生する持続可能な社会の実現を目指す概念です。 ネイチャーポジティブは、脱炭素社会の実現に不可欠であり、自然由来のカーボンクレジット市場の活況は、ネイチャーポジティブの推進に貢献しています。 今後、自治体や多様な企業による自然由来クレジットの創出と活用が進むことで、市場がさらに活性化し、ネイチャーポジティブと脱炭素化の同時達成に貢献していくことが期待されます。

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執筆者

神戸 修

神戸 修(こうべ おさむ)

株式会社グレイス ゼネラルマネージャー

大阪学院大学 流通科学部流通科学科卒 学生時代より、就活・キャリア支援のサークルを立ち上げ人材ビジネス会社、給食会社にて法人営業、採用、広報業務に従事 アニュアルレポート、統合報告書の作成 東日本大震災等では現地の医療関連従事者の業務サポートを手がける

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